(side O)





「ただいまー」


玄関のドアを開ける。

急にぐんと冷え込んできた、外の冷たい空気と交換するみたいに、
部屋の中のあったかい空気がふわんとおれを包んだ。


灯りのついた部屋、
あったかい空気、
ふわりと香る、いい匂い……。


なんか急に腹減った……。
ぐう、ってなりそうな腹をこすりながら、
幸せいっぱいの気持ちで、リビングのドアを開ける。



部屋の中には、テレビの前の猫背がひとり。

こっちも見ないでゲームに夢中。







「にーの、ただいま」


「んー。」




目は、画面のまま。ま、いつも通り。


返事するだけいい方か。




「なあ、もしかして、メシ、作ってくれたんか?」


「んー、あー、ちょっとまって」


コントローラーをちょこちょこいじって、ゲームを終了させて、テレビの電源を落としてる、間におれは、うがい、手洗い。

ほんとはめんどくさいけど、にのがうるさいから、やるようになった日課。



大急ぎで済ませて戻ると、にのは、キッチンにいた。


「おっ、おでんじゃん!」


「あっためただけだけどね。買ってきたやつよ、スーパーの。袋に入って売ってる、あれよ」



お玉で鍋をぐるぐるする、後ろ姿。
最近、髪、切って、うなじがよくみえる。
真っ白な首筋が、おれを誘う。





「ありがと、すっげ、嬉しい」


後ろから、抱きつく。




「だから、買ってきただけなんだって。鍋に入れてあっためなおしただけ」



「でも、嬉しい」



照れる耳たぶが、ぽっと赤くなる。

後ろから、白いうなじに顔をうずめた。



「もう風呂、入ったの?」


「うん」


「いい匂い」



擽ったそうに肩をすくめるのを、逃がさないようにぎゅっと抱きとめた。


おれとにのは、背の高さも同じくらいだから……
こうやって、後ろから抱きしめれば、ちょうどぴったり合うんだ。
パズルのピースがはまったみたいな、
2本のスプーンが、重なったみたいな、
うまく言えねぇけど、なんか、安心感があるんだ。


ぴったり重なって、にのの匂いを思いっきり吸い込む。


「もう、なにやってんのよ……」


呆れるように言う、にのの首筋に、唇を寄せた。


「んっ……」


ビクッ、て小さく跳ねて、みるみるうちに白いうなじが赤く染まった。

そのまま、うなじから、耳へ唇を這わせる。

ちゅ、ちゅ、ってわざと音を立ててやる。

ぺろん、って大きく耳を舐めてやったら、「ひゃっ!」とか言って逃げようとするから、
無理やりに のの細い顎を掴んで、こっちを向かせて、唇に、キスしてやった。










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次からは限定公開です。((*_ _))