ドキュメンタリー映画の「Under Our Skin」を観るとわかりますが、ライム病の専門医(Lyme Literate  Doctor or LLMD)は、医療機関から目の敵にされています。

 

多数派の医師たちは、科学的に証明の難しい慢性ライム病の存在を認めません。 これはライムの病原菌が検査をしても見つからなかったり(48% False Negative on Western Blot)、症状がほかの病気と酷似していて診断が非常に難しいためです。

 

自分が何の病気を抱えているかわからない慢性ライム病の患者たちは、何十人もの医師の診察を受けても、原因不明と言われたり、診断をリウマチや線維筋痛症などと誤診されたり、あるいはなんらかの精神病と診断され、「私はウソなどついていません。本当に身体が痛くて苦しいんです。」と訴えても、「いろいろ検査をしても何も悪い所は見つかりません。あなたの痛みは身体ではなく、頭がそう思いたいだけです。」と言われて精神病院送りにされたりしています。 私の所属するライム病サポート・グループでも、実際に精神病院に入れられた人がいます。

 

人によっては10年以上の長くて辛い過程を経て、運が良ければライム病の専門医と出会い、そこでやっと病気の原因がわかり、診断名がつき、そして治療を受けられます。 ライム病の専門医が表舞台に出ないのは、慢性ライム病が医学的に認識されておらず、これを抗生物質で長期にわたり治療するのは、不適切な医療行為だと州の医療機関に報告され、医師免許を取り上げられる恐れがあるからです。 


「Under Our Skin」の中でも、ドクター・ジョーンズやドクター・ジェムセックという医師たちが、他に引き取り手のいないライム病の患者を救うべく治療を続けたために、医師免許の停止という処分を受ける場面があります。 このようなヒーローを除けば、大多数の医師たちは処分を恐れて、ライム病の患者には近づきたがりません。 当然専門医の数は非常に限られてしまいます。 

 

Dr. Charles Jones

https://www.youtube.com/watch?v=MNGnsAgKT8s

 

Dr. Joe Jemsek

https://www.youtube.com/watch?v=V-lHDA863TM

 

ドクター・ジョーンズは、理不尽な処分を受けても、「ライムの治療は私の使命」と言い、90歳近くなってもまだコネチカット州で診察を続けておられます。 ライム病を治療しようという医師たちは、神様が地球に送った本物のヒーラーか、困った患者を食いものにして一儲けしようと企む金の亡者かのどちらかだと思います。 私も数少ない専門医の何人かに電話をかけましたが、中には保険の効かない初診で10万円近くの請求をする医師もいました。

 

私の娘は、抗生物質服用の初期治療で回復しなかったために、10年以上もずっと掛かっていた当時の主治医に、「病気の継続的な症状は抗生物質の副作用」と言われ、治らないまま突き放されました。 幸い偶然見つけた良心的なライム病の専門医から約2年間治療を受けて、最近やっと回復基調に乗ってきました。

 

現在娘の掛かっている専門医はヨーロッパからの移民で、アメリカのメディカルスクールで頭をガチガチにされていないのが救いです。 なぜなら一人ひとり症状や治療に対する反応が違うライム病患者が相手では、学校で習った治療法はほとんど通用しないからです。 その点異文化を知る人は、物事を観察する洞察力が深いことに加え、臨機応変な応用力を持つために、臨床的なスキルが高いと感じます。

 

この先生の待合室には、ライム病で声が出なくなって話が出来ない人や、全身が麻痺して歩行の困難な人、元小説家で手に力が入らなくなり、書くことができなくなった人など、いろいろな人が来ます。 ほぼ全員が、この病気の世間の認識が低いために、ひどい扱いを受けたり無視されたりする辛い経験をしています。 ですから、少しずつでもこうやってライム病の情報をシェアすることで、この病気にかかった人たちが、世の中の理解を得られるようになればいいと願っています。