コンコン、とノックの音がして、スタッフさんが撮影再開の連絡に来た。
どことなくピリッとした楽屋の空気に、ビビってんじゃん…。
「ニノ!」
みんなに着いて行こうとしたら、冷たい声で翔さんが呼んだ。
「お前、そんなカッコじゃ撮影できねーだろ。メイクさんとこ行ってこいよ。」
「あ……、うん……。」
なんか、怒ってる感じ…。
何でだよ。なんであんな不機嫌なの?
撮影前に髪型乱れるようなことしてふざけてたから?
それは…まあ、確かに、メイクさんには悪いことしたかもだけど…。
べつに、翔さんが機嫌悪くなる、意味がわかんない。
メイクさんに髪型を直してもらいながら、なんだかモヤモヤしてた。
そのあと、撮影の時も、なんだかいつもと違って一切翔さんと目が合わなくて…。
さらに、モヤモヤした。
一緒の撮影のあとは、最近はいつも翔さんとメシ行ってたのに、
翔さんは、着替えたとたん、「お疲れ」って楽屋を出て行っちゃった。
何だよそれ。
別に、約束してたわけじゃないけど!!
俺、今日もメシ行けると思って…。
なんだよ…。
「ニノ…ごめんね、オレがふざけたから…。」
心配そうに、相葉さんが俺を見ている。
クソッ!
俺は、翔さんのあとを追いかけた。
「翔さん!」
エレベーターに乗りかけた翔さんを呼び止める。
チラ、とこっちを見て立ち止まった。
「何?」
俺が近づくと翔さんは、怒っている、というか、不機嫌そうに目を逸らした。
「や…今日は、メシ、行かないのかなって思って…。」
「ああ…。」
沈黙。
「ニノは…。」
言いかけて、言いよどんで、唇に指を当てて。
考え込んだ時の翔さんの癖。
「…なに?」
聞いた俺の声は、俺が思ったより小さくて…少し、震えていた。
「……なんでもない。
今日は、帰るわ。」
「あ、うん……。」
俺をその場に残したまま、翔さんの乗ったエレベーターのドアが、閉まった。