こんばんは、蛍です。
bless this loveも佳境ですが、本日は12月24日、相葉さんのお誕生日!ということで、
昨年書いたアイバースデー記念の短編をご紹介します。
昨年末のモヤモヤを吹き飛ばすために書きましたので、葉担さんにはモヤモヤするキーワードが出てくるかもしれません。
ですが、あくまでもこのお話はANですので!どうぞよろしくおねがいします!
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(side A)
始発の電車を降りて改札をくぐって外に出ると、しんとした早朝の空気がオレを包んだ。
この季節、始発の時間と言ってもまだ暗い。
夜中と言ってもいいくらい。
コキコキと首を回すと、意外と凝ってるのに気づく。
そりゃそうだ。
ここ数日、毎日帰宅は深夜を回る。
深夜どころか、ゆうべは終電にも乗れなかった。
大学を出て、憧れていた雑誌の編集の仕事に就いた。
年末がこんなに忙しいなんて……想像はしていたし、先輩からも脅されてはいたけど、まさかここまでとは……。
どこの会社でもそうかもしれないけど、師走は目の回る忙しさだ。平日は深夜まで、土日も返上の勢いで働いてる。
交代で仮眠は取ってるけど……帰る時間もなくて、そのまま泊まり込み、なんてこともしばしば。
今日はどうしても、どーうしてもお風呂に入りたくて……。
大好きなお風呂にもゆっくりつかれてない。
だから、始発で帰ってきた。
お風呂に入って、ちょっと仮眠して……また会社に行かなくちゃ。
学生時代、バスケで鍛えた体力も根性も、もう底をつきそう……。
あー、温泉、温泉行きたい。
これを乗り切れば正月。正月休みは温泉行こう。温泉で思いっきりのんびりしたい。
なんて、そんなこと言いながら毎年寝正月になっちゃうんだけどね。
そんなことを考えながら、自宅へと歩く。
会社から2駅、駅から徒歩5分。
通勤のしやすさが気に入って借りたマンションはちょっとお家賃もお高めで、本当はオレの給料から見たら贅沢なんだけど、
それでも魅力的で、ちょっと頑張った。
なんと言ってもお風呂も広いし、窓もついてるしね。
窓から、角度がいい時間だと、月が見えるんだ。
月を見ながらのんびりとお風呂……。
その話を聞いて、即決した。
だから、働かなくちゃ……。
住みやすい家に住むために働いて、あんまり家に帰れない、なんて本末転倒な気もするけど、考えないようにしてる。
それでも考えちゃいながらふらふらとマンションの入り口に差し掛かったら、中から出てくる人とぶつかりそうになる。
「あっ、すみません!」
「いえ、こちらこそ…おはようございます」
ニコッと微笑んで会釈を返してくれる女性は、ワンちゃんのリードを手にしていた。
いつも早朝に帰宅するとすれ違うことも多い、たぶん同じマンションの住人さん。
このマンション、ペット可なのも気に入ったうちのひとつ。
動物は大好きで、子どもの頃から実家でいろんな動物を飼ってたから、
いつか、ペットと暮らせたらな、
って思ってるんだ。
あの人の連れてたような小型犬もいいな。
トイプードル、だったかな?
チワワとか、ミニチュアダックスとかもいいけど……
そこまで考えて、ふと、上を見上げる。
オレんちの窓に灯る明かり。
オレが留守でも、深夜の帰宅になっても、あそこに灯る明かりが、オレを励ましてくれる……。
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「ただいまー…」
そっと声をかけて家に入ると、部屋の暖かい空気にほっとする。
煌々と明かりがついたままのリビングに見慣れた姿を見て、ほっとため息をついた。
「またこんなとこで……」
ゆるい部屋着姿で、ソファーに転がっている。手にはスマホ。ゲームの途中で寝落ちたんだろう。
すうすうと寝息を立てる穏やかな顔。
起きている時も若く見えるけど、寝顔は少年の頃のままだな……って。
毎回思う。
「カズ、こんなとこで寝てたら風邪ひくよ?」
顔を覗き込みながら囁くように声をかけると、カズは身じろいでゆっくりと寝返りを打った。
ソファーの背もたれに顔を押し付けるようにして、眠る。
高い鼻先をソファーの背もたれと座面の境目に押し付けるようにしている。
苦しくないのかな。
このままだとカラダも痛いだろうし、腰にも悪い。
でも、あんまりにもすやすやと気持ちよさそうに眠っている姿を見ていると、このまま眠らせてあげたいような……。
複雑な気持ちになりながらも、そばに落ちていたブランケットを取ってかけてやって、
風呂に向かった。
ゆっくり、とはいかないまでも風呂に入って、なんとなく疲れも取れたような気がする。
戻ってみれば、カズはまだそのまま動かずに眠っていた。
苦笑しつつ、キッチンの冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターのボトルを取り出す。
「ん?」
冷蔵庫に、大きめの白い箱が見えて。
あ、これ、もしかして……。
「そっか、今日……」
慌ててソファーに駆け寄って、今度はちゃんと声をかけた。
「カズ、カズ」
「ん……?」
うっすらと目が開いて、カズの薄茶色の瞳が見えた。
「あ、まーくん……おかえり」
ふにゃ、と、寝惚け眼で笑う。
「ごめんね、カズ……遅くなって」
「遅いよ、遅いっていうか、もう朝じゃん」
「ごめん、許してよ」
「許さない」
言ってることはキツくても、その顔は笑っていて。
寝転がったまま、オレに向かって両手を伸ばした。
そのまま、その腕の中に体を入れて、抱きしめる。
オレの背中にカズの腕が回って、クリームパンみたいな可愛い手がきゅっとシャツを握った。
くふふ、って笑い声がシャツの胸に響く。
「カズ、ケーキ買っといてくれたんだ」
「うん、ちゃんとサンタは外してもらったからね?」
12月24日はクリスマスイブじゃなくて、まーくんの誕生日、って。
ずっとそう言ってくれてる。
狭いソファーの上で半分重なりながら抱きしめあって、
ふたりでくすくす笑いあう。
ぎゅっとくっついてたら、じわじわと疲れが癒されていくのを感じた。
ぐんぐん元気が湧いてくる。
カズって、オレの充電器みたい。
「ねえカズ、正月休み、温泉行こうよ。泊まりでさ、美味しいもの食べてさ…」
「えー、やだよー。俺、正月は忙しいんだもん」
「忙しいの?何すんの?」
「んー、ゲーム、とか?」
「ゲームかよ」
くすくす笑いながら、上目遣いでオレを見上げる顔を見ていると、
なんだか仔犬みたいで。
トイプードルとかじゃなくて、柴犬……豆柴かな?
かわい。
嬉しくなって、ぎゅっと腕の中のカズを抱きしめて、胸いっぱい匂いを吸い込んだ。
やっぱり、正月は温泉行こう。
やだって言っても連れてこう。
きっと最後は喜んでくれるはずだから。
ふたりで温泉入ってさ、うまいもの食べて、ゆっくりするんだ。
それがあったら、きっと頑張れる。
カズのぬくもりと、優しくトントンと背中を叩いてくれるリズムと、幸せな気持ちに包まれて、
オレはそのままゆったりと眠りについた。
「まーくん、お誕生日おめでとう」
って声と、柔らかなキスを貰いながら。
(おしまい)
相葉さん、お誕生日おめでとう!