思考の整理日記 - アメブロ時代 -15ページ目

facebookの理念とこれからを考える

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)「フェイスブック 若き天才の野望」という本を読みました。早くも2011年の読んだ本ベスト5に入りそうなくらいおもしろく、示唆に富む内容でした。

著者のデビッド・カークパトリックによるマーク・ザッカーバーグ(フェイスブックCEO)本人へのインタビュー取材、その他数多くの関係者への取材内容から書かれたものです。特筆すべきは、その取材量の膨大さで、巻末の著者による謝辞にはインタビューをした関係者の名前一覧が載っており、ざっと数えただけでも100人を超える人数です。

■映画「ソーシャル・ネットワーク」との違い

この本のおもしろさには、2つの切り口があると思いました。1つはフェイスブックの歴史と言っていいほど、ハーバード大学での立上げから規模拡大、5億人のユーザー規模に至るまでの経緯が、その間の人間関係などと併せてとてもリアルに描かれていることです(注.2011年2月現在は6億人を超えている)。これは膨大な取材量だからこそ再現できたのだと思います。

この点は1月に日本でも公開された映画「ソーシャル・ネットワーク」と大きく異なる点だと思いました。余談ですが、映画を見た印象を一言で言えば、フェイスブックの1つの側面を描いているにすぎないというもの。これは、フェイスブックの共同創業者であり後にCEOのマーク・ザッカーバーグを訴えることになるエドゥアルド・サヴェリンからの視点が色濃く出ていること、また、映画作成にあたりザッカーバーグへの取材を断られているためザッカーバーグがフェイスブックを通じて何をしたいか(フェイスブックの本質的な部分)があまり描かれていないこと、ストーリーではユーザー数が100万人突破からの先が省略されていること、などが主な理由です。その点、「フェイスブック 若き天才の野望」にはフェイスブックの歴史が忠実に書かれていると思わされたのが印象的でした。フェイスブックに興味のある方は、この映画だけではなく本書「フェイスブック 若き天才の野望」も読んでみてもおもしろいと思います。一読の価値ありです。

■facebookの理念

2点目のおもしろさは、CEOのザッカーバーグがどう考えていたのか・考えているのか、フェイスブックとグーグルの設計思想の比較、フェイスブックにはどのような価値があるのか、今後の可能性など、これからのネットの世界のあり方を示唆する内容が豊富に書かれている点です。

本書を読んで見えてきたのは、フェイスブックの理念は「オープンな世界・透明な世界をつくること」です。これはCEOであるザッカバーグ個人の核となる思想でもあり、本書では何度もこの表現が出てきます。フェイスブック上ではユーザーが自分の名前を実名で登録し、自分の身元に即したプロフィールを公開することがルールになっています。プロフィールには、顔写真、連絡先、生年月日、出身地、学歴、現在の所属先(勤め先など)、趣味・関心、好きな言葉や本・音楽、宗教、政治観、フェイスブックに何を求めているか(情報共有、出会いなど)、といった内容を一通り読むだけで、その人のことある程度わかるようになっています。このようなフェイスブックの厳格なまでの実名主義は、まさにこのオープンで透明な使命を果たすためのものです。

フェイスブックのコンセプトは、本書に書かれている「フェイスブックの本質はソーシャルグラフに基づいて現実世界をデジタル世界に移し替えるものが」(p.496)というザッカーバーグの言葉に表れていると思いました。順番としてリアルな世界での家族・友人・知人という人間関係があり、それをフェイスブックというデジタルなオンライン上の世界に移すという設計思想です。よって、フェイスブックではリアルに近い友人同士などでの信頼関係に基づいたソーシャルグラフ(人間関係)が築かれるのです。

では、なせフェイスブック、もっと言えばザッカーバーグは「オープンで透明な世界」を目指すのでしょうか。それは、透明な世界では個人がより責任をもって行動するという信念を持っており、フェイスブックを通じてそういう世界をつくりたい、そしてよりよい世界にしたい、世界を変えたいと考えているからです。

■オープンとプライバシー

フェイスブックの理念、そしてザッカーバーグの信念は「オープンで透明な世界」です。この考え方に時として相反するのがプライバシーの問題。「フェイスブック 若き天才の野望」を読むと、フェイスブックにはプライバシー問題が常につきまとっていたことがわかります。例えば、自分の近況やあらゆる更新情報が友達のフェイスブック上に表示されるニュースフィードという機能がリリースされた時は、(当初はニュースフィードのメリットが十分に伝わらず)自分が公開を望まない情報までも送られることに何十万人もの反対グループができました。

ザッカーバーグはプライバシー問題をどのようにとらえているのでしょうか。それは、「オープンで透明な世界」という信念が目的であり、プライバシー問題は手段だということ。すなわち、オープンと透明性に至る方法として、プライバシーを位置づけており、だからフェイスブックではプライバシー設定が細かく制御できると書かれています。制御を細かくできることで安心感を与える、ザッカーバーグが期待するのはそうすることで次第にみんながオープンになることのようです。これに関して、前述のニュースフィード抗議グループを立ち上げたベン・パーはある記事でこのように書いていたようです。自分の生活や考えを親しい人に共有することが快適になってきた、それが新しいテクノロジーの発展とザッカーバーグによって。そしてこうも書いています。プライバシーは消えていない、むしろユーザーにとって容易に制御できるようになっており、共有したいことは誰にでも公開する、秘密にしたいことは公開しない、あるいは自分の頭の中にとどめておけばよい、と。

プライバシーに関して思うのは、自分の情報に対する公開/非公開の判断は、自分自身で判断するしかないということです。上記のようにフェイスブックではプライバシー設定により、確かにある程度の自由度が公開/非公開のききます。ただ、仮に自分のプロフィールや連絡先情報を「友人のみ」と限定した場合でも、ネット上に公開していることには限りなく、その友人から情報が流れる可能性はゼロではありません。であるならば、これを前提として理解した上で、公開のメリットを楽しめばいいのではないかと思います。mixiなどでは匿名のニックネームでの登録・公開も多く見られ、一見すると自分の知っている友達かどうかの判断に迷うことがあります。一方のフェイスブックでは実名や経歴、あるいは写真などのプロフィールから、よりリアルな友達とつながりやすい環境を提供しています。そのためにも、ネット上での自己データ公開リテラシーを各自それぞれが自分の基準で持つべきではないでしょうか。

■facebookのこれから

ユーザーが多ければそれだけ利便性が高まる「ネットワーク効果」。ネットワーク効果により、ナンバー1の位置を確保すれば、ますますユーザーが増えていくという好循環が起こります。この典型がGoogleでしょう。SNSの世界では、フェイスブックでそれが起こりました。ただ、本書を読むとフェイスブックはまだまだいろんな可能性があることを感じさせます。

すでに多数の企業がフェイスブック上に自社のフェイスブックページ(ファンページから名称を変更)を設け、プロモーションやマーケティングに活用しています。広告媒体としての価値も認められつつあります(参照:Nielsen調査)。フェイスブックのある幹部の発言である「モバイルこそ本質的にソーシャルである」からも読み取れるように、2011年の今年はモバイルにも注力していくようです(参照)。

それ以外の大きな動きとしては、独自通貨であるフェイスブッククレジットです。TechCrunchの記事によれば、フェイスブックは2011年7月以降にフェイスブック上のゲーム開発者に対して、フェイスブッククレジットの利用を義務付けるとのこと。ソーシャルゲームの収益構造の特徴にアイテムなどの課金モデルがあり、これにフェイスブッククレジットが利用されることになります。まずはゲームの世界ですが、今後はコンテンツだけでなくモノを買う場合にもこのクレジットが使われるようになるのでしょう。すでに6億人を突破したフェイスブックは、中国とインドに次ぐ第三の国と表現されることもありますが、フェイスブッククレジットに信用が伴えばリアルの通貨と同様の価値が生まれるかもしれません。国を越えた決済に必ず発生する為替が、フェイスブッククレジットでは存在しないことも、旅行やもしかしたら輸出入にも利用されるなんてこともありそうです。もう一つ、現在のフェイスブックの収益へはBtoBビジネスである広告からが最も寄与していると思いますが、ユーザーから直接の収益を上げることができれば、BtoCにもマネタイズ領域を広げられそうです。

フェイスブックが誰でも使うようなインフラ、あるいはザッカーバーグの「公共事業」という表現が現実になれば、国民と政府や国との意見交換の場としても使われることも考えられます。そこでは実名や身元のあるプロフィールに伴う参加者の議論が交わされ、これこそがフェイスブックの理念である「オープンで透明な世界」を体現することになり、ザッカーバーグの描く「よりよい世界」がつくられるのかもしれません。

前述のように、フェイブックはリアル社会での友人知人関係を映した鏡のようなものです。それに加えて、リアルな世界にある時間的・空間的な制約がずっと小さいというネットの特徴を活かせば、それは友人とのつながりは鏡以上の頻度や新密度となり得ます。「フェイスブック 若き天才の野望」という本の原題は「The facebook Effect」です(個人的には「野望」という訳にやや違和感ありますが)。フェイスブックの人間を中心としたソーシャルグラフが引き起こす効果はどんな未来をつくるのでしょうか。


※参考情報

映画「ソーシャル・ネットワーク」 - オフィシャルサイト
http://www.socialnetwork-movie.jp/

Nielsen/Facebook Report: The Value of Social Media Ad Impressions|nielsenwire
http://blog.nielsen.com/nielsenwire/online_mobile/nielsenfacebook-ad-report/

Facebook CTO Bret Taylor: “Mobile Devices Are Inherently Social”|TechCrunch
http://techcrunch.com/2011/01/25/facebook-cto-bret-taylor-mobile-devices-are-inherently-social/

Facebook CTO Bret Taylor: “Mobile is the primary focus for our platform this year.”|Inside Facebook
http://www.insidefacebook.com/2011/01/25/bret-taylor-facebook-platform-mobile/

Facebook、ゲームデベロッパーに独自仮想通貨Facebook Creditsの利用を義務付けへ|TechCrunch JAPAN
http://jp.techcrunch.com/archives/20110124facebook-to-make-facebook-credits-mandatory-for-game-developers/


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facebookで国民の声を聞くデジタル民主主義なインド

フェイスブック情報に特化したブログ「All Facebook」に、次のような記事がアップされていました。
Indian Government Asks For Budget Input On Facebook|All Facebook
(インド政府はFacebookで国家予算への意見を募る)

■フェイスブックから国民の声を聞くインド政府

同記事によれば、インド政府はフェイスブック上に専用の「フェイスブックページ」(ファンページから名称を変更)を設定し、2012~2017年の5ヶ年の国の予算について国民の意見を広く募るそうです。この取り組みに関して、インドのビジネスブログ「Trak.in」には、もう少し詳しく書かれています。国家予算について国民の意見を集める場としては、専用サイトとフェイスブックが用意されているようです。

この専用サイトには、Strategy Challengesとして次のような12項目が明記されています。今後インド政府が重点的に取り組む分野なのでしょう。

<12 Key Strategy Challenges>
1. Enhancing the Capacity for Growth (成長)
2. Enhancing Skills and Faster Generation of Employment (雇用)
3. Managing the Environment (環境)
4. Markets for Efficiency and Inclusion (市場の効率化)
5. Decentralisation, Empowerment and Information (地方分権)
6. Technology and Innovation(技術革新)
7. Securing the Energy Future for India (エネルギー)
8. Accelerated Development of Transport Infrastructure (交通インフラ)
9. Rural Transformation and Sustained Growth of Agriculture (農業)
10.Managing Urbanization (都市開発)
11.Improved Access to Quality Education (教育)
12.Better Preventive and Curative Health Care (ヘルスケア)
出所:12TH five year plan (Government of India Planning Commission)

インド政府の今回の取り組み、とりわけフェイスブックを使って国民の声を聞くことは、かなり驚かされました。企業レベルであれば、ここ最近は日本でも複数の企業が自社のフェイスブックページを開設し、そこでは商品説明や、画像、動画があったり、キャンペーンの告知や、担当者とユーザーの双方向からの発信がウォール上に流れているのを見かけます。これと同じことを、インドでは政府が、しかも5ヶ年の国家予算という大きなテーマでやろうとしているのです。もちろん、専用のサイトがありフェイスブックの位置づけは、あくまでそれを補足するものだとは思います。同時に、実験的な意味合いもありそうです。(これを考慮しても、個人的には驚きですが)

■フェイスブックユーザーの偏り

インド政府の意欲的な取り組みだと評価する一方で、フェイスブックで本当に国民の意見が集めらるのかという疑問も生まれます。フェイスブックを使うということは、そこでの議論や自分が書き込むためにはフェイスブックユーザーでなければいけません。あるいは、PCにしろモバイルにしろネットに接続できる環境が必要です。逆に言うと、そのような条件にない人々は排除されてしまいます。

フェイスブックのユーザー数などのデータを公表しているsocialbakersでは、11年2月4日時点でのインドのユーザー数は約2,000万人となっています(図1)。国別では第7位とはいえ、それでもインド全人口(約12億人弱)に占めるフェイスブックユーザーは2%にも満たない状況です。

思考の整理日記-110204 India Facebook Statistics
 出所:socialbakers


以下(図2)はインドの人口構成を男女×年代で表したものです(きれいなピラミッドを構成しています)。

思考の整理日記-110204 インド人口の年齢構成(2010年)2
 出所:国連による人口推計から作成

同じくsocialbakerにはインドでのフェイスブックユーザーの男女別の構成比が提示されています(図3)。なんとユーザーの7割が男性で、明らかにインド人口のそれと異なります。これから予想されることとして、フェイスブック上での意見は男性の声がより多くなることが考えられます。

 Male/Female User Ratio on Facebook in India
思考の整理日記-110204 FBユーザー男女構成(インド)
 出所:socialbakers


以上のような状況から、フェイスブックに集まる声にはユーザーのバイアス(偏り)が発生していることから、一般の人々の意見とのかい離が発生する可能性もあります。

■フェイスブックが目指す「オープンで透明な世界」

もっとも、インド政府はそんなことは十分に承知でしょう。その上でフェイスブックを民主主義のインフラとしての可能性を試しているのだと思います。そういえば、冒頭で紹介したAll Facebookにはこんな記事が紹介されていました。ニューヨークのブルームバーグ市長がフェイスブックCEOのザッカバーグと会談し、ニューヨーク市民のためにフェイスブックページをつくることについて意見交換をしたとのこと。同市長はソーシャルメディアの大きな可能性に言及したようです(一方、これに関してフェイスブックの正式コメントはない模様)。

話をインドに戻すと、気になるのは、本日時点(2/4)でインド政府によるフェイスブックページ「Twelfth Plan」に登録しているユーザー数は1,000人を超えた程度にすぎない点です。まだ人々に認知されていないだけなのか、あるいは興味がないのかなどはわかりませんが、今後の状況はどうなっていくのでしょうか。

フェイスブックは原則として実名主義であることから、フェイスブックページへの書き込みも身元がわかる実名とともに意見が反映されます。また、その様子はフェイスブックユーザーであれば誰でも見ることができます。これは、まさにフェイスブックが目指す「オープンで透明な世界」です。今回のインド政府がフェイスブック上で国民に意見を問う試みは、今後のデジタル民主主義のパイロットケースになるのかもしれせん。


※参考情報

Indian Government Asks For Budget Input On Facebook|All Facebook
http://www.allfacebook.com/indian-government-asks-for-budget-input-on-facebook-2011-02

Twelfth Plan|facebook
http://www.facebook.com/TwelfthPlan

wow…Govt goes hi-tech! 12th Five Year Plan uses Web & Facebook for citizen Feedback|Trak.in
http://trak.in/tags/business/2011/02/03/indian-government-planning-commission-12th-five-year-plan/

12TH five year plan|Government of India Planning Commission
http://12thplan.gov.in/

India Facebook Statistics|socialbakers
http://www.socialbakers.com/facebook-statistics/india

NYC Mayor Wants Municipal Page On Facebook Site|All Facebook
http://www.allfacebook.com/nyc-mayor-wants-municipal-page-on-facebook-site-2011-02


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ポケベルのブームとソーシャルという功績

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今から15年くらい前の1996年当時、女子高生を中心に大ブームを巻き起こしていたものがありました。ポケベルことポケットベル(無線呼び出し)。今回のエントリーでは、ポケベルについてのブームの現象や功績について取り上げてみます。
思考の整理日記-110123 ポケベル

■当初のユーザーは営業マン

ポケベルでできることはいたってシンプルです。ポケベル自体が固有の電話番号を持っており、今でいう携帯電話のメールの機能のうち、メッセージ受信・表示のみでした。その歴史は意外に古く1968年からサービスが始まっており、サービス開始当時のユーザーは官公庁や医療関係者で、緊急時の連絡用だったようです。その後ユーザーは外出の多い一般企業の営業担当者に拡がり、使われ方はポケベルに呼び出しが入ると、出先の公衆電話から事務所へ電話を入れるというもの。当時は携帯電話の元となった自動車電話は高額で普及しておらず、外出している営業マンとの連絡手段として活用されていました。

■若者で流行ったベル文字

ところが、思わぬユーザーが現れます。それが冒頭でも挙げた女子高生などを中心とした若者です。ポケベルについてまとめられたNTTドコモレポートにはこう書かれています。「語呂合わせで意味をつけた数字を文字制限いっぱいに工夫してメッセージを送るという一種の『言葉遊び』が大流行し、新しいコミュニケーション文化が始まりました」。数字の語呂合わせは例えばこんな感じ。

 0840 (おはよう)
 0833 (おやすみ)
 3476 (さよなら)
 724106(7 (何してるかな)
 14106 (愛してる)

これくらいなら今でも読めなくもないですが、次第に語呂合わせは多様な表現を生み出したようです。Yahoo!知恵袋には「当時のベル文字が読めないのでわかりますか?」という質問トピックに次のような数字が並んでいました。

 084- 101052160[7 ]03106 864107
 0[86- 1051210100[7
 210 1442 14-7

こんな語呂合わせでもわかる人には読めるようで、読み方はこれ。

 084- 101052160[7 ]03106 864107
 おはよー いまどこにいるのかな?これみたらベルしてね
 0[86- 1051210100[7
 おかえりー どこに行ってたのかな
 210 1442 14-7
 ずっと いっしょに いよーね

どうやら「10」と表記しても読み方がいろいろあるみたいで、1と0(いま)だったり10(と/ど)だったり、英語(Ten:て)として読んだりと多様な表音を持っていたことがうかがえます。後に、ポケベル画面の表示は数字以外にもひらがなや漢字も可能になっています。

■若者がポケベルメインユーザーに

以下は、1996年当時のドコモのポケベル新規契約者の年代別のグラフです(図2)。
思考の整理日記-110123 ドコモのポケベル新規契約者の構成比.jpg
 ドコモのポケベル新規契約者の性別・年代別構成比 (1996年)
 (出所:NTTドコモレポート

1996年の新規契約者数が書かれておらず母数は不明ですが、それを考慮しても10代女性だけで64%、20代も含めると女性の85%、男性10~20代でも80%近い割合は、当時のポケベルがそれだけ若者の支持を集めていたのかがわかるような気がします。ちなみに、1996年当時のトータルのドコモ契約数の内訳は以下の通り(図3)ですが、男性は法人利用もあり、わりとどの年代でも使用されていますが、女性では圧倒的に若者中心です(約80%が10~20代)。
思考の整理日記-110123 ドコモのポケベル新規契約者の構成比.jpg
 ドコモのボケベル契約者の性別・年代別構成比 (1996年)
 (出所:NTTドコモレポート

それにしても、当初は完全にビジネスユースだったのが、いつの間にかポケベルが高校生や大学生などの若者がメインユーザーになったのは興味深い現象です。予想ですが、ポケベルを発売していた2つのキャリアのドコモやテレメッセージ、あるいは製造メーカーにとっても当初は全く意図していなかったユーザーだったのではないでしょうか。ターゲットユーザーを拡大させるための若者向けのマーケティングなども行われずに、若者に浸透していったのではと思います(その後、ドコモは広末涼子や加藤あいなどをイメージキャラクターに起用している)。これってなぜなのか、個人的にすごく気になります。

■ポケベルを4Pで考えてみる

まずはマーケティングの4P(Price・Promotion・Place・Product)のフレームワークで見てみます。Price(価格)は、いろいろ見てみると、だいたい月額3,000円程度で契約ができたようです。これくらいなら高校生であっても気軽に持てる設定だと思いました。ただ、ポケベルへのメッセージ送信のためには屋外からは公衆電話を使うことになったので、その費用が別途必要ですが。次にPromotion(販促・プロモーション)。ドコモではイメージキャラクターとして広末涼子を起用していたこともあります(図4)。ここからも、ポケベルのターゲットユーザーとして、高校生などの若者を設定していたことがうかがえます。
思考の整理日記-110123 ドコモポケベルのプロモーション

一方のPlace(販売場所)。現在の携帯ショップのように、ポケベルショップがあったようです。どれくらいの規模でショップが存在していたかはわかりませんが、それなりに身近な場所にも出店していたとすれば、消費者も訪れやすい環境だったのかもしれません。では、Productはどうだったのでしょうか。実物がないので、あくまで少し調べた印象ですが、だいたい現在の折りたたみ携帯くらいの大きさで、カバンやポケットにも十分入るサイズ。つまり、モバイル性に優れていたのだと思います。機能面ではなんと言っても、友達や彼氏・彼女あるいは面識がなくポケベルだけでつながっている「ベル友」とコミュニケーションができる点が、当時の若者に受けた点ではないでしょうか。

■なぜポケベルは若者で流行ったのか

今でこそ、携帯電話は当たり前のように持っていますが、ポケベル全盛の1996年当時は、携帯電話は一般には普及していませんでした。だから、ポケベルを持つ以前の友達との連絡手段は、家の固定電話に電話するか手紙を出すかくらいしかない時代。そこへ、ポケベルが全く新しいコミュニケーションを生み出します。前述のように、ひらがな等が画面に表示される前は数字だけの受信でしたが、それだけでもとても新鮮なコミュニケーションだったのだと思います。

一言で表現すれば、いつでもどこでもメッセージが受信できること(受信できるエリアに制限があったようですが)。今では当たり前のコミュニケーションのモバイル性を初めて享受できるものがポケベルだったと思います。ふとした時に自分のポケベルが鳴り、そこには友達からのメッセージが表示される。寝ようと思った頃に彼女からくる「0833」。彼氏に送ったメッセージへの返信。携帯電話がなかった時代には単にそれだけの他愛のないことでも、今までにはない「つながり」を体感させてくれ、かつ持ち歩けたことが、ポケベルの最大の功績だったのではないでしょうか。

■ポケベルブームの終焉

そんなポケベルですが、ブームの終わりはあっけなく訪れます。下図はドコモのポケベル契約者数の時系列推移を表したグラフです(図5)。
思考の整理日記-110123 ドコモのポケットベルの契約数の推移
 ドコモのポケットベルの契約数の推移
 (出所:NTTドコモレポート

赤い線がポケベルですが、1996年までは順調に契約数を増やしていますが、1996年6月のピーク後は、ユーザーが激減しているのがわかります。その一方で、緑色の携帯電話が一気に普及し始めています。携帯ほどではないものの、PHSもポケベルの減少と同じタイミングで増加しています。携帯電話でメッセージを交換できるようになり、ポケベルは取って代わられたのです。その後の携帯電話普及状況はもはや語るまでもないでしょう(図6)。
思考の整理日記-110123 携帯電話の普及率.jpg
 携帯電話の世帯普及率
 (出所:社会実情データ図録

ポケベルの不便さは、メッセージが受信できても送信ができない点にありました。当時、ポケベルにメッセージを送るために公衆電話を使うのが一般的で、高校では休み時間には公衆電話に行列ができたそうです。しかし、携帯電話は、メールを受けることも送ることもできます。ポケベルの比較優位性が失われたことで、その結果は上記の通りです。

今では携帯でのメール以外にも、mixiなどのSNSやツイッターも携帯から使え、コミュニケーションの手段は多様化しました。「つながり」を持ち歩けることが当たり前になっていますが、ポケベルがそれを初めて普通の若者にもたらした功績は大きかったのではないかと思います。


※参考情報

「ベル友」ブームを巻き起こした「ポケットベル®(現クイックキャスト®)」の歴史|NTTドコモレポート http://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/info/news_release/report/070313.pdf

無線呼び出し|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E7%B7%9A%E5%91%BC%E3%81%B3%E5%87%BA%E3%81%97

Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1319386393

携帯電話世帯普及率|社会実情データ図録
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/6350.html

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