《side S》
クソッ!
スルスルと降りていくエレベーターの中で、俺は俯いてさっきの楽屋の風景を思い出していた。
松潤が開けたドアの向こうに、
髪も襟元も乱れたニノが、うっすら汗をかいて、相葉くんに組み敷かれていた。
…ように、見えたんだ。
荒い息を短く吐いて…
目元に涙を浮かべて…
頬が赤く色づいて、
シャツがめくれて、白い腹が見えて。
頭に、一瞬でカッと血がのぼるのを感じた。
何してんだよ……。
正直いって、ムカついた。
イライラしたまんま、収録に行ったから、
ニノのこともあんまり見ることが出来ず…。
いつものように、アイコンタクトで確認することが出来なくて、もしかしたら、ギクシャクした進行になっていた、かもしれない。
ニノに対しても、大人気ない態度をとってしまって…。
エレベーターが閉まる直前の、ニノの顔が目に浮かぶ。
ショック受けた顔、してたな…。
はぁーー。
深いため息をついて、イライラを逃がす。
そもそも、ニノはさ…。
危機管理がなってないんだよ。
距離感がおかしいんだよな。
誰にでもスッと懐に入っていくあの人当たりの良さは、長所でもあるけど…
誰もが夢中になっちまって、手放したくなくなる。
自分のものに、したくなるんだ。
あいつが、人たらしって言われる理由もよくわかる。
それでいて、深入りしようとしたら、スルッと逃げていって。
それでまた、追いかけたくなる。
この前の、共演した女の子も、
セクシーモデル出身だかなんだか知らないけどさ。
現場でも楽屋でも、ニノにぴったり張り付いて。
柔らかなカラダを押し付けて…。
見ていられなくて、適当な話を持ちかけて、楽屋から連れ出した。
…自分で、自分が情けない。
別に…ニノは、俺のものではないのに。
カッとなって、あんな顔させて…。
はぁ……。
ため息をついて、ふと顔を上げると、エレベーターはとっくに駐車場の階に着いていた。
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