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あれから、何年経ったのかな。
オレは、引越し先に移転して営業していたとーちゃんのレストランで働きながら、調理師免許をとった。
その後、よその店にも修行に出たりして、気がつけば、三十を超えて。
師匠でもあるとーちゃんの許しを得て、独り立ちすることになったんだ。
せっかく店を構えるなら、やっぱり生まれ育った街がいいって、説得して。
この街にずっと住んでいるニノに協力してもらいながら物件を探して。
今は、小さなレストランの主だ。
ホントに小さな、小さなレストランだけど、ね。
本当は…帰ってくる時、ちょっと期待したりもしてたんだけどね?
翔ちゃんは…高校を卒業してから大学進学で都会に出て、もう何年も帰ってきていないみたい。
ニノから、潤くん経由で聞けば、(あ、いろいろあって、そういう感じなんだよ、ニノと潤くん。)きっと連絡も取れるんだろうけど、あえてオレはそれをしなかった。
このまま出会えないままだったら、まあ、そういうことなんだろうな、って。
そういう運命なんだよ、きっと。
この街の人たちは、とっても優しくて、いい人ばっかり。
店もそこそこ繁盛して、オレひとりが食っていくにはじゅうぶんだ。