その時。




「まあ、落ち着こう?」

重い空気を和らげるように、リーダーの声が楽屋の中を通った。
柔らかいリーダーの声は、冷えた楽屋の空気をあっためるみたいだった。


「撮影、遅らせてもらって、番協のお客さんも、スタッフさんも待たせてるからさ。
まずは仕事。
それから、ゆっくり話聞かせてもらうとしてさ。
まだ情報は漏れてないはずだから、お客さんは何も知らない。
いつも通りに、仕事。
出来るだろ?」


オレたちを見回すようにして、でもきっぱりとそう言った。



正直、オレは……
こんな状態で笑っていつも通りに、なんて、できる気がしなかったし、
なにしろ、仲良しがウリのオレたちなのに、こんな空気で……。


バレちゃうのが、こわかったし、
やっぱり、ファンのみんなに、ガッカリされちゃうんじゃないかって。





だけど……



それまで俯いていた、ニノが。
顔を上げてきっぱりと、

「できるよ。仕事、行こ。」

って、微笑んだんだ。




その顔を見て、ん、と頷いたリーダーは、

「行けるよな?」

って、もう一度、言った。




無理だなんて、言えなかった。






その後の収録は……。

まるで、あの楽屋が嘘のように、順調に進んだ。

なんなら、いつもよりもスムーズに進んでて。


なんと言っても今日は、リーダーのボケが冴え渡ってた。
ニノも、調子よくツッコンでいく。
いつもよりも、多少よく喋ってるみたいに見えたのは、オレが気にしすぎなせいかな……。

きっと、オレたち以外のスタジオにいた人誰も、いつもと違うなんて思わなかったんじゃないかな。
スタジオは、いつも以上に笑いに包まれてた。

おしゃべり上手なゲストさんに助けられたところもあったけど、
2本撮りの収録が、かなりの巻きで終わった。



終わって。



オレたちは、マネージャーに頼んで、5人の話し合いの場をつくることにしたんだ。



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