(Side A)
「あっ…!」
新学期からの新しいクラスの名簿が張り出された掲示板を見て、オレは思わず声を上げた。
やっと…!
ついに…!
「同じクラスだ…。」
この時をどれだけ楽しみにしていたか。
ひとりでに顔がにやけて来ちゃう。
ふふ。ふふふ。
「ちょっと。気持ち悪いんですけど。ニヤニヤしないでくれます?」
幼なじみのニノが、じろりとオレを横目で睨んだ。
幼稚園のひよこぐみで一緒のクラスになって以来、ずーっと一緒の腐れ縁だ。
いいんだ、今日は、どれだけイヤミ言われたって。
だって、やっと!3年目にしてついに、あの人と同じクラスになれたんだもんね。
本当は、ニヤニヤするだけじゃなくて、飛び上がって喜びたいくらいなんだから!
あれは2年前、高校の入学式。
その入学式で、新入生代表の挨拶をしたのが、櫻井翔くん、だった。
オレは、どっちかというと…うん、どっちかといわなくても、そんなに、真面目な方ではなくて。
それにあの頃は特に、真面目とか、頑張るとか、そういうのが無性にカッコ悪く思える時代でさ…。
彼女もいたけど、まあ、あっちから付き合って!って言われて、カワイイ子だったら、ま、いいよって付き合って、飽きちゃったらサヨナラして、みたいな感じで。
遊んでる、って言われても仕方ないよね。
だから、入学式といっても、そんなにちゃんとは参加してなかったんだよね…。
ガキだったんだ。
あくびしながらぼーっとしてた、ガキなオレの前を通って壇上に上がる櫻井くん。
すっと伸びた背筋が、彼の性格まで表しているようにも思えた。
体育館に差し込む光を受けてまっすぐ壇上を見つめる瞳が、キラキラしているのまで見えて、オレは、口を開けて見とれてしまった。
櫻井くんは、男の子だ。うん、わかってる。
それでも、どーしても気になって。
ある日ニノに言われたんだ。
「恋する乙女の顔だよ?それは」って。
乙女、ってことは無いだろうけど、なんかすっと納得いったんだ。
あ、オレ、櫻井くんが好きなのかな、って。
「アンタ、順応性高すぎ」
って、ニノには笑われたけどね。