ゲームをするニノの顔を見る。
頬がこけて…痩せたな。
もともと華奢なイメージだったけど、より一層。
少年のようだ。
出会った頃のニノと、ほとんど変わらなく見える。




いや、変わったな。
あの頃よりも…なんていうか、綺麗になった。
自信に満ちた目に、ドキッとすることもある。
ステージで、妖艶に踊る姿に、目を奪われて離せなくなることも。


いつも、いつでも、ニノを見てきた。
意識しても、無意識にも。
吸い寄せられるように…。
こいつの無邪気に笑う顔が、
シニカルにニヤリとする顔が、
悲しみに俯いた顔が、
得意げに話す顔が、
全部全部、思い出されて。



自分の考えに、思わず笑いが出る。
ハハッ、なんだよ…。
否定するまでもない。俺の気持ち、もう何年も前から固まってんじゃん。


いくら否定したって…
いくら目を背けたって、答えは、もう出てるんだ。








「ニノ、最近、ちゃんと食ってる?」


「…。べつに。食ってますよ、思い出した時には。」


「こないださぁ、友だちと行った店のハンバーグが、またすっごく美味くてさぁ。
なんだろな、ハンバーグ食うと、絶対お前の顔が浮かぶんだよな。
これ、ニノに食わしてやりたいな、って。

他でもそうだよ?

ゲームしてる後輩を見れば、あ、これニノがやってたヤツじゃん、とかさ。

綺麗な風景のロケ地に行っても、
ここニノと来てぇなあ、って思って、いやいや、アイツこんなとこ行くのめんどくさいとかって言いそうだな、って思って笑って、
スタッフさんに不審がられたりしてさ。」


突然、そんな話をしだした俺を、ニノが不思議そうに見る。


「俺にとっても、
結婚して、子どもができて、家族ができて、
迷惑かけてた両親に孫の顔をみせて…
そういうのが幸せってやつだってずっと思ってきたからさ、
こんなのは間違いだ、おかしい、変だ、って、自分を否定して、
そんな思いに蓋をしてさ。
メンバーとして…所謂普通の?友人としての、仕事仲間としての立ち位置を守っていかなきゃって…。


認めたくない、認めたらいけないんだって自分を押さえつけて。


だけどさ。


俺、結局は四六時中ニノのこと考えててさ。
抑えれば抑えるほど、蓋をしたはずの思いが暴れだして、どんどん膨らんでいってて。
もう、全然、ダメなんだ。」




ニノの目のふちが、真っ赤になって、
普段から水分量の多い瞳に、涙の粒が溜まっているのが、見えた。


そうしたら、もう、堪らなくなって。


ソファーから立ち上がって、間にあったローテーブルを跨いでニノの前に行って、
そのまま、ぎゅっと抱きしめた。


「好きだよ。ニノが、好きだ。


ダメだって、いくら思っても、頭で止めようと思っても、ココロがいうことを聞いてくれない。


ニノが、好きだ。」



腕の中でニノがふるふると震えている。



「ニノ…?」


「ばか、ばか翔さん。俺が…言おうと思ってたのに。
言わせてくれなかったくせに。
なんなんだよ、これ…」

「うん…ごめん」

「ふざけんなよ、自分ばっかり…」

「ごめん」

俺の胸に顔をうずめながら文句を言うニノが、可愛くて。
その髪にそっとキスをした。


「聞かせて?ニノの気持ち。」

「……。ばか翔さん。」

「フフッ、なんだよ」

「もう言わねーよ!」


真っ赤な顔で、ばっと俺から距離をとろうと腕を突っ張ってもがく。


「それは、天邪鬼な二宮さんの、yesの言葉と捉えて宜しいでしょうか?」


「ばっかじゃねーの!」


腕の中で真っ赤になって暴れるこいつが、可愛くて、愛しくて、
俺は、思いっきりぎゅっと抱きしめた。


「あー、好き。好きだよ、ニノ。」


「もう、なんなんだよ…」


「ずっと我慢してたんだから、言わせろよ」


「もう…ほんとばか。」


そう言って黙ってしまったニノから、その日結局愛の言葉は聞けなかったんだけど、
俺の胸から離れないで、背中に回った手がぎゅっと俺のシャツを握りしめて、ふるふる震えているその可愛い姿が、
答えだって、思ってもいい、かな?



この関係には、もちろん、まだまだ考えなきゃいけないこと、問題、試練…
きっといろいろあるんだろうけれど。


この日は、、そんな事は考えずに、ただ、愛しい人を抱きしめて、幸せに浸っていたんだ。





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