
ペナのオリジナルと言うアイアンのセル浮きを、やかんの蒸気で戻してみた。以前は熱湯ぶっかけがメインの方法でしたが、職人工房さんでの世間話で、もっと安全で簡単なのはヤカンで湯を沸かすときの蒸気で温めるのが良いとアドバイスいただいた。
直火でも出来ないことはないとのお話でしたが、時代やメーカーによって素材が異なり、純正セルロイドなら、ある温度を超えた瞬間に燃え上がるとの事。数十年前に老舗の日本メーカーが工場の火事で製造機械を失い、今では長いセルが造れなくなったのは業界では知られた話。セルフリシャフトでも燃えても構わん状態で温めていたら、白い煙が上がったと思ったら、あっという間に炎が出て火は燃え尽きるまで消えなかった。
もちろん水バケツを傍らに置いてあれば消えたのでしょうが、セルロイドと言うのは良く燃えるもんだ。んで、やかんで沸かしたチンチンの熱湯でセルを暖めていたのですが、これもモノと時代によっていくら熱湯をかけてもビクともしないものがたくさんあった。ヤカンのキャパシティーいっぱいの3リッターを沸かして全部を使っても動かない頑固モノも登場。これが新しいものになるとパラレルシャフトと共用していたセルが登場し、それには少量の接着剤が使われていることがある。これも基本的には温める事で緩める事も可能との事で、辛抱強くやっていたのですが、しびれを切らしてプライヤーでつまんで力業で変形させてしまう事もしばしば。最近ではヒートガンを手に入れて、電気の力を借りてみたのですが、これも加減が難しい。既にセルロイドの黒い部分が柔らかくなっているのが分かっても、リング状の飾りの部分がガッシリと固着していることが多かった。
やっぱりヤカンの蒸気と言うのが今のところの結論で、これならいくら蒸気にさらしたところで燃えるこたぁないし、内側から温める意味でシャフトやホーセルに長時間蒸気を当てても安心。このモデルが80年代前半のモデルだとするなら、もう少し長いサイズのセルであってほしかったのですが、クラブ組み立てのスタンダードとして、セルの装着は柔軟性が無ければならないとされていた時代。基本はホーゼルとシャフトつなぎ目として、インパクトの際にシャフトが曲がる力を吸収して折れにくくすると効果を信じられていた頃の話。だもんで固定してはいかん。大きな力が加わってもシャフトとのつなぎ目を保護したと言われるのです。実際にはホーゼルの先端が皿状に加工されていれば、同じ効果があるとされた。それ以降セルはただの飾りとされ、浮いていようが割れて欠落していようがスチールシャフトが折れる事なんぞないとされました。
それを知ったとしても、やっぱり見た目とにゃぴったりとくっついていて欲しいわけで、浮いていたなら戻したくなる。ってんで、ガス台周りの油汚れや乱雑さにはご容赦いただき、5本のセル浮きを修正してみた。リング飾りが固着しているのは金属っぽいリングのあるモノ。膨張の比率に違いがあるのか、これは経験則。んで、今回は軽く蒸気にさらしただけで簡単にピュッと戻った。
白く変色することもない素材は純正セルロイドじゃないのかも知れませんが、取りあえず見た目にはよろしい。まだ、汚れを除去した時に曇ってしまったところは修正していませんが、ペナらしい黄色いセルが綺麗に揃うと、これまた思いのほかよろしいものを手にしたじゃんと、危険な移動時間の愚行を正当化してみる。ネイルリムーバーのアセトンで軽くふいてみて艶が出るならお手入れも一息。残るはグリップの石鹸洗浄だけとなりましたが、レンジへ持ち出すのは、出て行って張り切る予定がひと段落するまでしばらく先になりそうです。