ポンポン、とソファーの座面を叩いて、呼ぶのに、そーっと近づく。
横に座ると、はあっ、と短く息を吐く。
ため息というより、なんだか、中に溜め込んだ何かを吐き出すような。
そして、俺の腰に手を回してギュッと抱きしめた。
頭に顔を押し付けてくる。
抱え込まれているような格好で、つい力が入る。
「結構な…修羅場だったな…。疲れた」
ごめんな、って声が頭の上から降ってくる。
「ごめんって……。なんで俺連れてったのよ」
「だって……。」
俺を抱く手に力が入る。
「ニノにも、聞いて欲しかったんだ。俺の、本気」
「え……」
「だってニノ、全然信じてくれてなかっただろ?俺の気持ち。俺が、誰よりもお前のこと、本気だってこと」
「…だって、それは」
「俺もちゃんと伝えきれてなかったんだって、反省してさ。ちゃんと、言いたかった。聞いてもらいたかった。
だから……、勝手だけど、連れてった」
俺の頭を抱え込むようにして頬を寄せてる翔さんの、顔は俺からは見えないけど……
その言い方で、声で、表情まで見える気がした。
トクトクとはやく鳴る翔さんの鼓動。
「ニノ、不安にさせてごめん。でも俺は、本気だから」
翔さんは、そっとからだを離して。
俺の目を、まっすぐ見て、そう言った。
俺の目から、ボロボロっと涙が零れるのを感じる。
だって……、だって俺……。
「ごめん……ごめん、翔さん」
「ニノ」
「俺、翔さんにそんなふうに言ってもらえる資格…無いんだ……」
だって、俺……、
山口くんと……。
山口くんに身を任せてもいいって、抱かれてもいいって、思ってた……。
もう、気づいてるでしょ?
こんなにくっついてたら……
シャンプーの匂いが違うこと。仕事のあと急いで帰って、どこに行ってたかって。
翔さんが来た時部屋で一人、泣いてたことだって、わかってるでしょ?
だから……
ポロポロと涙が流れるまま、止められないでいる俺を、翔さんはぎゅっと抱きしめて。
「俺さ……考えすぎたら失敗するってわかったんだ。頭ん中で考えすぎて大事なものを逃すなんて経験、もうしたくないからさ」
俺の肩に顎を乗せるみたいにして、ポンポンと背中を優しく叩いて、宥めるようにして。
「だから、勝手になることに決めたの。自分の気持ちに素直になることにしたの。
もう離さない。お前が何を言っても、思っても、何があっても。俺の気持ちは変わらないから。
ニノが、好きだから」
じわあっと……言葉が、想いが、染み込んでくる。