紺のカーテンの隙間から、細く月明かりが差し込む寝室の、ベッドにそっと寝かされて、
翔さんの熱い唇を受け止める。
触れる手のひらが、合わさる肌が、お互いの想いを届けてくれる気がして、
俺は力を抜いて全てを受け入れた。
溢れる雫も漏れる声も、俺の全てを全部知って欲しくて。
翔さんの全てが、欲しくて。
普段なら、照れて耐えてるところを開放して、
自分からも手を伸ばして、
こころが求めるままに翔さんに身を預けた。
それは…とても幸せで、夢の中のような時間で、
…正直、後半ははっきりとした記憶にない。
だけど、幸せな余韻だけが俺を包んでた。
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「大丈夫か……?」
掠れた声で翔さんが俺を呼んで、汗でペッタリと張り付いた俺の前髪を手で分けた。
俺はシーツの上で力なく仰向けに倒れて、
その隣に翔さんがドサっとうつぶせに倒れた。
顔だけを横に向けて、目を合わせる。
「つかれた……」
「お前、体力なさすぎじゃね?」
「もう、指一本上がんない。つかれた。喉乾いた。腰痛い。暑い。」
「……元気そうじゃん」
ふふっと笑って立ち上がると、ベッドの下に落ちてたパンツを拾い上げて、ちょっと悩んでぽいっと落とした。
結局、そのまんまキッチンまで行って、ミネラルウォーターのボトルを手に戻ってくる。
「全 裸ってどうなのよ……」
「だって履いたパンツもっかい履くのもやだし、新しいの出すならシャワー浴びてからにしたいし、わかるだろ?」
言い訳しながらキャップを外して渡してくれた。
わかるけど、って笑って俺が口をつけた残りを受け取ってごきゅごきゅと音を立てて飲む。
ベッドサイドにボトルを置いて、また俺の横に寝転んだ。
「シャワー行くんじゃないの…?」
「んー、もう少し、このまま」
鼻と鼻がくっつきそうなくらいに近づいて、ぎゅっと抱きしめられる。
裸の肌は汗ばんでいて、汗以外のものもまだくっついていて、
正直、ちょっと気持ち悪い。
でも、気持ち悪くてもくっつきたい方が大きくて、腕を伸ばしてしがみついた。
「どうした…?今日、素直じゃん」
「俺はいつでも素直ですけど?」
「んん?あー、うん、そうだねー」
「なにその棒読み」
睨み付けると、チュッ、て軽いキス。
「誤魔化そうとしてる?」
「んー?」
またキス。
甘すぎる空気が、普段なら耐えらんないとこだけど、なんだか幸せで、嬉しくて。
ニヤニヤしちゃう。
なんだか、今までと気分が違う。
なんかさ……ある意味、吹っ切れた。
いろいろ頭ん中でうだうだと考えて、なにが正解かわかんなくなって…あげく、大事なものを無くすとこだった。
自分の心に正直になることが、怖くて、自信が持てずにいた。
だけど、
答えは、目の前にあったんだ。
自分の心に聞いてみたら、それは、すごくシンプルで単純で、わかりやすくて。
ばかだね。
なにも迷うことなかったんだよね。
俺にとって……一番大切なもの。
この恋は、俺にとって、今まででいちばんの恋になるんだ。
もう、こんな俺でいいのかな…とか、釣り合わないんじゃないか、とか…そんなこと思ったりしない。
それを、翔さんが教えてくれたから。
これまでのいろんな出来事を通して、気づいたから。
いちばんの恋に、してみせる。