とめどもなく流れてくる涙を拭うこともせずに、俯いたままでいる俺に、
智くんは、向かいの席から立ち上がって俺の脇に立ち、静かな声で話し出した。
「しょーくん。それで…、その答えで、ニノは笑顔になったんか?」
「……。」
「笑顔にしたかったんだろ?」
「それ、は…。今は、違っても…きっとこの先、」
「それに。
それ、ニノから聞いたんか?しょーくんじゃダメだとか、女の子と一緒になりたいとか、聞いたんか?」
智くんの顔を見上げる。
いつもの穏やかな智くんとは違う、怒りを目の奥に滲ませて、じっと俺を見つめている。
「全部しょーくんの頭の中で答えを出してるんだろ?
しょーくんはさ…。アタマがいいから、なんでも頭ん中で答えを出そうとしてる。
答えはさ、頭ん中にあるんじゃない、ココにあるんだよ」
俺の胸を、拳で軽く叩く。
まるで、ノックをするように。
俺の中に閉じこもっている想いを、誘い出すように。
「なにが幸せだとか、なにが正解だとか、そんなのはさ。そいつ自身が決めんだよ。
そいつとお前と、二人で見つけんだよ。
ひとりで結論なんて、出しちゃいけねぇんだよ」
いつもの調子と全く違う、強い口調。
声を荒げるわけでもない。静かな口調ではあるけれど、その言葉は俺の胸に、ストレートに突き刺さった。
「その涙も…本当は、そんなの嫌だって思ってるから、じゃねぇの?」
はっとして、片手で頬を拭う。
もし、ニノが女の子と結婚したら…?
ほかのやつと付き合いだしたら…?
俺は、メンバーという、この近い距離でそれを祝福できるのだろうか。
いや、それがアイツの望みなら…。
だけど…!
胸がきゅうっと痛くなって、涙を拭っていた手を、胸に下ろした。
洋服の、胸の中心を握りしめる。
「しょーくんは、どうしたい?」
目の奥にあった怒りのようなものは姿を消して、その目はどこまでもあたたかかった。
「智くん、俺、俺は、」
話そうとした俺の肩に、優しく手を乗せて、智くんは、
「それは、ニノに言ってやんな?」
そう言って、微笑んだ。
「そんで、思いっきり振られてくればいーよ!」
そう言って、ニヤリと笑う智くんに、どっちなんだよ!とツッコミながら、俺も、泣きながら、笑った。
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