雅紀とピアノの練習をするようになって、ずいぶん俺とアイツは仲良くなったように思えても、
クラスでは、ほとんど話したことがなかった。
アイツと俺は、なんていうか遊ぶグループも違うし、
今まで別に一緒に遊んだりしてなかったのに、急に仲良くなるのも…ね。
なんてったって、ピアノの件は、二人の秘密なんだから。


そんなことを考えながら見るとはなしに雅紀の姿を目で追う。
今日もすげー笑ってんなぁ…
目尻の笑いジワ、気にしてたもんなぁ。
だけど、似合ってるよな。
なんつーか、アイツの優しい性格にぴったりだ。
ていうかさー、アイツ、休みの日とか、何して過ごしてんのかな…


なんだか…毎日の生活のなかで、知らぬうちに雅紀のことを考える時間が長くなってきている。
うまいものを食べれば、これ、雅紀も好きかな、とか。
空が青ければ、これ、雅紀にも見せたいな、とか。
旅行に行けば、ここ、雅紀と来たら楽しいだろうな、とか。








そんなある日。
ピアノの教室のドアを開けようと手をかけた時だった。





「だから……相葉さん……」

「……違うって……うん……でも」





なんだかぼそぼそと話し声が聞こえる。

ひとりは、雅紀の声。
もうひとりは…?

抑えきれず、ドアに耳を近づけた。







「駄目だよ、そんなの…オレは」

「相葉さん、俺じゃダメなの?このままじゃ…」

「それは…でも、それでいいんだ。いいんだよ。」

「相葉さん…
相葉さんのそんな顔、俺、見てらんないよ…」

「ニノ……」

「ほら……」






これは……!!
慌てて俺は、その場を逃げるように去った。