《side M》
「なんか、変。」
ビールで乾杯したあと、地方ロケで貰ったっていうオススメの日本酒を冷やで飲みながら、相葉くん……まーは、幾分据わった目でそう言った。
「何が。」
「ニノだよ!アイツ…最近、きょどーふしんじゃない?」
「ああ…」
これもまーがロケで貰って来たっていう野菜を、簡単なサラダにして、キッチンから運ぶ。
リビングのローテーブルにそれを置いて、ソファーのまーの隣に座った。
「潤くんもそう思う?!」
「俺はよく、わかんないけど…最近また痩せたよな。」
「そうなんだよ。ニノ、なんにも言ってくれないけど…。
翔ちゃんも、入院したんでしょ?」
「翔さんは、寝てれば治る程度なんだろ?」
「メールには、そう書いてあったよね。大丈夫なのかなあ…。」
日本酒の入っているガラスのぐい呑みの、フチを唇で挟んだまま、ブツブツと呟いている。
「ニノってさ、オレが悩んでたらすぐ気づいて話聞いてくれるんだけどさ。自分のこととなるとキレイに隠しちゃって、見せてくんないの。
心配させたくないのかもしんないけどさ!もうオレ達何年一緒にいると思ってるんだろ。わかっちゃうんだよ!悩んでることくらい。なのにさ…。」
もう酒が回ってるのか、ほんのり赤くなった頬に、うるんだ瞳のまー。
俺は、その綺麗な顔を見ながら、グラスを傾けて。
「なんだか妬けるな…」
「へぇぇ?」
意外そうに間抜けな声を出したまーに、ふふ、って笑った後、俺は、グラスを持つ自分の手を見つめながら俯いた。
「お前とニノの関係ってさ、特別で…。お互いのこと、よくわかってるって感じで、なんか、さ。羨ましいっていうか…。」
「ふふ。潤くん、かーわいい。」
まーが、俺を抱き寄せた。
「確かに、ニノは『特別』だよ?特別な、友だち。
でもさ、『特別』な『恋人』は、潤くんでしょ?」
「まー…。」
「どうしたの?今日は、甘えんぼさんモード?」
片手で俺の背中に手を回し、片手で頭をポンポンする。
普段は、天然で、可愛いところも多いまぁだけど、こういう時、やっぱり年上なんだな…って思うんだ。
『潤くんは、いつも外で頑張ってるでしょ?嵐の顔として、コンサートを作るのも、ドラマや映画やるのも、いつもいつも頑張ってる。
だから、オレの前では甘えてね?
そうだ、ニャンニャン、って言って甘えてもいいんだよ?』
くふふっ、て笑ってまーは、少しおどけて言う。
俺が告白して、まーがそれを受けてくれた日。
前にゲストで出た番組で、メンバーの中で誰と付き合いたいか、って聞かれた時に、まーは、俺を選んでくれて、
その時の理由として、『おうちで、ニャンニャン、って甘えてくれそう』なんて言ってた。
俺はさ、もうその番組の頃には…とっくにお前のこと、意識してた。
だから、その番組でも、お前を選んだんだよ?
黙ってまーに抱きしめられたままの俺。
まーの匂い。温もり。なんか安心するな…。
「潤くんの匂い、安心するなぁ…。あったかーい」
思ってたことと同じことがまーの口から出て、なんだか凄く嬉しくなって。
俺は、まーをぎゅっと抱きしめた。
「今日、泊まってくだろ……?」
「…うん…。泊めて?」
ニノのこと。俺も、ちょっと気を付けて見てみよう。
大事な仲間だからな…。
だけど…。
「ニノの事は、また明日な…。」
今は、俺の事だけ考えて?
なんて、思っちゃうなんて…やっぱり、『甘えんぼさんモード』、なのかな?
目を伏せたまーの顔に近づきながら、
そんなことを考えて、ふふふ、って、笑った。