そうしたら、突然ニノが、ピアノの部屋に来た。
今まで1度も来ずに、ひとりでやり遂げたいって意思を尊重してくれていたのに。



「ホントに言わないつもり?」

「だって、言えないよ…。」

「アンタ、なんのために今まで練習してきたのよ。アイツに想いを伝えるためじゃないの?」

「そんなこと言われても…きっと翔ちゃん、困るよ…」

「だからー、相葉さん、そんなの…今更じゃん。だったら、ピアノなんか練習しなきゃいいじゃん。
今すぐやめて、無かったことにしたらいいじゃん。」

「違うよ、そんなんじゃないって」

「じゃあなんなの?!」

「ニノ…オレ、ニノとケンカなんかしたくないよ…。駄目だよ、そんなの…オレは」

「相葉さん、俺、代わりに言ってこようか?俺じゃダメなの?そうじゃないでしょ?
このままじゃ、伝わらないよ?」

「それは…でも、それでいいんだよ、伝わらなくても…いいんだ。」

「相葉さん…俺、相葉さんのそんな顔、見てらんないよ…。俺たち、親友でしょ?頼ってよ、こんな時くらいさ…。」

「ニノ……」

「ほら……ちゃんと言いなよ?アイツだって、あとから聞いたら、ショックだと思うよ?」

「うん…。」




ニノは、ホントに親身になって話してくれた。
だってオレ達は、ほんのちっちゃい頃からずっと一緒だったんだよ?お互いの考えてることだって、よーくわかっちゃう。
だからさ…オレだって、もし自分がニノの立場だったら、おんなじことを言ったと思う。
だけどさ…。そう簡単にはいかないよね…。



そして、その、ニノとの会話を翔ちゃんがドア越しに聞いていて、あらぬ誤解をしていたことなんて、オレは、ぜんっぜん知らなかった。




だから、それから何日も翔ちゃんがピアノ部屋に来なくなったことも、ぜんっぜん意味がわかんなかったんだ。