(side A)
「ニノ、ニノ!」
「あ、はい?ごめん、聞いてませんでした。なに?」
「ちょっと大丈夫ー??」
「ゲームしすぎ?」
どっとスタジオに笑いが起こる。
いつもしっかりしてるニノのウッカリに、お客さんも喜んでるみたいだ。
でも……、オレは、心配。
ニノは、ああ見えてプロ根性がすごくて、プライベートを仕事に持ち込んだりしない。
だから……、
あんなふうに、しかも収録中にボケっとすることなんて無いから。
最近のニノを見てると……
なんか元気なくて。
もともと白い顔が、青く透けるみたいになってて、
ずっと心配してて……
「相葉くーん、聞かれてますよー」
「あっ!はい?!なになに?!」
「今度はアンタかよ」
潤にツッこまれて、さっきよりも大きな笑いが起こっちゃった。
ニノも、呆れたみたいに笑ってる。
いけない、いけない、仕事、仕事。
気持ちを切り替えて、そこからはちゃんと集中した。
_____
「さー、食べよ食べよ!」
あの後、収録終わりに速攻帰ろうとしたニノを拉致って、俺んちへ連れてきた。
今日こそは断られても、なにがあってもつれてくんだ!って心に誓っていたから、
意外とあっけなく「行くよ」って言ったニノに、拍子抜けするくらいだった。
今日のメニューはハンバーグ!
ニノの大好物!
ちゃんと中にチーズも入れて、チーズINハンバーグにした。
「どう?どう?うまい?」
「……うん、うまいよ」
「でしょー!今回はね、自信作!いっぱい作ったから、いっぱいたべて!」
グイグイと皿をニノの前に押し出すと、ニノはあからさまに嫌そうな顔をつくって、「こんなに食えねーよ……」って言う。
もう、そんなの気にしなーい。
いただきまーす!って手を合わせて食べ始めた。
「うん、うまい!うまい!オレ、もしかしたら天才かもなー!さーっすが包丁王子!って感じ?」
「なにそれ、自画自賛が酷すぎるでしょ」
「いいじゃん!だってうまくできたよね!焼き加減も、このソースも!」
ガツガツ食べるオレをみて苦笑しながら、ニノも、結構たくさん食べてくれた。
食べ終わって、片付けして。
といっても、食器を食洗機に突っ込むくらいだけど。
テーブル拭いて。
コーヒーメーカーから、こぽこぽという音といい匂いがしてる。
のんびりした静かな時間。
ニノを、勢いで連れ帰って来たのはいいものの……なんて話を切り出したらいいのか、わかんなくて。
だってどう考えても、ニノの雰囲気が違うんだもん。
やっぱり……翔ちゃんのスクープからだよね。
でも、あの件は誤解だって、嵌められただけだってわかったはずじゃないの?
もう、あの話し合いで解決したもんだと思っていたのに。
んーー。どーしよう。
そんなふうに考えながら、コーヒーを入れてる間になんて持ちかけようか考えていたのに、
ピーっ、ピーって出来上がりの音がしちゃって。
あー、タイムアップ。
どーしよう。
とりあえず、ゆっくりカップに注いで。
ニノはいつもブラックだからー。
オレは今日はちょっと牛乳いっぱい入れちゃおうかな、とか。
バタバタやって持ってったら、ニノが、オレの顔を見るなり吹き出した。
「アンタ、わかり易すぎ。何なの、言ってみなさいよ」
「え……。えーーと……」
「なんか言いたいことあるんでしょ」
「んと……うん……」
この後に及んでいい淀んでるオレを見て、ニノは、ふっ、と息を吐く。
「翔さんとは、別れたよ」
「はあ?!え?!なんで?!」
「声がでけーよ……」
「だってニノ……」
「いいの。所詮合わなかったんだって」
そう言って、笑顔を見せている。
けど……。
オレは、そんな笑顔に騙されないよ。
ほかの誰を騙せたって、オレだけは騙せないんだからね!