*ちょっと時間軸がずれちゃうんですが、
せっかく書いてあったのでここに残しておきます。
あとで読んだら、なんのことかわからなくなっちゃうかな。
それぐらい過去のことになるのかな。
先輩グループが、ひとり減ってしまった事件の際に書いた番外編です。
(side S)
ふと、夜中に目が覚めた。
暗闇の中、半分無意識に横にあるはずのぬくもりを探す。
だけど、ぱた、ぱたと動いた手は何も触らずシーツの上を滑った。
「カズ…?」
目を凝らすと、リビングに繋がる扉から明かりが漏れているのに気づいた。
起き出してそっと扉を開けると、テレビの前に座る猫背がひとつ。
「どした…?眠れない?」
声をかけたら、肩がビクッと震えた。
ソファーの前、ラグに直に座ったカズの隣に並んで座る。
肩を抱いて抱き寄せて。
一緒に、テレビの画面を見る。
黙ったまま、画面に映った先輩たちの話を聞いた。
しばらくして、カズがポツリと呟いた。
「俺さ…、信じらんないんだよね」
「うん」
「この画面がさ…この風景が、ホントの事だって、思えなくてさ」
「うん」
「だって俺、全然…気づかなくて。あんなに良くしてもらってて、頼りにさせてもらってて、なのになんにも、出来なくて」
「…それは、俺だって」
「違うんだ!
…ホントは、あの人は弱くて、でもそれを見せられなくて。だから…
もしかしたら俺にも甘えてくれるつもりだったかも、なのに…
俺、受け止められなくて…
だから…」
「カズ!」
俯いたカズから溢れる涙の雫が、鼻の先からぽたりと落ちた。
もう言わせたくなくて、雫ごと胸の中に抱き込む。
「カズが気にやむことじゃないだろ」
「でも、でも俺…俺は」
「お前とあの人の間に何があったかは知らない。
聞くつもりもない。
気にならないといったら嘘になるけど、でも…もう終わったことだ。そうだろ?」
「翔さん…」
ぐずぐずに泣き濡れた声で俺を呼ぶ。
離したくない思いで更に強く、ぎゅっと抱きしめた。
「それと、今回のことは別の話だ。
それに…」
背中を撫でる。
俺の想いが伝わるように。
「あの人が見せてくれてた、強くて、頼りがいがあって、誠実で…そんな姿は嘘じゃないから。
本当にそこにあったんだから。
それを俺達は知ってる。だろ?」
コクコクと頭を縦に振る、仕草が胸から伝わってくる。
「許されない事をしてしまったことを認めて、謝罪し、反省して。そして立ち直る姿を…
どのくらい時間がかかるのかはわからないけど、きっと俺達に見せてくれるって、俺は、信じてる」
俺にすがりつくカズの手に、力が入った。
「お前も、だろ?」
背中を撫でていた手を、涙でびしょ濡れの頬にあてて、そっと、まぶたにキスをする。
「だから。きっと大丈夫。な。」
「翔さん……っ」
テレビの光だけがチラチラとうつる薄暗い部屋で、俺達は涙味のキスをした。
(番外編おしまい)
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