『アメリカン・スナイパー』(70点) | 阿部将一のブログ

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2015年公開作品。
監督 クリント・イーストウッド
主演 ブラッドリー・クーパー

星あらすじ星
アメリカ軍のエリート『ネイビーシールズ』に所属し、『アメリカ史上最高のスナイパー』と呼ばれた男のイラク戦争での話。

お月様かんそ~お月様
『素晴らしい映画を撮る監督』クリント・イーストウッドの作品であれば見ないわけにはいかない。しかも、主演は人気俳優のブラッドリー・クーパーだ。
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僕は基本的に戦争映画はあまり好きではない。なぜなら、戦争映画は必ず『戦争は全体にダメ!』『戦争は人間をむしばむ!』とか、『戦争という悪しきものの中にも美しい物語がある!』という、単純でチープな結論が描かれることが多いからだ。戦争はもっと複雑な要因で起きている。『プライベート・ライアン』みたいに戦争という醜い世界の中で無理やり感動的な話を作ったり、『ゼロダークサーティ』みたいな『正義のための正しい戦争』を描いた作品は、観てて気分が悪くなってくる。そもそもイラク戦争に関しては大量破壊兵器もなかったし、証拠隠滅みたいにビン・ラディンを裁判にかけずに殺して海に捨ててしまった。基本的に、僕は平和を守る兵隊は尊敬するが、プロパガンダに使われるこういう映画は好きではない。
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とはいえ、戦争映画でも非常に感動したものもある。トム・クルーズ主演の『7月4日に生まれて』は戦争映画・人間ドラマとしても、トムの出演作としても最高傑作だと思うし、『地獄の黙示録』の前半は戦争を好む人物たちの狂気の沙汰を絶妙に描いている。
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さて、では『アメリカン・スナイパー』はどうか?
まずその前に、この映画のキャッチコピーは

米軍史上最多、160人を射殺した、ひとりの優しい父親』

というもの。
『殺す』と『優しい』という正反対な言葉を使うことで印象を強くしようとした安っぽいクソくだらないキャッチコピーだなということを最初に言いたい。せっかく良い作品なのにキャッチコピーで印象が悪くなってしまう。
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んで、この作品、戦場であるイラクではピリピリとした緊張感が伝わってきて臨場感がある。その反対に主人公の家族が残されたアメリカの場面では、主人公が一人の人間として家族との問題、家族への愛が描かれている。現地で戦い生存した、亡くなったに限らず、1人の兵隊に人生があり、家族がある。兵隊にはそれぞれのバックグラウンドがあるということを感じさせる作品である。しかも実在した主人公はアメリカ軍隊のエリートで『伝説のスナイパー』と呼ばれるほどの人物だ。そういう輝かしい功績がある人物にも私生活で問題があるんだなと考えさせられてしまう。戦場で死ぬのは1人の人間なのだ。
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んで、この作品では『戦争は絶対にダメ!』と強烈なメッセージがあるわけではない。主人公は英雄で愛国心も強い。戦争賛成・反対どっちなの?とさえ思わさせられる。実はここが巧みで、この作品は観客に賛成・反対のどちらも強要していない。戦場や兵士の私生活で何が起きているのかをありのまま描き、ニュートラルな視点で観客に問いているのだ(結局は反戦なのだが)。
この中立的な視点が僕には好印象で、それはやはり映画界の巨匠クリント・イーストウッドだからこそできたことだと思う。なにせ彼は世界大戦で日本の硫黄島で行われた戦いを『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』という日米両サイドの視点から描いているからね。クリントはそういう中立的な視点、客観的な視点を持てる人物なんだと思う。
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そして、何と言っても主演のブラッドリー・クーパーだろう。酔った人役とか、ダンスをする変人役とか、詐欺のようなことをやる人役とか、やたらとコメディ風な役柄が多いブラッドリーだが、この作品ではシリアスな役を完璧に演じている。しかも、映画を見ていてなんだか印象違うな、兵隊役だからカラダ作りしたのかなと思ってたら、なんと84kg→102kgに体重を増やしてたらしい。そのたくましさは兵隊っぽいし、役作りとしてはナイスだね。今後はこういったシリアスな役柄が増えるかもしれない。もともと演技力はあると思うので、ぜひその姿を見たいね。
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さて最後に、この映画のラストは衝撃的だった。実際に起きたことらしいのだが、恥ずかしながら知らなかった。戦争は無くなって欲しいが、この世界から無くなることはない。そして、戦争による、なんとも言えない悲しい出来事も無くなることはないだろう。それをこの映画のラストでしみじみと感じた。



星おまけ星
ちなみに、現在の日本でニュースになっている、安保法案に反対する学生団体は『SEALDs』(シールズ)というらしいのですが、僕だったら反武力を唱える団体の名前を米軍エリート特殊部隊Navy SEALs(シールズ)とは被らないようにしますね。世界有数の特殊部隊シールズを知らないで反武力を唱えるなんて馬鹿にされてしまいますからね。



おしまいグラサン