めっちゃ心配してたけど、あの子は来なかった。
ていうか、向こうの方で、他のイケメン俳優さんにしなだれかかってるのが見えた。
なんだ、誰でもいいんじゃん。
ふふ、笑える。
そんなこんなで、何ともなく駐車場まで降りてきた。
「あの、さ、もう大丈夫よ?」
と、俺が言ったのと、
「ニノ、どこ行く?」
と翔さんが言ったのと、また同時になって。
あ…ってちょっと気まずくなる。
「なに、ニノ、なんか用事あった…?」
「や、何にもないけど…。翔さんこそ、いつも予定いっぱいなのに…。」
「ああ、うん…まあ、ないこともないけど。収録のびたら無しって感じの飲みだし、向こうは向こうで勝手にやってるだろうから、うん、電話1本入れとけば、大丈夫。」
「え、やっぱ予定あんじゃん、いいよいいよ、無理しないでよ!」
「無理じゃないよ。」
間髪入れずに翔さんが言う。
その勢いに、思わず息を呑む。
勢いづいてしまった自分を恥ずかしがるように、翔さんは、こめかみを指で掻きながら目を逸らした。
「あー、まあ、たまにはいいじゃん。
この前飲んだ時寝ちゃったしさ、リベンジさせてよ。」
「なんのリベンジよ…」
「だから、とことん話、聞くっていう、リベンジ。」
そう言えば、そんなこと言ってたっけ。
あの日は…翔さんがしたたかに酔っていて、話聞いてもらうどころじゃなくなったんだよな。
ていうか、あの時、俺、聞いちゃったんだ。
翔さん、俺の、こと……。
「どうした?顔、赤いけど…。もしかして、体調悪い?」
「いやいやいや!!なんでもない!!元気!!」
俺の慌てた様子に、不思議そうに首をかしげている翔さんに、
「さ、行くならさっさと行こ!」
と声をかけて、車に乗りこんだ。