___翔さんの、笑顔が、浮かぶ。
困った顔、考え込んだ顔、
口いっぱいにごはん溜め込んでモグモグする顔。
ドジやってアワアワする顔。
おどけた顔。
メンバーと話しながら爆笑する顔。
俺の好きな……翔さんの、顔……。
眠れるわけがなくて、仕方なく起き上がる。
キッチンへ行って、冷蔵庫からビールを出してプルタブを引き上げた。
俺は……
翔さんの、笑顔が好きだ。
目尻を下げて、大きな口で笑う、あの声。
思い出すだけで、嬉しくなる。
ふふ……。
シンクに寄りかかって、立ったままビールを呷る。
ふう、とため息が出た。
涙は出ない。
もう、わかってる。
翔さんの幸せが……何よりも、大事だ。
翔さんの家族の幸せも。
翔さんの未来に、必要なものも。
わかってる。
もう一口、ビールを呷ったとき、インターホンが鳴った。
モニターに映る影。
帽子に、マスク。だけど、間から覗くくっきり二重のアーモンドアイが、モニター越しに俺を捉えた。
『居るんだろ……?話、させてくれよ……』
胸が、苦しい……。
返事せずに黙ったままでいたら、
『今行く』
とだけ言ってモニターから姿を消した。
合鍵。持ってんだもんな。
来れるよな。
それなのに一応インターホン鳴らすとか……。
きちんとしていて、礼儀正しい。筋を通す。
そんな、翔さんの一面。
シンクの横に、飲みかけのビールの缶を置いて、玄関へと行く。
玄関で、待つ。
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