《side N》





その後。

相葉さんと、潤くんからは、それぞれ別々にメールが来てた。


潤くんからは、迷惑をかけたお詫びと、これからもよろしく、っていうような内容で。

相葉さんからは、たったひとこと、
「ありがとう」
って。



やっとか…。

やっと落ち着いてくれた…。

あとは、俺の気持ちも落ち着くのを待つだけ、か。
ふふ。
メールの画面を見ながら、自然と笑みが出る。

思ったよりも凪いだ自分の気持ちに驚きながら、ほんの少しの寂しさとともに、俺はスマホの画面を閉じた。






_____



5人揃っての撮影、今日はファッション誌のグラビアだ。
全員でのショットのほかに、今日はいろんな組み合わせのツーショット撮影もある。
俺たちの、こういうコンビの撮影、ファンの子たちにも人気があるらしいよ。
だから、普段よりも、仲良く、密着したような写真を望まれる。

肩組んだり、顔くっつけあったり、抱きついたり、さ。




あの日以来、相葉さんとは初めて会う。




おはよー、と控え室に入る。


「っ、おはよ、ニノ」


ふふ。相葉さん。普通通りを意識しすぎて、顔がひきつっちゃってるよ。

ぽん、と肩を叩いてやって、俺はソファーに座ってゲームの電源を入れた。













スタジオにカメラのシャッター音が響く。
長いことやってるからさ、ポーズをとるときの5人の呼吸もすっかりわかってる。立ち位置を入れ替えながら何ポーズか撮って、次はコンビ撮影。




まず、潤くんと相葉さんが呼ばれてった。


ふたりが並んで撮影するのを、端から見る。


スタイリッシュだなー。
ふたりが並ぶと、ホントモデルみたい。


お似合いだよね。素直に思う。



カメラマンの要求で、密着度合いが上がってきてさ…うん、まあ…。ちょっと、ちょっとだけ、まだ辛い…。
それでも、ふたりの…滲み出ちゃってるあの幸せそうな顔を見たらさ。
よかったな、って、思うんだ。
ココロからね。





「次、二宮さんと相葉さん、お願いしまーす」


ふたりでカメラの前に立つ。


だからさ、相葉さん、緊張が出ちゃってんのよ。
笑顔がぎこちないよ。


俺は、さり気なく少し下がって、相葉さんのケツを思いっきり蹴りあげてやった。


「いってーーーー!!!何すんだよ!!」

「ボケーッとしてるからさ、目、覚まさせてやってんの!」


スタッフから笑いが漏れる。
思いがけない攻撃だったんだろう、軽く吹っ飛んだ相葉さんは、屈んだ姿勢でこっちを向いて涙目。


「さ、仕事仕事!キメちゃいますよー!」


そう言って相葉さんの肩に腕を掛ける。
相葉さんがホッとしたのがわかった。



くっついて、ポーズをとりながら、俺たちは、いつも通り笑い合った。

そう、俺たちは、いつも通り。
笑い合える。
笑いあおうよ。









「よかったなぁ、にの」

コンビ撮影中、目線はカメラのまま、大野さんが俺に囁いた。

「何がよ」

「ふふ。なんか、吹っ切れた顔してる。」


ぱっと思わず大野さんの顔を見る。


「アンタ、どこまで知ってんの」

「なんも?おれはなんも知らねぇよ。だけど、にの、こないだよりずっといい顔してる。」

「………。」

「なんだかわかんねぇけど、よかったな、って。」


ほれ、ほれ、カメラ、とか言って大野さんは撮影を続けながら、くすくす笑った。


「また、飴、いるか?」

「いらねえよ」



ホントこの人は…。


侮れない男だよ。