あの子の結婚のニュースが飛び交ったのは、その数ヶ月後。
お相手は、イケメンサッカー選手。
彼女のレギュラーのニュース番組で、インタビューして知り合ったのがきっかけで、交際が始まって、この度ゴールインしたらしい。

ふたりは連名で結婚報告をして、しばらくは美男美女カップルの話題にもちきりになった。
レギュラー番組に出演して、生報告した彼女の笑顔には曇りはなくて、本当に幸せそうに見えて、
俺が言うのもなんだけど、ほっとした。



あのあと、正直しばらくは、彼女のリークがあるかもしれないってビクビクしてたけど、
俺たちの仲が暴かれるようなことはなかった。

俺の贔屓目かもしれないけどさ。
彼女が翔さんを好きだった気持ちには、嘘はなくて。
きっと翔さんの本気が伝わって、翔さんのしあわせを考えてくれたに違いない、なんて、思ってる。

まあ、もしかしたらもう翔さんには興味が無くなって、次の男にターゲットを変えただけなのかもしれないけど。

真相は、わからない。



わからないけど。


俺たちは今日も平和で、仲良くさせてもらってる。











「みてみて、翔ちゃん、これ」

楽屋でスマホのニュースを開いて相葉さんが大きな声を出した。


「『櫻井神社、またもや恋のキューピッド』だって!翔ちゃんこれで何組目?」


翔さんが噂になった女の子は、しばらくすると必ず他の男と幸せな結婚をするなんて、ネットでまことしやかに言われてるんだって。



「なんだよ、やめてくれよー」

「くふふ、翔ちゃんすごいじゃーん!」

「すごくねーよ!」

「ふふ、しょーくんの残念キャラ、定着しちゃったな!」

「残念キャラってなんだよ!不本意だな!」

「キャラじゃなくて、残念?」

「余計ひどい!」



二人の笑い声に、大野さんまで加わって、楽屋は一気に賑やかになった。




コンコン、とノックとともに、お待たせしました、スタンバイお願いしまーす、ってADくんの声。


「さー、仕事ですよー!行きますよー」

潤くんの声に、みんな、立ち上がる。



「さ、行こう」

みんながドアを開けて出ていく中、
スマホゲームに集中してた俺を振り返って、翔さんが手を伸ばした。

その手をぐっと掴んで、立ち上がる。


「行きますか!」


3人が、笑顔でこっちを見ている。


その手を離さずに、ドアの向こうへ、歩いていった。