「で?どーすんの?相葉さんは。」
「うう、なに?」
ぐじゅぐじゅに泣いてた相葉さんが、ちょっと落ち着いたタイミングで聞いた。
「俺のスマホ、ぶるぶる言いっぱなしなんですけど?」
スマホの画面を見せると、潤くんからの着信、着信、メッセージアプリのメッセージ、の山。
『ニノ、まー来てない?』
『まーに謝りたいんだ』
『そこに居る?』
『リーダーんとこじゃなかった』
『翔さんとこでもない』
『カザマもヨコも知らないって言ってる、最近誰と遊んでる?』
『まーが来たら連絡してって言って』
『今日話さないとダメだと思うから』
「アナタ、携帯は?」
「うちに置いてきちゃった…。」
ポッケに財布だけの軽装で、タクシー乗ってうちに来ちゃったみたい。
ま、俺んちは相葉さんちに近いから。
俺、引越しても引越しても、なーぜーか、相葉さんちの近くになっちゃうからね!
……あ、引いた?俺も、ちょっと引く。
それにしてもこの潤くんの着信の嵐。
かなり必死だよ。
俺は、スマホの画面を相葉さんに見せた。
相葉さんは…。
なんだか、痛みをこらえるような顔をして、それを見ていた。
「どうすんの…?潤くんに、ここに居るよって言ってもいい?」
さっきの事もあるからね。ちょっと慎重になる。
また俺のせいでこじれたら…ってさ。
だけどさ…。
やっぱり、この人には、しあわせになってほしいから。
「俺が言うのも余計なことかもしれないけどさ…。
やっぱり、こういうのって先延ばししない方がいいと思う。
間が開くと、どんどんこじれていっちゃうよ?
日にちが薬になるとはいうけどさ、これってそういう事じゃないじゃん。
やっぱり、ちゃんと話した方がいいと思う。俺はね。」
「それは……。そう、だけど……。」
「どんなケンカになったのかわかんないけどさ、潤くん、反省してるみたいよ?
俺にも、アナタ、別れ話したこと、後悔してるみたいに見えるけど。」
「オレ……オレは……」
俯いたまつ毛が、ふるふると震えている。
..
迷ってる……。
何があったのか、わからないけど。
このままだと、本当に潤くんとの仲は、もっともっとこじれていきそうだ。
少なくとも、
それがこの人の本心ではなかったとしても。
別れ話を出したのは事実のようで。
ていうか…。
もしかしたら、このまま潤くんに会わせないでいたら…
もしかしたら…。
もしかしたら、このまま…
兄弟みたいなんかじゃなくて…違う関係になって…。
このまま、ここにコイツを閉じ込めて…。
このまま、俺のものにできれば…。
こんなに泣かせてるヤツのところになんか、帰してやることはないんじゃないかな…。
そんな囁きが、頭の中に響いて。
目の前の相葉さんに、手を伸ばした……。
その時、インターホンが鳴った。
もやもやとした気持ちに、取り憑かれたようになっていた俺は、はっと我に帰った。
慌てて頭を振って、
あげかけた手を、気づかれないようにそっと下ろした。
ハハッ、
馬鹿だな、俺。
さっき、これは恋じゃないんだって、
兄弟みたいなもんだって、そう思ったばかりなのに。
馬鹿だよ…。
そう簡単には、割り切れないみたいで、
ふとするとそんな考えが浮かんで…。
やっぱり、気持ちが整理されるには、まだまだ時間が必要なのかもしれない…。
インターホンのモニターには、潤くんが映っていた。
『ニノ…遅くにごめん、まーが、来てないかと、思って』
息を切らして、まさに駆けつけたという感じ。
文字通り駆け回って相葉さんを探していたんだろう。
モニター越しの声を聞いて、相葉さんはぱっと顔を上げた。
その顔を見て、俺は、
「潤くん、上がってきて」
エントランスのロックを外した。