クラスは違っちゃったけど、それ以来オレは、櫻井くんを目で追うようになった。
だって目立つんだもん櫻井くん!
カッコイイしー、頭がいいしー、サッカー部でも活躍してる。
それでいて、うちの学校では男子も1年の時は必修の調理実習で、万能ねぎをニラと間違えてたとか、包丁を持つ手が危なっかしくて持たせてもらえなかったとか、いろいろ噂で聞いたりしてさ。
「ギャップがまた、たまらないんだよねー!」
放課後、ファストフード店で寄り道してニノと話す。
『今日の櫻井くん』の話を、無理矢理に?ニノに聞いてもらうのも、日課になってきちゃった。
「なんだか、アンタより俺の方が『櫻井くん』に詳しくなりそうだよ…。」
「えっ、えっ、なんで?ニノももしかして、櫻井くんのこと、気になっちゃった??」
「や、それは無い」
「無いのかよ!」
「でもさ、そーんなに気になるなら、話しかければいいのに。」
「えー…無理だよ…。」
オレってこーみえて、結構な人見知り。
ニノってば、知ってるくせにそういうイジワルを言うんだから。
「俺はさ、アナタのサクライくんよりも、その子分の方がカワイイと思うけどね。」
「子分?」
「いるじゃん、いっつも櫻井くんにくっついてる子。」
「あっ、松本くん?」
松本潤くん。櫻井くんが、中学のころから仲のいい友だち。
細くて小柄で、笑顔が可愛らしい感じ。だけど、結構男っぽいところもある。
櫻井くんが歩く横には必ず、松本くんがいる。
1番仲がいいみたい。
「ふうん、ニノは松本くんが好み?」
「ばっか、そんなんじゃないって!」
そんな話をしながら笑うのも、楽しくて。
いいんだ、遠くから見ているだけで。
そう、思ってたんだよ。
あの日までは。
ある日、とーちゃんとかーちゃんがオレに言った。
オレが、高校を卒業するタイミングで、引っ越すって。
それも、ここから遠い街へ。
ばーちゃんの具合が、あんまり良くなくて、一人暮らしは心配だってことみたい。
だから、みんなでばーちゃんちの近くに引っ越すんだって。
オレは、もう大人のつもりでいたし、行かなくてもいいじゃん、って1度は言ったんだけどさ。
やっぱり、住むところの問題もあるし…。
ばーちゃんも、オレを心配してたから。
オレも、ばーちゃんっ子で。
だから、付いていくことに、決めたんだ。