翔さんの目に俺が映る。
そのまま、顔を近づけて、唇を重ねた。
触れた柔らかな唇を舌先でなぞる。
ノックするように。
閉じた唇をこじ開けるように隙間に侵入して、その舌を追いかけて…。
翔さんが、頬を赤らめて、吐息を漏らすのを、キスをしながら見てた。
俺の…俺の、翔さん。
俺だけの…。
そっと唇を離す。
目は、翔さんを見つめたまま…。
もう1度、翔さんに抱きついて、さっきよりも強く、抱きしめた。
「翔さん……、ごめん…。」
「ふふ、なんで謝んの?」
「…ごめん、ね」
離してあげられなくて。
好きになって。
「ごめん…。」
俺の言葉に、困ったように笑って、
翔さんは、今度は自分からキスをくれた。
それは…。
俺のと同じ、想いのこもったキス、だった。
いつもの、軽いのとは違って…。
俺の全部を奪い尽くすような。
今度は、しっかりと目を閉じる。
全部、感じたいから…。
はぁ…、って吐息が漏れて、唇が離れる。
強く、強く抱き締められて…
離れたくないな、このまま…って思った時、
そっと、体が離れていった。
.「こんなとこで寝てたら、風邪ひくぞ。
俺ももう帰るから、ちゃんとベッドで寝な?」
「えっ?!」
「なんだよ…」
「……帰んの?」
ふっ、と笑って翔さんは、俺の頭を撫でた。
「帰るよ?
ホントは…帰りたくねーけど。
帰らないと…俺、理性保てる自信、ねーわ」
え…。
顔が、熱くなる。
「ふふ、お前、そんな顔すんなよな。」
「そんな顔って、どんな顔よ…」
「翔さんだいすきー、って顔じゃね?」
「なっ!」
慌てる俺を見て、ぷっ、て吹き出して。
耳元で、俺の好きなあの声で、囁いた。
「俺も、好きだよ」
開きっぱなしの目も、口も、閉まらなくて…。
俺、すごい顔してた、かも…。
ビックリしすぎで声も出ない俺のほっぺたをつまんで、
「今日は、帰るから。
また、ゆっくり出来るときに、な?」
思いっきりイケめてる顔でそう言って、
翔さんは、帰ってった。
なんだか…
これだけのこと、なんだけどさ?
昼間のモヤモヤや、ショックな気持ちは吹っ飛んで、
ジワジワと幸せを感じる。
顔がにやけてるのが、自分でもわかって、
ほっぺたを両手でパンパンと叩いた。
あんなこと言って…。
今頃、翔さんも顔、真っ赤にして照れてんじゃないのかな?
翔さんのキャラじゃないでしょ…。
くふふ。
それとも、コンサートのときの、帝王キャラ?
くふふふふ。
誰が見てるわけでもないのに、腕で、口元を覆ってニヤニヤを隠す。
あー、絶対俺、真っ赤だ。
俺って単純なのかな。
こんだけのことで、もう、止まんない。
あ、ダメ、もう。俺、顔面戻らないわ。
ファンの皆にはとってもお見せできないようなデレッデレの顔のまま、ベッドに潜り込んで、
俺は、久しぶりに寂しさを感じずに眠った。
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