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「翔さん……」


俺を見て、ニノは目を丸くして固まった。
楽屋のドアを開けた格好のままで。



ニノの番組の、ニノひとりの楽屋に、俺は来ていた。


「ニノのマネージャーに聞いて、さ。居場所教えて貰って。ここで待たせてもらったんだよ」


手持ち無沙汰を埋めるために弄っていたスマホをテーブルに伏せて、俺は、ニノをじっと見る。


パタン、と楽屋のドアを閉めて、ニノは、しばらくドアの横に立ち尽くしていた。


「座りなよ。って、俺の楽屋じゃねえけど。」

ハハッ、と笑いながら言う。



ちょっとはなんかリアクションがあるかな、と思っていたのに、スタスタと歩いてきて俺の向かい側のソファーに座る。
脇に寄せてあったバッグから、スマホを取り出して、そのままゲームを始めた。
その間…。全くこちらを見ない。
不自然な程に。


「で?何しに来たんすか。暇なの?」


画面を見たまま言う。


「暇じゃねーけど、時間作ってきたんだよ。話したくて。」


「俺は、別に話すことなんか無いけどね。」



すげなく返される。

そりゃそうだよな…。



だけどさ。今日は、ちゃんと話すって決めてきたんだ。




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