案の定、撮影が終わって、戻ろうとしている時に、あの子に声をかけられる。
スタジオの隅の、人目を避けるような場所で、上目遣いで手を握ってきた。
手の中に、なにか紙切れを握らされる。
「このあと、お時間ありますぅ?よかったらご飯でも…」
とクネクネするカノジョに、
「ごめんね、このあと予定があるからさ。
それに、ほら、あっちでマネージャーさんが睨んでるよ?
これからって人がさ、スキャンダルとかまずいんじゃないの?ね?」
最上級のスマイルで返してやる。
まだ、不満そうな顔で口とんがらせてるのを、
そのまま置いて、
俺は、さっさとスタジオを出た。
渡された、連絡先が書いてあるんだろうそのメモは、廊下のゴミ箱に、中も見ずに小さく破って捨てた。
嵐の楽屋に戻って、ほっとする。
「ニノ、おつかれー!大丈夫だった?」
着替えていたら、相葉さんが駆け寄ってくる。
「ニノ、ああいう子無理だもんね。ちょっとしつこかったよねー。
さっきトイレ行ったら、まだウロウロしてたよ?暇なのかな?あの子。」
「げぇ、マジー?」
「このままだと、また捕まるよー?」
「めんどくさいな…。」
「うーん、オレが一緒に帰ってあげてもいいんだけどさー。
そしたら断りやすいじゃん?
でもオレ、このあと地方前乗りなんだよねー。
早朝から漁港でロケなの!」
「それはそれは…お疲れ様です。」
「いえいえ、どういたしまして。」
ぺこりぺこりと、お辞儀。
「だからさぁー。」
指を拳銃のようなカタチにして、部屋をぐるっと見回した相葉さんは、
1人の男にその照準を合わせた。
「翔ちゃん!」
「ん?なに?」
「翔ちゃんがニノ送ってあげてよ!」
「「はあ?!」」
俺と翔さんの声が揃った。
「ふたりで予定があるからって言ったらいいんじゃないかと思って!」
「や、そんなの関係ないんじゃないの?」
「いーのいーの!
たまにはふたりで飲みにでも行ってきたら?」
「え、え、相葉さん?」
なんだかわけがわからないうちに楽屋を追い出されて。
「あー、じゃ、行くか?」
って言う翔さんに、黙ってついて行った。
·