それからは、俺は考え方を改めた。
というか…
開き直りに近いのかもしれない。
俺は、雅紀のことが、好きだ。
そう、好きなんだ。
認めたら、急に楽になった。
だから、勉強を頑張って受験が終わったら…
卒業式までに。
おれは、雅紀に想いを伝える。
そう、心に決めたんだ。
そして、この片思いから卒業する!
もしかしたら、もう、二宮と付き合っているのかもしれない。いや、その可能性は高いだろう。
あの2人の親密さを見たら…。
だけど!
俺は!
「相葉さーん!いるー?」
教室の入口から顔を覗かせる小柄な男。
少し猫背で、琥珀色の瞳に、口角の上がった口唇。顎のほくろ。
悔しいが…なかなかのイケメンだ。
「あっ、ニノー!」
「相葉さん、英和辞典貸してー」
「なんだよー、すぐ返せよな。オレもこのあと使うんだから!」
そんな事を言いながら入口付近でいちゃつく2人。
いちゃついてんじゃねーよ。クソッ。
相変わらずクラスでは、遠くから見ているだけの俺…。
心なしか二宮がこっちを見てニヤッと笑ったような気までする。
クッソ!
俺は、試験のための予習に集中した。
絶対合格して、告白してやる!!
恋をすると、勉強が手に付かない人も居るようだけど…。
俺はこの恋をバネに、勉強に集中した。
勿論放課後はピアノ部屋に行く。
あそこは、ふたりだけの空間だから。
流石に雅紀も長い時間は残らなくなったけど、それでもほぼ毎日、ピアノを弾きに来ていた。
どんどん上達していくピアノに、俺は、感動すら覚えていた。
そして、ピアノが上達すると同じく、いや、それよりも早い速度で俺は、雅紀にどんどん惹かれていった。
__そして、3月。
無事に、志望校合格を決めた俺は、卒業を目の前にして猛烈に緊張していた。
いよいよ明日は校内のお別れ式。
卒業式を前に行われるその式で、雅紀はピアノを弾く。
この日のために練習を積み重ねてきたんだ。
きっと成功する。
そして俺は…雅紀に…想いを伝えるんだ!