「いいから、いいから!
ほら、俺のことはいいから、ゆっくり入ってきな??」

「わかったでござる…」

ぷうっ、と頬を膨らませて、不服そうにこっちを見てから、
ぺたぺたとバスルームへ行く後ろ姿を見送って、
なんだか、どっと疲れてソファーに倒れ込んだ。




そもそも飲みすぎて二日酔い状態だし、
ここんとこ寝不足だし、
その上にドタバタして、ああ、疲れた…。


それにしても、可愛かったな。

ふふふ。

風呂、上がってきたらどうしようかな。

腹、減ってんじゃないかな。

なんかあったかな…。

出前でも取ってもいいし…。

食いに行く、のは無理かな…。

着替えてくれるかな。忍者服。

ていうか、キッチン、片付けなくちゃ…。

うん…。教えてあげて、一緒に…。



いろいろ考えているうちに…。
知らないうちに、そのまま眠ってしまっていた。









_____



携帯の着信音で目が覚めた。


「あれ…?寝てた…。」


電話を出ると、マネージャーからで。
そうとう酔っ払って帰った俺を心配しての電話で。
オフ楽しんでください、おやすみなさいって。
え?

「オフって…昨日だよね?」

「やだなあ、翔さん。昨日のコンサートの打ち上げで、帰ったところでしょう?」


慌ててスマホの日付けを見る。


たしかに…。
日が変わってから帰宅して、まだほんの少ししか経っていない。


え?


そういえば、ソファーに横になったつもりが、ベッドに寝ている。

電話を切って慌ててキッチンを覗いても、調味料や食材まみれではなく、いつものキッチンだ。


「サットリくん?!」

バスルームをみても、使った形跡はなくて…。


「なんだよ…夢かよ…。」


マジか…。


そりゃそうか。
自宅でのドッキリとか、ありえないし。
そもそも、忍者とか。
ないよなー。



何となく、笑える。
俺、どんな夢見ちゃってんだよ。


笑いながら、何となく、
あの可愛いサットリくんに会えないのか、って思うと、
ちょっとだけ、寂しくて。
ちょっとだけ、胸が、ツキン、と痛んだ、ような気がしたのは。
気のせい…。じゃないはず。






.数日後、5人のレギュラー番組、終了後の楽屋。


わかっちゃいるけど一応、ホントにドッキリ番組だったんじゃないかって疑いは晴れていなくて、
今にも『ドッキリ、大☆成☆功!』って書かれたプラカードを持ったメンバーが走ってくるんじゃないかってちょっとビクビクしてて、
いろんな番組のスタッフさんに聞いてみたりして、
案の定、何ですかそれ?って言われちゃったけども。


変な夢見ちゃって、なんか、俺欲求不満なのかな…。なんて思ったりもしてて、
今日の仕事も、ちょっとドキドキしながら来たんだけど。
智くんも、もちろん全く普段通りで、ほっとしたんだった。


やっぱり俺の都合の良い、変わった夢か…。


相変わらず、すごい速さで着替えて帰っていったニノ。今日は相葉くんとメシみたいで、盛んに急かして連れ立って帰っていった。この間自販機んとこでずっと待ってたもんな、地縛霊みたいに。
松潤は友だちと飲み、って出ていった。


楽屋には、俺、と智くん。

「智くん、お疲れ。あのさ…この後、予定ある?良かったら、メシでも…」

ゆーっくり支度する智くんを横目で見ながら、勇気を出して声をかける。


「いいよ」

あっさりとした返事に拍子抜けしながらも、嬉しくてほっとする。


「何系がいい?予約するよ!」

張り切ってスマホを覗く俺に、

「今日は、しょーくんちがいいな。」

「え?俺んち?」

「ダメ?」


上目遣いで言われて、まさか断るなんてありえませんよ?


「いいよ!いいけど、珍しいね?」

「ふふ。だってさぁ。

今度こそ、お背中流すでござる、だからね。」



ふふふーん、と鼻歌を歌いながらさっさと帰り始める智くんに。



「えええっ??!!どーいうこと?!ねえ、智くん?!」


わっけわっかんねーけど、
辻褄合わないけど、
ま、いっか、って思っちゃう俺。


櫻井翔、34歳、
なんだかもう、うん、嬉しいから、いいです。


「待って、サットリくーん!」


慌ててその背中を追いかけたのでした。

ニントモカントモ。









(おしまい)






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ちょっとしたおふざけです。笑

書いたのが2016年のお正月あたりなので、そのころの年齢になっています。



「大野さんが忍者を」という情報が入ったときに、
どんぐりまなこにへのじぐち、くるくるほっぺに覆面すがたー、な忍者だったらびっくりするな!と思いまして。



あまりものを考えずにそのまま書きました。笑



考えたことといえば、
「サットリくん」にしようか、「サットシくん」にしようかということぐらいですかね。
(どっちでもいいー!)






読んでいただきありがとうございました!