やっとオレの涙が止まった頃には、ニノはすっかり呆れていた。

「アンタよくまあそんなに泣けるね?干からびちゃうよ?」

なんて言って水のペットボトルをくれた。


「ごめん……なんか結局、ニノの泣くタイミング奪っちゃった……」

「フハッ、何言ってんの!」

笑ってニノが、ありがと、なんて言うから。

もう、また泣けて……。

さらにニノに笑われた。












「で?
泣くだけ泣いて、そのまま、ってわけ?」

「違うよー!ちゃんと言ったもん!
ちゃんと翔ちゃんと話し合った方がいいよ、って。翔ちゃんの気持ち、ちゃんと聞いた方がいいって!」


こ、怖いよ潤。
目力が怖い……。


なんてことも言えず。

ニノとご飯食べた数日後、オレは潤に睨まれていた。


「ふーん……」


こ、怖いよ……


「つまり、まーが言ってもニノの気持ちは変わらなかった、って事か」

「うん……」


「これは、本気かもな……」


「そうなんだよ!もう、どうしたらいいのかわからなくて……」


「問題は、やっぱり翔さんだな。翔さんの気持ちがどこにあるか……。
翔さんも、別れるつもりだったら、もう俺たちに出来ることは無いよ」


「そんな!だって、ニノは絶対、まだ翔ちゃんのこと好きなんだって!
無理やり、諦めようとしてるんだよ……。オレ、そんなの、ニノが、可哀想で……」


話してたら、また涙が出てきちゃった。
もう、オレってホントによく干からびちゃわないな!
自分でつっ込んだりして。



潤が、そっとオレの頬の涙を両手で拭って、そのままきゅっと抱きしめてくれた。




潤の腕に包まれて、ホッとする。
力強い腕に、厚い胸板。
胸いっぱいに潤の匂いを吸い込んだ。
からだに元気が染み渡るような、そんな感じ。


好きな人とくっついてたら、そうなるよね。


ニノにも……そんなふうに気持ち、安らいで欲しいのにな……。


そんなふうに思って、潤の背中に回した手に、ぐっと力を入れた。





「潤も……そう思ったりするの?」

「ん?なにが?」

「こういう関係が……真っ当じゃないって。普通じゃないって、思う……?」

「普通って、なに?」


逆に潤に質問されて、戸惑った。


「俺にとって、まーの事、好きだって気持ちが、すごく普通で真っ当だけど。」

「へ……。」

「何が普通か、なんてその人ごとに違うんじゃないの?」



う……。
オレ……オレ、いま、きっと顔、真っ赤だ……。



「まーは?違う?」



そう言ってオレの瞳を覗き込む潤が、あまりにもカッコよくて……

さらに真っ赤になっちゃうよ。




「オレも……オレも、潤が、好き……。
好きだから……。
もし、普通じゃないって言われても、
もう、離れるなんて無理だから……。」


そう言って、しがみついた。

離れろなんて言われてないのにね。

離れたくないって思ったから。

ぎゅって、くっついた。




潤は、そんなオレを優しく、優しく見つめて。

そっとキス、してくれた。




ニノだって……きっと、涙は流していなくても、
きっと今頃心が泣いてるんだ。


ニノにも……もちろん、翔ちゃんにも。
幸せになってもらいたいって、
改めて、思ったんだ。