山口くんの自宅は、オシャレなマンションだった。
ちょっと前から、一人暮らしになったせいなのか、余計なもののないシンプルな部屋で。
オシャレな間接照明がリビングを照らしてた。

なんか、意外。
もっと……男っぽい、あんまり、構わない感じの部屋かなって勝手に思ってたから。



その通り口に出したら、「そうか?なんか失礼だな」って、笑った。

笑って。

風呂、入るか?って聞かれたから。
頷いた。




あったかいシャワーを浴びながら、思う。

これ……そういう流れだよな。

俺……これから、山口くんと……。



頭に浮かぶ顔を消すように、シャワーを強めた。






貸してくれた下着とTシャツ、ハーフパンツを身につけて、頭からタオルをかぶってバスルームから出てくる。

リビングで、グラスを傾けていた山口くんは、俺を一瞬、凝視して…それから、ニコッと笑った。


「今、ウイスキー飲んでたんだけど…お前はどうする?ビールもあるけど」

「俺も、同じの貰えますか…」


グラスに、たっぷりの氷。
そこに、琥珀色の液体を注いで、渡してくれる。

「飲んでてよ。俺も、風呂いってくる」


俺の、まだ濡れた頭を、タオルごとワシワシっと撫でてった。



さっきまで山口くんが座ってた、リビングのソファーに、グラスを手に座る。
オーディオからは、静かなジャズが流れてて。
ベースの音が、響く。
部屋にも、ベースが立てかけてあって。
写真立てには、海の写真。
船を運転する山口くんの写真もある。
日に焼けた肌、逞しい腕。太陽の光と、青い空。


手にしたグラスの中の液体を、ぐっと一息に飲み干して、目を閉じる。


もう……いいんだ。これで。
ぜんぶ、忘れさせてもらえるなら。
それで、いいんだ。





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