ヒアルロン酸注入の合併症で最も重篤なものが、失明・皮膚壊死などの事故です。機能障害としては深刻な失明も、残念ながら日本でも起こっているのが実情です。
これらの合併症を避けるために、十分な解剖の知識と適切な手技の習得が必要となります。しかし、どれだけ事前に入念な準備を行っていても、合併症を100%避けられるとは断言できません。これは経験豊富な医師であっても同様です。
そこで重要になるのが、万が一これらの事故が起こってしまった時の対応策を準備しているか、になります。
失明・皮膚壊死をきたす機序ですが、ヒアルロン酸が動脈または静脈に詰まって起こります。この詰まったヒアルロン酸を溶解するのが『ヒアルロニダーゼ』という薬剤です。 当院でも、ヒト由来のヒアルロニダーゼを、事故対応マニュアルで推奨されている12バイアル常備しています。
それがコチラ
左の3箱がヒト由来のヒアルロニダーゼです。右の1箱はヒツジ由来です。お値段が何倍も違うので、はじめはヒツジ由来のものを取り寄せたのですが、自分でアレルギーテストをしてみたところ、非常に確率は低いと言われているアレルギーの反応が出てしまったので、怖くなってヒト由来を入手しました。ヒト由来なら、絶対にアレルギーが出ない、というわけではありませんが、動物由来よりアレルギーの確率はさらに低いそうです。緊急時にはアレルギーのテストなんてしている余裕はありませんので、必要なコスト・必要な保険だと思っています。
そして、合併症の中でも『失明』が起こってしまった時に重要なのが、眼科医との連携です。当院では、眼科の先生とも十分に連携し、早急な対応が出来る体制を整えています。先日、さらにその連携を深めるべく、眼科の先生の『球後麻酔』の手技を見学させて頂きました。球後麻酔とは、眼科の先生が硝子体手術などの場合に行う眼球の麻酔です。血管(この場合眼動脈)にヒアルロン酸が詰まって失明の症状が出てしまった場合、球後麻酔と同様の手技を用いてヒアルロニダーゼを注射し、ヒアルロン酸の溶解を試みるわけです。
実際の手技を見せて頂き、骨のモデルを用いて手技のシュミレーションも行って頂きました。また、手技の動画も撮影させて頂きました。
失明が起こってしまった場合、早急に眼科医が球後にヒアルロニダーゼを注入できる環境があれば理想なのですが、間に合わない場合は、形成外科医が球後にヒアルロニダーゼを注入出来ることが望ましいのです。そのような状況に陥らないように、ヒアルロン酸注入の施術の時間帯や曜日を調整させて頂いていますが、万が一に備え、私もその手技をマスターしておきたいと思っています。
