《side N》





翔さんを乗せて閉まったエレベーターの前で、俺は1人、立ち尽くしていた。


結局、今日はほとんど翔さんと目が合わなかった。




『ニノは…』




さっき、何を言いかけたんだろう。

不機嫌そうに俯いて、眉間にシワを寄せた翔さんの顔が、頭から離れない。




「ニノ…」

振り向くと、相葉さん。

「大丈夫…?」

「何が?」

「だって、ニノ、泣きそうな顔してる」

は?俺が?
そんなはずない。
ちょっと、ショックだっただけで…。


そもそも、ショックっていうのも、なんだっつー話だよね。
そんなの…感じてないし。



「ニノ、今日はうち、おいで!」

相葉さんが顔を覗き込んだ。

「いいよ…別に」

「ちょうど実家から餃子とザーサイ送られてきたとこだから!一緒に食お!ね!」

「いいよ…行かないよ」

「うんうん!わかったわかった!行こ!」





有無を言わさず連行されて、相葉さんち。

ま、なんか…
翔さんと、メシ行くつもりだったからさ…
ひとりでこのまま帰るのも…なんだし。
うん、餃子焼いてくれるっていうしさ。
別に、断る理由とか無いからね。


焼きたての餃子を、はふはふ言いながらふたりで食べる。
ビールによく合うよね。くふ。美味い。


相葉さんは、今夜も饒舌で、べらべら喋っては、ひゃひゃっ、と笑って、
俺も、それに乗せられて一緒に笑って。

何となく、モヤモヤも飛んでった。