それから数日後、その雑誌は発売された。


超人気アイドルの熱愛だっていうんで、かなり世間は騒然となった。



特に翔さんは毎週の生放送がある。
翔さんの生のコメントを欲しがって、局の前にたくさんの記者が集まってたって、あとから疲れた顔のマネージャーに聞いた。

皮肉なことに、おかげで視聴率も上がったって話。
翔さんが、何か言うんじゃないかって、
言わないまでも、表情から何かわかるんじゃないかって。
みんな下世話だよね。
そういうの好きだよね。






相手の女の子も……。そのまま注目の元となった。



元々、知性派で注目株の女優さんということもあって、スキャンダルの割には好感度は逆に上がったらしい。


知性派のふたりの熱愛報道は、基本的には好意的に受け止められてるって、ネットニュースで読んだ。

俺だってね、ネットニュース見たり、俗にいうエゴサってやつ、したりするからね。

だから……見ちゃうんだよね。そういう記事。


見たくなくてもね。





ほらね。

やっぱりでしょ?


やっぱり翔さんには、ああいう女の子との、フツーの恋愛がいいんだって。
だって世間に受け止められてんでしょ?


あの子ならいい!って、
あの子だったら許せるわ、なんて、ファンの子のつぶやきも見たよ。


だよね。


きっとその通りなんだよね。






頭では、じゅうぶん理解できる。

その通りだって、思う。


思うから……。


これで、良かったんだって、そう、思うことにしたんだ。






困っちゃうのはさ。


俺たち仕事仲間だから。

会いたくなくても会わなきゃいけないってこと。




どうしたって5人のレギュラー番組はあるし、
CMだって、取材だって、
まだまだグループのやつがあるじゃん。




そういう時はさ……。

とにかく、時間が過ぎるのを待つのよ。
それしかないからね。


ちゃんと仕事してたら、さ。
時はすぎるのよ。
意外とね。





あの日から……。


俺が、別れるって言ってから、数日後の初めての5人の仕事の時。


翔さんは……。
あからさまに目を逸らした。




それなら、それで……いいんだ。

俺の演技力もなかなかだってことだし。

それに、俺もそれを望んでたんだから。

翔さんがちゃんとした人と……ちゃんとした恋愛ができること。



だからさ。



良かったんだよ。




そう、思ってた。