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セットチェンジの間、俺たち演者は1度控え室に戻る。
狭い控え室のなか、いつもの場所に座ってテレビを見たり、喋ったり。
チームが一緒のゲストさんも一緒。
今日のゲストさんは、最近若い子に人気のモデル兼女優のコ。
スレンダーなのに巨乳なのがウリらしく、チームカラーにまとめた衣装も、胸を強調したセクシーなものだ。
細いウエストを見せつけるようなへそ出しのカノジョは、さっきから、俺の隣を動かない。
「二宮さぁん、聞いてますぅ?」
舌足らずの甘えたアニメ声で、上目遣いに俺を見た。
「マミねぇ、ずぅっとこの番組、でたかったんですぅ。
あとぉ、お芝居のこととかぁ、二宮さんに教えて欲しくてぇ。
あっ、マミねぇ、ゲームも結構やるんですよぉ。」
話しながらさりげなくボディータッチ。
きゅっと寄せた胸の谷間を、見せつけるように擦り寄ってきた。
「今、なんのゲームやってるんですかぁ?みせてくださぁい。」
俺がしてるゲームを覗き込むようにぐっと近づいて、そのご自慢の胸がむにゅっと俺に押し付けられた。
「ニノ!そうだ、スタッフさんが呼んでたんだ!」
翔さんが声を上げた。
「さっき言われてたのに、言うの忘れてたわ、ごめん。行こ。」
立ち上がって俺の腕をつかむ。
「ごめんね、マミちゃん。」
キラキラしたアイドルスマイルでそう言って、翔さんは、ぽかんとしたマミちゃんを置いて楽屋から俺を連れ出した。
翔さんは、俺の腕を掴んだまま、廊下を歩いて行く。
誰もいない喫煙所に入って、ようやく手を離してくれた。
喫煙所で向かい合って、気まずそうにこちらを見る。
「あー……。ごめん、ニノ。スタッフさんが呼んでたって、あれ、嘘。
なんか……うん、ニノが、困ってんじゃないかって思って、さ…。
つい。ごめん。」
「いやいや翔さん、なんで謝んの。
助かったよ、あんなにくっついてこられたら、ゲームの邪魔だしね。」
そう言えば、翔さんは、ほっとした顔で笑った。
「あー、でも、ホントはもっと、あの子と話したかったんじゃねえの?
あの子、完全にお前狙ってる感じだったし…。」
「ああいうガツガツした感じ、俺、苦手ー。」
「そっか……。」
喫煙所には、他に人影はない。
遠くにスタッフさんたちのガヤガヤした声が聞こえる。
なんか、ふたりきりって久しぶりだな。
ふたりっきり…。
ちょっとした緊張感と、穏やかな安心感が入り交じった、不思議な感覚。
今更控え室に戻る気分にもなれず、俺たちはそのまま静かな喫煙所でタバコも吸わず、他愛もない会話を続けていた。
俺のちょっとした話にも、翔さんは大きな声で笑ってくれる。
結構笑い上戸だよね、このひと。
若い頃は尖っていて、何となくこの世界をナナメに見ていた翔さん。
入った頃はおっかない先輩だったな…。
それが今では、こうやって同じグループで笑いあってる。
人生、どうなるかわかりませんな。
そろそろ時間かと、笑いながら控え室に戻ると、例の子はいなくなってた。
「二宮さぁん、遅いですねぇ。わたしぃ、探してきますぅー。ってお っぱ い揺らしながらどっか言っちゃったぞ」
クネクネしながら似てないモノマネしながら大野さんが言うのにみんなで笑っていると、
さっき大野さんがやってた動きとそっくりそのまま、クネクネしながらその子が帰ってきて、
またみんなで大爆笑。
「もうっ、なんなんですかぁ!」
ってプンプンしてるカノジョをテキトーにあしらいながら、残りの収録を済ませた。
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