aikoの「秘密」を聴いている。このアルバムはほとんどの曲のドラムを佐野康夫が叩いている。今回改めて聴いて、彼のドラムは本当にすごいと思った。音色の変化、リズム、タイムの変化が多彩。ぼくは20歳ごろに、aikoの「星のない世界」「横顔」といった曲を練習した。耳コピで可能なかぎり、細密な譜面を起こして、練習した。佐野康夫の演奏は、15曲ほど採譜したと思う。だからそれなりに彼のフレーズの特徴はつかめた。
24歳のときに統合失調症を発症して、楽器を断念してから、ドラムをまともに練習していない。ドラムが楽しくなくなってしまった時期が長かった。音楽、楽器というのは、その人の呼吸だとか間の取り方が演奏に出てしまう。自分は統合失調症になって、自発性がほとんど失われてしまって、演奏ができなくなってしまった。演奏、特に即興演奏は自発性がないと話にならない。紋切型の定型文を、やる気のなさそうに貼りつけただけのような、支離滅裂のコラージュのような演奏にしかならない。
いま、佐野康夫のドラム演奏を聴いていて、自分もこんな演奏ができたらどんな感じがするだろう、と思う。統合失調症になる前は、自分はどんな人間になりたいのかと自問して、やはりドラムを演奏できるようになりたいと思った。それも、ジャズドラムと、ポップスのドラムの混合型のスタイルのドラムが叩けるようになりたいと思っていた。具体的に好きなドラマーは、やはり佐野康夫だとか林立夫だった。
統合失調症になってから、まず体力が致命的に損なわれた。少し動いただけで疲れる。何もしていないのに疲れる。すぐに息が上がってぜえぜえとする。何もかもが面倒で、自発的に何かをしようと思えない。これらは今も続いている。つまり24歳のときに統合失調症を発症し、いまに至るまで16年もずっと変わっていない。24歳のときと比べて改善した部分もあるにはある。それは妄想をある程度自覚できるようになったこと。それで病識が得られたことで、薬も減った。
今、ドラムの練習を再開するとして、いくつか問題となることがある。それは、体力のこと。次いで、上達したいという意欲のこと。自発性のこと。金銭面の問題。ここまでは一人で練習する場合の話で、バンドを組むとなると、さらに他のメンバーとのコミュニケーションの問題も上がってくる。健常者の人とバンドを組むのは相当にハードルが高い。障害者の人だと、やはり上手い人を見つけることが非常に困難になる。
ドラムは、下手な段階でもバンドを組むことが大切だと思う。
あと問題となるのは、楽器をやることは簡単なことではない。他のことを一切犠牲にして、楽器の練習に専心しないと上達はしない。自分は本も読みたい。音楽も聴きたい。読みたい本がたくさんあるし、聴きたい音楽がたくさんある。そういった迷いがある。体力がなくて、健常者の2割程度の体力しかないので、少し動いただけでぐったりして動けなくなってしまう。
また、いま自分が住んでいるのは集合住宅であるため、家でドラムの練習をすることはできない。そういったことから、結局、自分はドラムは諦めて、読書、音楽を聴くことを趣味とするのにとどめるのが、一番幸せに生きられる道なのではないかと思う。何かを諦めることも必要だ。諦めるからには、自分に残された道に力を尽して向かっていきたいと思う。つまり、読書をがんばりたい。あと勉強。ギターなら家でも練習できるから、ギターをやる手もあるけども、あまりギターに関しては向上心を持てない。