そんな翔さんが、なんだか可愛くて。
あー、この人のこと、好きだなあ…って、改めて思ったんだ。
ふふ。


って、俺、何言ってんの。
恥ずい。恥ずいわー。




「ん?どうした?」

脳内で恥ずかしくなって俯いた俺を、翔さんが心配そうに覗き込む。


「や、何でもない何でもない!行こ!」

「?ん、わかった」



慌てて、車に乗りこんだ。






翔さんの移動車で帰る。


でも、今日行くとこは店じゃない。

最近は、外じゃなくてどっちかの家で飲むことが多くなった。

どっかで美味いものテイクアウトしたり、
まあ、たまには簡単なもの、つくったり。
番組で見た評判のお取り寄せグルメ買ってみて冷凍庫に入れといたりしてんの。


なんだかんだ、やっぱり外より家の方が落ち着くしね。




今日は俺んちに来た。

こないだ届いたお取り寄せグルメ食おうって言って。



なんか、肉。
焼いて食った。
え?全然食レポ出来てないって?
いいの。美味かったから。
翔さんがポチポチしてくれて買ったやつで
ミルフィーユみたいに黒豚をどうのこうので、とろける柔らかさでなんとかかんとかって言ってたけど、
いいの。
一緒に食ったらなんでも美味いから。
くふふ。



ふたりでキッチンに並んで焼いた。

ていうか、翔さんが肉を焼いてくれて、俺はその他。
メシ炊いたり、味噌汁つくったり。
簡単なもんしかやんないけどね。


翔さんは、フライパンにつきっきりだった。
ネットで、美味い肉のやき方を検索したらしくて、
それを見ながら。



「ねえ、翔さーん。」

「ちょっと待って。話しかけないで。」


それはそれは、真剣で…。

温度見て。火加減見て。

口、んーってして。超、頑張ってる。





「うわっち!あっち!」

「ちょっと、大丈夫?」

「タレ入れたら跳ねた!」

「でしょうね!」

「あっちー!」


蓋を盾みたいに持ってかばったりして。
スッゲー、慌ててる。
俺、腹抱えて笑った。


笑うなよ、って拗ねかけた翔さんをなんとか宥めて、
大騒ぎしながら、やっと焼きあがった。




「うまそーじゃん!」

「だっろー?すっげえ調べて取り寄せたんだから!どう?焼き加減」

「うん、美味いよ!」

「マジで?!良かったぁー!」


満足そうな顔に、俺も嬉しくなる。

ちょっとぐらい焼きすぎてても、タレがはねてキッチンベットベトでも、いい。

俺のためにやってくれたんだもん。

美味そうに肉を頬張る翔さんを見て、俺も自然と笑顔になった。