(side N)




その後。

相葉さんちで飲んで、話して。
なんだか余計に、自分の気持ちがはっきりしたような気がしてる。


これでいいんだ、って、思ってる。


あの子は…あの女優さんはね?ニュースのレギュラー番組があるからね、毎週テレビでも見かけるし、
局で遠目に見かけたことも、ある。
さすがに楽屋まで来たのはあの時だけだったけど。


自信たっぷりなあの余裕な笑顔が、目に焼き付いてる。




俺も、悪趣味だなって思うんだけどさ。
ネットで調べたり、しちゃうんだよね。



ネットによると。
もう二人の仲は確実らしいよ。
来春にでも結婚、したいんだって。
ご両親も認めた、才色兼備なお嬢様なんだって。
だけど仕事の関係もあるから、数年待ってからゴールイン予定なんだって。
あの、写真撮られた日は……、両親含めての顔合わせのあと、高級ホテルにお泊まりしたらしいよ。
キッチリ、スーツに身を包んで、相手の両親にご挨拶、したんだって。


もう、詳しくなっちゃったよ。



俺ってドMのケがあったのかな。
見たくないのに、見ちゃって。
知りたくないのに、読んじゃって。



もう、ずっと翔さんとはふたりでは会ってない。
着信もメールも個人のは拒否してるし、仕事のあとも、会わないように一目散に帰ってる。



だから、もう、わかんないんだ。
何が本当なのか。


俺に向けていた……あの眼差しが、笑顔が、言葉が、
本当だったのか、
今はもう、わからないんだ。



今ではさ、
俺たちの間に何にもなかったことも、良かったんだって、思ってる。
もし、体のつながりがあったとしたら……こんなふうに受け止められていたか、わかんない。





お揃いで買った色違いのカップとか、お気に入りのブランケット、自宅で使ってるのと同じモコモコの部屋着。
いつも座ってた場所。
俺んちに残る、翔さんの気配のあるものを見るたびに、
未練たっぷりに思い出したりしてさ……。


初めて気付かされた、自分の一面。



いつも、付き合ってた子に別れようって言われたら、すぐわかったって言ってたし、
後腐れなく別れるのは得意だって思ってた。
気持ちが離れたらもう、仕方ないって思ってたから……。
切り替えは早い方だって思ってた。
だって、向こうがもうこっちに興味ないものを、無理やりつなぎ止めてなんの得があるの?


前にインタビューで話したこともあったけど、
浮気されても、仕方ないってすぐ思えるタイプだって思ってたから。


こんな未練たっぷりなのなんてさ。
逆にばかじゃねーのとか思ってたところもあるからね。




なんなんだろ……。


こんなの、初めてで、
気付かされる。


あの人への執着心に。



そんなのが俺にもあったなんて。








はぁ…………。


もう何度目かのため息を零す。





とにかく……。仕事。
仕事しなくちゃ。
頭ん中空っぽにして働いてたら、余計なことなんか考えなくて済むんだ。


もう今ならね、オファー受け放題よ?俺。

映画でもドラマでも、とにかく頭使うやつがいい。
長時間かかるやつがいい。



なんでも受けて?ってマネージャーに言ったら、苦い顔された。
ただでさえ二宮さん痩せちゃって…これ以上やつれて、倒れられたら困りますよ!って。

それどころじゃないんだって。

悩んでくよくよ考えてる事の方がよっぽど…今の俺には、キツい。





そんなふうに、仕事に専念してたら、
なんだか感覚も麻痺してきて、
やっぱり、あれは夢だったのかな、なんて思えてきた。
ふふ。笑える。
あんまりにも想いが届かなすぎて俺、夢見てたのかな?

考えてみれば、5人しかいないグループん中で俺、ふたりに振られてさ。
普通だったら居場所ないよね。



もう……5人の楽屋にいても、メンバーの顔、見る余裕もなくて。
一番遅くに入って、一番早くに出る。
そうやって……俺は、自分のシャッター全部閉じて、生きてた。