個人情報という価値を考えてみる
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アメリカの位置情報サービスの1つであるLooptのCEO・Sam Alnmanによれば、1981年以降に生まれた世代はオンライン上のプライバシーに対する意識がそれまでの世代と明らかに異なるとのことです。(参考記事:People born after 1981 have lower privacy standards, Loopt CEO says | Hillicon Valley)
今回のエントリーでは、若者がプライバシーをよりオープンにする傾向が見られる点、消費者自らが個人情報を売る事例(海外)、これらを踏まえ個人情報という価値をあらためて考えてみます。
■(はじめに)個人情報を記事で扱うことの前提として
なお、本エントリーでは、個人情報保護法令で定める個人情報に必ずしも厳密に当てはまらないものも扱っています(どこまでが同法令が定義する「個人情報」かの判断が難しいため)。
※個人情報保護法令での定義
生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
■若い世代では個人情報をよりオープンにする?
上記の引用記事では、1981年以降生まれ世代のプライバシー意識についての主張の明確な根拠は書かれていませんでしたが、おそらく、自社の位置情報サービスから得られた知見なのでと推測します。1981年生まれの世代は今年は30歳になりますが、1981年生まれのBefore/Afterで異なるかはどうかは別にして、30才前半くらいから下の世代では、ネットや携帯が子供や中高生の頃から身近な存在であったことがそうしたプライバシー意識を形成しているのかもしれません。
そういえば、書籍「デジタルネイティブが世界を変える」(ドン・タプスコット 翔泳社)では13~33才までの若者を「ネット世代」と呼んでいました。生まれた時から身の回りPCやネット、携帯電話などのデジタルテクノロジーが存在し、それらを利用するのが当たり前と考える若者で、彼らの行動基準はそれ以前の世代と著しく異なると指摘しています。思うに、子どもの頃からネットへのアクセスをし大量の情報に触れる、メール等の手段も活用し、リアルとネットの境界を意識しないようなコミュニケーションを「普通に」してきた世代。それ以降の世代からすると、特にネットやモバイルへの価値観が大きく違うように見えるのでしょう。
位置情報サービス、ツイッターあるいはフェイスブックなどのSNSを使っていて感じるのは、多くの人が自分の登録名を実名でしていたり、プロフィール、顔写真など以前であればプライベートだから見せなかったような情報まで公開していることです。日本では特に、ツイッターの流行以降にこの傾向が強くなっているように思います。
ではなぜこうした実名やプロフィールなどの個人情報を公開するのでしょうか。個人的に思うのが、個人情報を非公開とするメリットよりも、公開するメリットのほうが大きいからだと思います。ツイッターや原則実名のフェイスブックでは、実名を公開していることで、親しい友人などとつながりやすくなる、というのが1つの理由なのではないでしょうか。
それを示すように調査会社マクロミルが実施した「Facebookユーザ500人 利用実態調査」では、「Facebookのよいところは何ですか?」という設問に対して、2位:実名なので知人を見つけやすい(37.2%)、3位:実名なので情報に信憑性がある(34.8%)と実名によるメリットが挙げられていました(n=500 ※全てフェイスブックユーザー)。
■自らが個人情報を売る (より積極的な事例)
プライバシー情報である個人情報を、もっと積極的に活用する事例がウォールストリートジャーナルの記事で紹介されていました。「Web's Hot New Commodity: Privacy | THE WALL STREET JOURNAL」(ウェブでのホットな商品はプライバシー)
記事では、人々は自分たちの個人情報の価値を新たに認識し始め、情報保護を強化することもあれば、一方で価値があるのでで売ることもある状況を取り上げています(As people are becoming more aware of the value of their data, some are seeking to protect it, and sometimes sell it.)。
具体例としてイギリスのケースですが、ロンドンのアラウ社では集めた4,000人分の個人情報を販売し、情報を提供した個人には売り上げの70%を手数料を支払っているとのこと。個人情報を提供したSequeira氏は次のようなコメントを残しています。「見知らぬ人に自分の車をタダで上げることはしないのに、どうして個人情報をタダで提供する必要があるのでしょうか。」("I wouldn't give my car to a stranger" for free, Mr. Sequeira says, "So why do I do that with my personal data?")
■個人情報への認識の変化?
興味深いと思ったのは、個人情報を個人が自らが売り物として扱っている点です。もちろん、ちょっとした小遣い稼ぎ程度のものでしょう。それを考慮しても興味深いと思うのは、個人情報への認識が変わってきているのではないかと感じたからです。
その理由は次の通りです。従来であれば個人情報というのは極力開示しないもの、提供するとしても何かしらの商品・サービスを享受することと引き換えにしていたものでした。例えば、ウェブでアカウントを作るためには名前やメールアドレス、場合によっては住所なども登録しますが、これはそのサービスを使うことへのギブアンドテイクです。一方の個人情報を売ることは、それによってサービスなどを直接受け取るのではなく、お金をもらうわけです。つまり、個人情報が価値があるものとして売ることのできる商品として成立しているケースだということです。ここが結構おもしろい。
■個人情報という価値
それでは、どうして個人情報が売れるのでしょうか。それは個人情報を売る側の認識の変化とともに、個人情報へのニーズも存在するからです。実は個人情報というのは、商品やサービスを売る側からしたら、喉から手が出るほど欲しい情報だったりします。個人情報というと名前や住所、メールアドレスが思い浮かびますが、これら以外にも、性別や年齢、職業、家族構成、居住住宅形態、耐久財保有有無に加え、趣味・嗜好、価値観、行動特性なども、例えばマーケティングを考える上では消費者情報として貴重なものです。
これに加え、会員カード履歴などからわかるその人が何を買ったかの購買情報や、GPSも利用してどういった場所に訪れたかの位置情報、TV広告や新聞・雑誌広告への接触情報、あるいはネット上での広告接触、そして、メディアコンテンツへの関与としてテレビ視聴率、PC/モバイルからのネット視聴など、これらの消費者情報は蓄積していくことで意味のあるデータに、活用次第では非常に価値のある情報となっていきます。だからサービス提供側の企業は時にはお金を払ってでも欲しい情報であり、こうした需要があるということで前述のアラウ社などの個人情報販売代理店のようなビジネスも成り立つのでしょう。
さて。最後に思うのは、個人情報というのはその価値を活かすことも悪用することできる、いわば諸刃の剣だということです。自分の個人情報が売れると知っても、それでもなお抵抗感があるのは、自分の情報がどのように使われるかが見えないからではないでしょうか。例えば発生する不安として、メールアドレスであれば迷惑メールが大量に送られてくるのではないか、住所であれば必要でないダイレクトメールが送付されるのではないか、もっと深刻なものとしてクレジットカード番号であれば偽造などの犯罪に巻き込まれてしまうのではないか、等々です。
こうしたことへの懸念がある程度払拭されない限り、個人情報販売が定着するのはなかなか現実的ではなさそうです。ただ、前述のようなそれまでの世代に比べてプライバシー公開の抵抗感が小さいような世代が増えていけば、もしかしたら個人情報への認識が変わっていき、売れるような商品として扱われることになるのかもしれません。
※参考情報
個人情報保護法令
People born after 1981 have lower privacy standards, Loopt CEO says | Hillicon Valley
Facebookユーザ500人 利用実態調査|マクロミル
Web's Hot New Commodity: Privacy | THE WALL STREET JOURNAL
Allow Ltd.
アメリカの位置情報サービスの1つであるLooptのCEO・Sam Alnmanによれば、1981年以降に生まれた世代はオンライン上のプライバシーに対する意識がそれまでの世代と明らかに異なるとのことです。(参考記事:People born after 1981 have lower privacy standards, Loopt CEO says | Hillicon Valley)
今回のエントリーでは、若者がプライバシーをよりオープンにする傾向が見られる点、消費者自らが個人情報を売る事例(海外)、これらを踏まえ個人情報という価値をあらためて考えてみます。
■(はじめに)個人情報を記事で扱うことの前提として
なお、本エントリーでは、個人情報保護法令で定める個人情報に必ずしも厳密に当てはまらないものも扱っています(どこまでが同法令が定義する「個人情報」かの判断が難しいため)。
※個人情報保護法令での定義
生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
■若い世代では個人情報をよりオープンにする?
上記の引用記事では、1981年以降生まれ世代のプライバシー意識についての主張の明確な根拠は書かれていませんでしたが、おそらく、自社の位置情報サービスから得られた知見なのでと推測します。1981年生まれの世代は今年は30歳になりますが、1981年生まれのBefore/Afterで異なるかはどうかは別にして、30才前半くらいから下の世代では、ネットや携帯が子供や中高生の頃から身近な存在であったことがそうしたプライバシー意識を形成しているのかもしれません。
そういえば、書籍「デジタルネイティブが世界を変える」(ドン・タプスコット 翔泳社)では13~33才までの若者を「ネット世代」と呼んでいました。生まれた時から身の回りPCやネット、携帯電話などのデジタルテクノロジーが存在し、それらを利用するのが当たり前と考える若者で、彼らの行動基準はそれ以前の世代と著しく異なると指摘しています。思うに、子どもの頃からネットへのアクセスをし大量の情報に触れる、メール等の手段も活用し、リアルとネットの境界を意識しないようなコミュニケーションを「普通に」してきた世代。それ以降の世代からすると、特にネットやモバイルへの価値観が大きく違うように見えるのでしょう。
位置情報サービス、ツイッターあるいはフェイスブックなどのSNSを使っていて感じるのは、多くの人が自分の登録名を実名でしていたり、プロフィール、顔写真など以前であればプライベートだから見せなかったような情報まで公開していることです。日本では特に、ツイッターの流行以降にこの傾向が強くなっているように思います。
ではなぜこうした実名やプロフィールなどの個人情報を公開するのでしょうか。個人的に思うのが、個人情報を非公開とするメリットよりも、公開するメリットのほうが大きいからだと思います。ツイッターや原則実名のフェイスブックでは、実名を公開していることで、親しい友人などとつながりやすくなる、というのが1つの理由なのではないでしょうか。
それを示すように調査会社マクロミルが実施した「Facebookユーザ500人 利用実態調査」では、「Facebookのよいところは何ですか?」という設問に対して、2位:実名なので知人を見つけやすい(37.2%)、3位:実名なので情報に信憑性がある(34.8%)と実名によるメリットが挙げられていました(n=500 ※全てフェイスブックユーザー)。
■自らが個人情報を売る (より積極的な事例)
プライバシー情報である個人情報を、もっと積極的に活用する事例がウォールストリートジャーナルの記事で紹介されていました。「Web's Hot New Commodity: Privacy | THE WALL STREET JOURNAL」(ウェブでのホットな商品はプライバシー)
記事では、人々は自分たちの個人情報の価値を新たに認識し始め、情報保護を強化することもあれば、一方で価値があるのでで売ることもある状況を取り上げています(As people are becoming more aware of the value of their data, some are seeking to protect it, and sometimes sell it.)。
具体例としてイギリスのケースですが、ロンドンのアラウ社では集めた4,000人分の個人情報を販売し、情報を提供した個人には売り上げの70%を手数料を支払っているとのこと。個人情報を提供したSequeira氏は次のようなコメントを残しています。「見知らぬ人に自分の車をタダで上げることはしないのに、どうして個人情報をタダで提供する必要があるのでしょうか。」("I wouldn't give my car to a stranger" for free, Mr. Sequeira says, "So why do I do that with my personal data?")
■個人情報への認識の変化?
興味深いと思ったのは、個人情報を個人が自らが売り物として扱っている点です。もちろん、ちょっとした小遣い稼ぎ程度のものでしょう。それを考慮しても興味深いと思うのは、個人情報への認識が変わってきているのではないかと感じたからです。
その理由は次の通りです。従来であれば個人情報というのは極力開示しないもの、提供するとしても何かしらの商品・サービスを享受することと引き換えにしていたものでした。例えば、ウェブでアカウントを作るためには名前やメールアドレス、場合によっては住所なども登録しますが、これはそのサービスを使うことへのギブアンドテイクです。一方の個人情報を売ることは、それによってサービスなどを直接受け取るのではなく、お金をもらうわけです。つまり、個人情報が価値があるものとして売ることのできる商品として成立しているケースだということです。ここが結構おもしろい。
■個人情報という価値
それでは、どうして個人情報が売れるのでしょうか。それは個人情報を売る側の認識の変化とともに、個人情報へのニーズも存在するからです。実は個人情報というのは、商品やサービスを売る側からしたら、喉から手が出るほど欲しい情報だったりします。個人情報というと名前や住所、メールアドレスが思い浮かびますが、これら以外にも、性別や年齢、職業、家族構成、居住住宅形態、耐久財保有有無に加え、趣味・嗜好、価値観、行動特性なども、例えばマーケティングを考える上では消費者情報として貴重なものです。
これに加え、会員カード履歴などからわかるその人が何を買ったかの購買情報や、GPSも利用してどういった場所に訪れたかの位置情報、TV広告や新聞・雑誌広告への接触情報、あるいはネット上での広告接触、そして、メディアコンテンツへの関与としてテレビ視聴率、PC/モバイルからのネット視聴など、これらの消費者情報は蓄積していくことで意味のあるデータに、活用次第では非常に価値のある情報となっていきます。だからサービス提供側の企業は時にはお金を払ってでも欲しい情報であり、こうした需要があるということで前述のアラウ社などの個人情報販売代理店のようなビジネスも成り立つのでしょう。
さて。最後に思うのは、個人情報というのはその価値を活かすことも悪用することできる、いわば諸刃の剣だということです。自分の個人情報が売れると知っても、それでもなお抵抗感があるのは、自分の情報がどのように使われるかが見えないからではないでしょうか。例えば発生する不安として、メールアドレスであれば迷惑メールが大量に送られてくるのではないか、住所であれば必要でないダイレクトメールが送付されるのではないか、もっと深刻なものとしてクレジットカード番号であれば偽造などの犯罪に巻き込まれてしまうのではないか、等々です。
こうしたことへの懸念がある程度払拭されない限り、個人情報販売が定着するのはなかなか現実的ではなさそうです。ただ、前述のようなそれまでの世代に比べてプライバシー公開の抵抗感が小さいような世代が増えていけば、もしかしたら個人情報への認識が変わっていき、売れるような商品として扱われることになるのかもしれません。
※参考情報
個人情報保護法令
People born after 1981 have lower privacy standards, Loopt CEO says | Hillicon Valley
Facebookユーザ500人 利用実態調査|マクロミル
Web's Hot New Commodity: Privacy | THE WALL STREET JOURNAL
Allow Ltd.
AISASとSIPSから考える検索連動型広告とこれからの広告の方向性
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ネット広告の代表的な手法の1つである検索連動型広告について、おもしろい記事がありました。
検索連動型広告がもたらした「悪しき」広告観|Adver Times(アドタイ)
■AISASモデルで見る検索連動型広告の位置づけ
ここで言う悪しき広告観とは、(マスメディアの広告に比べ)検索連動型広告は効果がはっきりと分かり費用対効果がちゃんと出せることだと記事では指摘しています。ネット広告ではクリック数が分かり、検索連動型広告では検索キーワードに連動する広告が表示されることから、一見すると広告効果が高いように思えます。しかし記事では、ここに落とし穴があると言います。
それは何か。落とし穴とは消費者の興味・関心・要求が生まれるプロセスの見落としですが、これを理解するために、AISAS(図1)という消費者の購買行動モデルで考えてみます。なお、AISASとは、Attention(注意)=>Interest(興味・関心)=>Search(検索)=>Action(行動)=>Share(共有)の頭文字をとったもので、電通が考案したマーケティングにおける消費行動プロセスを表す考え方です。具体的には、消費者がある商品を知ってから購入に至るまでは、注意が喚起され、興味;関心が生まれ、関連する情報を検索し、その商品やサービス購入し、そのことを共有する、というプロセスのこと。

話を検索に戻すと、当たり前ですが何かを検索するためにはキーワードが必要です。これはつまり、この時点で自分の興味・関心はそのキーワードに落とし込めているということです。これをAISASで見ると、すでに3番目のプロセスまで進んでいるのです。前述のように、検索連動型広告では、このキーワードに関連する広告が検索結果のページに表示されます。要するに言いたいのは、検索連動型広告で効果があるのは、すでに興味・関心が生み出された後の段階だということなのです。
これは、逆に言うと検索連動型広告では「知りたい」とか「欲しい」といった欲求を生み出すことができないことになります。そこで大事になるのが、記事が最後で問題提起するように「なぜ検索が起きているか」を考えること。AISASで言えば、Searchより前のAttentionやInterest。これが、消費者の興味・関心・要求が生まれるプロセスを見落とす落とし穴なのです。
■広告は目的により役割が違う
広告のその目的により役割が異なります。例えば、商品・サービス・ブランドのことを知らない人に知ってもらうこと(認知)、おいしそう・使ってみたいと興味を持ってもらうこと、機能を詳しく伝え買ってもらうこと、一度買ってもらった人にリピーターになってもらうこと、まわりの友達に進めてもらうこと、などなどです。これらの例はAISASの流れで挙げてみましたが、広告は5段階のそれぞれで役割が異なります。
ここから導かれる考え方として、検索連動型広告も手法としては有効であるが、かと言ってそれだけでは不十分ではないということ。すなわち、すでに検索キーワードレベルで興味・関心を持っている人への広告としての役割を持っている一方で、興味・関心を生み出す役割の広告が別に必要になる。
■セレンディピティと共感
最近読んでおもしろかったキュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる(佐々木俊尚 ちくま新書)にセレンディピティという言葉が出てきます(p.175)。これはserendipityという「偶然に素晴らしい幸運に巡り合ったり、発見をすること」を意味する英単語のことですが、著者の佐々木氏によれば、ネットの世界でのニュアンスとしては、「自分が探していたわけではないけれども凄く良い情報を偶然見つけてしまう」ことだと説明されています。
広告の視点で考えると、従来はこのセレンディピティを生み出していたのは、ブランド露出に貢献するマスメディアが担っていたように思います。TVCMで思いがけないモノを初めて知り(セレンディピティ)、店頭で見つけついつい買ってしまったみたいなプロセスです。個人的に思うのは、日本の広告費:5兆8427億円(日本の広告費2010|電通)のうちTV広告は依然として30%近い1兆7321円を占め、一方のネットは増加傾向とはいえ13%程度(7747億円)なのは、ここにも要因があるのではということです。
となると、ネット広告において、検索連動型では捉えられない「興味・関心を生み出す」ための広告、セレンディピティを生み出すような広告が今のところ足りない要素となります。ここに対するヒントは、同じく電通が2011年1月に発表したSIPSモデル(図2)にあるのではと思っています。

Source:SIPSモデル|電通から引用
電通によれば、SIPSモデルはAISASから進化したソーシャルメディアの視点を重視し、生活者の行動を深掘りした概念と説明されています(注.電通によればSIPSはAISASにとって代わるものではなくAISASはなくならないとしている)。ヒントとはSIPSの、特に「共感する(Sympathize)」の部分。先ほどセレンディピティとは偶然に凄く良い情報を見つけると書きましたが、自分にとってセレンディピティなことは共感につながると思っています。であればいかに消費者の共感を生み出すか、それを広告でできるかが検索連動型広告にはないピースとなります。
ただ、共感を生むのは必ずしも広告である必要はなく、それは前述の佐々木氏の言う、膨大な情報から選び意味づけをしてくれるキュレーターかもしれず、単に友人のお勧めなのかもしれません。そういえば、「フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)」(デビッド・カークパトリック 日経BP社)という本にはこんな記述がありました。『グーグルのアドワーズ検索広告は「要求を満たす」。対照的に、フェイスブックは要求を生み出す。(ザッカーバークたちの)グループはそう結論を出した。』(p.379)。AISASのモデルに当てはめると以下のイメージです(図3)。

要求を生み出すためには多数ある広告手法をどう組み合わせるか(クロスメディア)、あるいは従来の広告の概念とは違う、例えばソーシャル性を取り入れていくのか、企業側だけではなく消費者をどう巻き込んでいくのか(SIPSの「参加する(Participate)」)。このあたりは個人的にもとても興味がありますし、今後どう進化していくのかが興味深いところです。
※参考情報
検索連動型広告がもたらした「悪しき」広告観|Adver Times(アドタイ)
日本の広告費2010|電通
SIPSモデル|電通
ネット広告の代表的な手法の1つである検索連動型広告について、おもしろい記事がありました。
検索連動型広告がもたらした「悪しき」広告観|Adver Times(アドタイ)
■AISASモデルで見る検索連動型広告の位置づけ
ここで言う悪しき広告観とは、(マスメディアの広告に比べ)検索連動型広告は効果がはっきりと分かり費用対効果がちゃんと出せることだと記事では指摘しています。ネット広告ではクリック数が分かり、検索連動型広告では検索キーワードに連動する広告が表示されることから、一見すると広告効果が高いように思えます。しかし記事では、ここに落とし穴があると言います。
それは何か。落とし穴とは消費者の興味・関心・要求が生まれるプロセスの見落としですが、これを理解するために、AISAS(図1)という消費者の購買行動モデルで考えてみます。なお、AISASとは、Attention(注意)=>Interest(興味・関心)=>Search(検索)=>Action(行動)=>Share(共有)の頭文字をとったもので、電通が考案したマーケティングにおける消費行動プロセスを表す考え方です。具体的には、消費者がある商品を知ってから購入に至るまでは、注意が喚起され、興味;関心が生まれ、関連する情報を検索し、その商品やサービス購入し、そのことを共有する、というプロセスのこと。

話を検索に戻すと、当たり前ですが何かを検索するためにはキーワードが必要です。これはつまり、この時点で自分の興味・関心はそのキーワードに落とし込めているということです。これをAISASで見ると、すでに3番目のプロセスまで進んでいるのです。前述のように、検索連動型広告では、このキーワードに関連する広告が検索結果のページに表示されます。要するに言いたいのは、検索連動型広告で効果があるのは、すでに興味・関心が生み出された後の段階だということなのです。
これは、逆に言うと検索連動型広告では「知りたい」とか「欲しい」といった欲求を生み出すことができないことになります。そこで大事になるのが、記事が最後で問題提起するように「なぜ検索が起きているか」を考えること。AISASで言えば、Searchより前のAttentionやInterest。これが、消費者の興味・関心・要求が生まれるプロセスを見落とす落とし穴なのです。
■広告は目的により役割が違う
広告のその目的により役割が異なります。例えば、商品・サービス・ブランドのことを知らない人に知ってもらうこと(認知)、おいしそう・使ってみたいと興味を持ってもらうこと、機能を詳しく伝え買ってもらうこと、一度買ってもらった人にリピーターになってもらうこと、まわりの友達に進めてもらうこと、などなどです。これらの例はAISASの流れで挙げてみましたが、広告は5段階のそれぞれで役割が異なります。
ここから導かれる考え方として、検索連動型広告も手法としては有効であるが、かと言ってそれだけでは不十分ではないということ。すなわち、すでに検索キーワードレベルで興味・関心を持っている人への広告としての役割を持っている一方で、興味・関心を生み出す役割の広告が別に必要になる。
■セレンディピティと共感
最近読んでおもしろかったキュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる(佐々木俊尚 ちくま新書)にセレンディピティという言葉が出てきます(p.175)。これはserendipityという「偶然に素晴らしい幸運に巡り合ったり、発見をすること」を意味する英単語のことですが、著者の佐々木氏によれば、ネットの世界でのニュアンスとしては、「自分が探していたわけではないけれども凄く良い情報を偶然見つけてしまう」ことだと説明されています。
広告の視点で考えると、従来はこのセレンディピティを生み出していたのは、ブランド露出に貢献するマスメディアが担っていたように思います。TVCMで思いがけないモノを初めて知り(セレンディピティ)、店頭で見つけついつい買ってしまったみたいなプロセスです。個人的に思うのは、日本の広告費:5兆8427億円(日本の広告費2010|電通)のうちTV広告は依然として30%近い1兆7321円を占め、一方のネットは増加傾向とはいえ13%程度(7747億円)なのは、ここにも要因があるのではということです。
となると、ネット広告において、検索連動型では捉えられない「興味・関心を生み出す」ための広告、セレンディピティを生み出すような広告が今のところ足りない要素となります。ここに対するヒントは、同じく電通が2011年1月に発表したSIPSモデル(図2)にあるのではと思っています。

Source:SIPSモデル|電通から引用
電通によれば、SIPSモデルはAISASから進化したソーシャルメディアの視点を重視し、生活者の行動を深掘りした概念と説明されています(注.電通によればSIPSはAISASにとって代わるものではなくAISASはなくならないとしている)。ヒントとはSIPSの、特に「共感する(Sympathize)」の部分。先ほどセレンディピティとは偶然に凄く良い情報を見つけると書きましたが、自分にとってセレンディピティなことは共感につながると思っています。であればいかに消費者の共感を生み出すか、それを広告でできるかが検索連動型広告にはないピースとなります。
ただ、共感を生むのは必ずしも広告である必要はなく、それは前述の佐々木氏の言う、膨大な情報から選び意味づけをしてくれるキュレーターかもしれず、単に友人のお勧めなのかもしれません。そういえば、「フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)」(デビッド・カークパトリック 日経BP社)という本にはこんな記述がありました。『グーグルのアドワーズ検索広告は「要求を満たす」。対照的に、フェイスブックは要求を生み出す。(ザッカーバークたちの)グループはそう結論を出した。』(p.379)。AISASのモデルに当てはめると以下のイメージです(図3)。

要求を生み出すためには多数ある広告手法をどう組み合わせるか(クロスメディア)、あるいは従来の広告の概念とは違う、例えばソーシャル性を取り入れていくのか、企業側だけではなく消費者をどう巻き込んでいくのか(SIPSの「参加する(Participate)」)。このあたりは個人的にもとても興味がありますし、今後どう進化していくのかが興味深いところです。
※参考情報
検索連動型広告がもたらした「悪しき」広告観|Adver Times(アドタイ)
日本の広告費2010|電通
SIPSモデル|電通
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
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佐々木 俊尚
筑摩書房
売り上げランキング: 22
筑摩書房
売り上げランキング: 22
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
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デビッド・カークパトリック
日経BP社
売り上げランキング: 44
日経BP社
売り上げランキング: 44
多様性を希望したい今後の検索サービス
グーグルの公式ブログ:「Official Google Blog」に、2/24付で次のような記事がエントリーされていました。Finding more high-quality sites in search
■グーグルの検索アルゴリズム変更
記事によれば、アメリカ時間の同日に検索アルゴリズムを大幅に変更したとのこと。改訂の目的は、質の低いサイトを検索結果から除外し、質の高いサイトを上位に上げるためというもの。グーグルによれば、質の低いサイトとは役に立たないコンテンツや単に他からコピーしたコンテンツなどを指しています。なお、検索アルゴリズムの変更はまずはアメリカだけのようで、今後は他国にも展開すると記事では言及しています。
ちなみに、今回のアルゴリズム変更前のことですが、グーグルの検索結果が自分の望む情報が得られない状況を批判した記事がTechcrunchに掲載されていました(記事:Search Still Sucks)。この記事の記者によると、旅行先の宿泊ホテルを探す時やガジェット製品レビューを検索する時は、グーグルは使っていないと言っています。つまり、この分野ではグーグルで検索をすれば自分に必要な情報よりも、そうでないサイトばかりが表示されるのだと思います。24日の今回のグーグルの検索アルゴリズムの変更はこうした状況を改善しようというものです。
グーグルが検索アルゴリズムを改善し続けるのは、彼らが次のようなゴールを設定しているからです。Our goal is simple: to give people the most relevant answers to their queries as quickly as possible. (Official Google Blogより) 目指すところは同じですが、ここ最近はグーグルとは異なる方法を取る検索サービスが登場しているのが興味深いです。
■グーグルとは異なる新しい検索サービス
まずはマイクロソフトのbing。これも2/24付のbingのブログによると、検索結果にフェイスブックの「いいね」ボタンの情報を表示させるそうです。どういうことかと言うと、検索結果のサイトに対してユーザーのフェイスブック内の友達が「いいね!」を投稿していれば、URLの下に友達のアイコンが並び、「いいね」としたことが表示されるのです(図1)。
引用:Bing expands Facebook “Liked Results” | bing Community
bingと同じようなことをblekkoという検索サービスがグーグルに挑戦しています。詳細はこちら:Blekko Goes Social, Now Lets You Search Sites Your Friends Have ‘Liked’ On Facebook | Techcrunch
■コンピューターvs人間
グーグルは検索アルゴリズム、すなわち技術を徹底的に追及することで、検索結果向上を目指しています。一方で、上記のbingやblekkoなどは、友達の「いいね」という人の情報を加味した検索結果を返します。
bingについては、表面的にはグーグル対マイクロソフトの対決に見えますが、実は起こっていることはグーグル対フェイスブックだと思っています。これは個人的な見方ですが、グーグルの思想には、あらゆることをコンピューターがするにようなる、という考え方があるような気がします。一方のフェイスブックは、人を中心に置くという思想であることが「フェイスブック 若き天才の野望」という本では、「人間中心型情報構造」という表現で書かれています(p.431)。
■多様な検索サービスを
では、これら検索サービスについてどう考えるのか。個人的には、グーグルの検索システムはこれからも必要であり、フェイスブックのようなSNSによるソーシャルグラフの情報を活用した新しい検索システムもあってもいいと思っています。現在の検索サービス市場のシェアはグーグルが独占している状況です(図2)。
出所:Experian Hitwise
多様な検索サービスがあり、そして実現されるのはグーグルの目指すゴールであってほしいと思っています。Our goal is simple: to give people the most relevant answers to their queries as quickly as possible.
そう言えば今日、あるテレビ番組で次のような言葉を耳にしました。
「人生での無駄な時間は探し物をする時間である。」
探し物が情報である検索にも、この言葉は当てはまるのではないでしょうか。
※参考情報
Finding more high-quality sites in search | Official Google Blog
Search Still Sucks | Techcrunch
Bing expands Facebook “Liked Results” | bing Community
blekko
Blekko Goes Social, Now Lets You Search Sites Your Friends Have ‘Liked’ On Facebook | Techcrunch
Experian Hitwise reports Bing searches increase 21 percent in January 2011 | Experian Hitwise
■グーグルの検索アルゴリズム変更
記事によれば、アメリカ時間の同日に検索アルゴリズムを大幅に変更したとのこと。改訂の目的は、質の低いサイトを検索結果から除外し、質の高いサイトを上位に上げるためというもの。グーグルによれば、質の低いサイトとは役に立たないコンテンツや単に他からコピーしたコンテンツなどを指しています。なお、検索アルゴリズムの変更はまずはアメリカだけのようで、今後は他国にも展開すると記事では言及しています。
ちなみに、今回のアルゴリズム変更前のことですが、グーグルの検索結果が自分の望む情報が得られない状況を批判した記事がTechcrunchに掲載されていました(記事:Search Still Sucks)。この記事の記者によると、旅行先の宿泊ホテルを探す時やガジェット製品レビューを検索する時は、グーグルは使っていないと言っています。つまり、この分野ではグーグルで検索をすれば自分に必要な情報よりも、そうでないサイトばかりが表示されるのだと思います。24日の今回のグーグルの検索アルゴリズムの変更はこうした状況を改善しようというものです。
グーグルが検索アルゴリズムを改善し続けるのは、彼らが次のようなゴールを設定しているからです。Our goal is simple: to give people the most relevant answers to their queries as quickly as possible. (Official Google Blogより) 目指すところは同じですが、ここ最近はグーグルとは異なる方法を取る検索サービスが登場しているのが興味深いです。
■グーグルとは異なる新しい検索サービス
まずはマイクロソフトのbing。これも2/24付のbingのブログによると、検索結果にフェイスブックの「いいね」ボタンの情報を表示させるそうです。どういうことかと言うと、検索結果のサイトに対してユーザーのフェイスブック内の友達が「いいね!」を投稿していれば、URLの下に友達のアイコンが並び、「いいね」としたことが表示されるのです(図1)。
引用:Bing expands Facebook “Liked Results” | bing Community
bingと同じようなことをblekkoという検索サービスがグーグルに挑戦しています。詳細はこちら:Blekko Goes Social, Now Lets You Search Sites Your Friends Have ‘Liked’ On Facebook | Techcrunch
■コンピューターvs人間
グーグルは検索アルゴリズム、すなわち技術を徹底的に追及することで、検索結果向上を目指しています。一方で、上記のbingやblekkoなどは、友達の「いいね」という人の情報を加味した検索結果を返します。
bingについては、表面的にはグーグル対マイクロソフトの対決に見えますが、実は起こっていることはグーグル対フェイスブックだと思っています。これは個人的な見方ですが、グーグルの思想には、あらゆることをコンピューターがするにようなる、という考え方があるような気がします。一方のフェイスブックは、人を中心に置くという思想であることが「フェイスブック 若き天才の野望」という本では、「人間中心型情報構造」という表現で書かれています(p.431)。
■多様な検索サービスを
では、これら検索サービスについてどう考えるのか。個人的には、グーグルの検索システムはこれからも必要であり、フェイスブックのようなSNSによるソーシャルグラフの情報を活用した新しい検索システムもあってもいいと思っています。現在の検索サービス市場のシェアはグーグルが独占している状況です(図2)。
出所:Experian Hitwise
多様な検索サービスがあり、そして実現されるのはグーグルの目指すゴールであってほしいと思っています。Our goal is simple: to give people the most relevant answers to their queries as quickly as possible.
そう言えば今日、あるテレビ番組で次のような言葉を耳にしました。
「人生での無駄な時間は探し物をする時間である。」
探し物が情報である検索にも、この言葉は当てはまるのではないでしょうか。
※参考情報
Finding more high-quality sites in search | Official Google Blog
Search Still Sucks | Techcrunch
Bing expands Facebook “Liked Results” | bing Community
blekko
Blekko Goes Social, Now Lets You Search Sites Your Friends Have ‘Liked’ On Facebook | Techcrunch
Experian Hitwise reports Bing searches increase 21 percent in January 2011 | Experian Hitwise
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
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