《side M》





あの日。


メールをした時から、様子が変だった。






『仕事終わった。これから行くわ』

『わかった!美味しいの作ってまってるね!』

って…
いつもなら、絵文字だけじゃなくて、まぁのキラキラの笑顔も浮かんでくるような返事が届くのに。

あの日は…。
既読になって、返事はこなかった。




まーの家に着いて、出迎えてくれたその目は、真っ赤だった。
テーブルの上に、空き缶がふたつ。
まーがよく作るつまみが食べかけでひと皿。
箸が2膳。




「誰か来てたの?」

「…うん」

「え、誰?」

「……うん」

会話が続かない。




「…泣いた?」

そっと近づいて、目の下を撫でようとしたら、まーが、わかりやすくビクッとなった。



「まー?」

「潤くん!…ごめん、やっぱり今日は、帰ってくれる?」

「…何でだよ。」

「…ごめん」

「まー…」


まーの腕をとろうと手を伸ばすのを、サッと避けられた。
真っ赤な目は、俺の目と合わない。
俯いたまま…。



「何だよ、どういうことだよ、」

大声で詰問したいのを堪えて静かに言う。

今度は避けられないうちにまーの肩を両手で掴んで、無理矢理にでも視線を合わせたくて、顔を覗き込んだ。



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