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遠い記憶。


レッスン場の端っこに、うずくまって座る少年。
線の細い、サラサラの髪の、綺麗な少年が見える。
あ、同じバッシュ…。
みんなナイキなのに、俺と同じリーボック。
俺より、年下かな…?



「ねえ、家、どこ?」



話しかけてみる。
え?同じ沿線じゃん。
じゃあさ、一緒に帰ろうよ!

名前は?おれ、二宮和也。
ニノ、ってよばれてる。

きみは?相葉雅紀?まーくんか。

俺?中1。
え?中2なの?年上じゃん。みえねー!




待ち合わせしてレッスンに通うようになって。
同じ総武線の電車の中、いろんな話をしたな。



レッスンの時だけじゃなくて、休みの日も。
バッティングセンターに行ったり。
ゲームをしたり。
ただ、何にもしないでダラダラしているのだって、楽しかった。



仕事でも、一緒のことが増えてきて。
シンメで踊るようになって。
俺もお前も、お互いを「相方」なんて呼んで。
俺の隣にはお前が。
お前の隣には俺が。



別の仕事で離れた時は、正直、寂しかったな。
俺達はまるで、兄弟のように、2匹の子犬のように、ぴったりはまった、パズルのように。
一緒にいるのが当たり前だった。


ずっとずーっと、一緒だって…。






「あっ、メール!ふふ、松潤だぁ」


なんだか、相葉さんの口から潤くんの名前がよく出てくるようになる。

一緒にサーフィン行ったり。

あの人んちでふたりで飲んでる時にもわざわざ呼んだり。
まあ潤くんは結局、仕事で来れなかったんだけどね。


特別、仲良くはしてないんだけどさ。
なんていうの?見えないところで信頼しあってるっていうかさ。

なんだよ、それ…。
なんだか面白くない。




そしたら、さ。




「ねえ、ニノ、オレ…
松潤に、告白された…。」


え?


「どうしよう、ニノ、オレ…」


だって、相葉さん、アンタの隣は…俺の、でしょ?



「松潤、オレのこと、本当に好きでいてくれてる。
大切に…思ってくれてる。
ねえ…オレ、どうしたらいいのかな…?」



俺は…あの時…

なんて答えたら良かったんだろう。

何が、正解だったんだろう。




「…へえ、良かったじゃん。
潤くんなら、きっとあなたのこと大事にしてくれるよ。」



ねえ、まーくん。俺は…。



「お幸せに。」



戸惑いながらも頬をあからめる君に。

俺は、いったい…他になんて言えば良かったの?