
古典落語に孝行糖という与太話がある。親孝行に尽くした与太郎が奉行所から報奨金もらい、何に使うか長屋風情が考えた結果、飴売りを始めたという話だったと記憶。その売り声が「こうこうとう、こうこうとう、孝行糖の本来は…」てな感じでその成分を並べた売り声。その落ちは、物売りに相応しくない場所で売り声を上げて、いさめられた時に暴行を受けたという。

周囲がどこを殴られたんだと聞けば、こことぉ、こことぉ…、っていう実に下らんお話。ま、じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ みたいなもんですな。んで、ネタは本来。ここ何回かオフセットの話によっていますが、その本来の目的は球が捕まりやすくするための工夫。ならば番手によってどう工夫するのが本来なのか。現役時代には、ピンやリンクスで違和感すら覚えたフォルムが初見だった。その起源は相当古い物らしいのですが、そこまでやるかってぇのがピンやリンクスだったわけだ。当時の多くのメディアが残したのは、それまでのクラブ設計やデザインは、職人のアナログな感覚であるとか、プレーヤーでもあったデザイナーが思いついたフォルムに設計したとされる。いやいや、ケネススミスが、ウィルソンやマルマンよりも先にゴルフを科学したという資料も残る中、当時のメディアは大流行のピンが史上初、ゴルフを科学したアイアンを設計したと提灯を持った。

それをクラブ評論家なる肩書きを持って、物書き商売を始めたオリジナルクラブの設計屋さんがまたそれらしく語った。彼らはアイアンのバックデザインを見て、打点を予想するなんてのはナンセンスと、クラシッククラブのご権威の持論に横槍を入れた。ところが、自分の設計したアイアンを紹介する記事には、バックデザインのコンセプトには打点設計を取り込んだと堂々と語った。以来、クラブ評論家の言い分は一切信用したことがない。

クラブデザインの本来は何だろうと大命題を掲げたところで、昔の鍛冶屋さんが造ったアイアンのバックデザインには刻印しかない。手鍛冶では複雑な造形を作ることも不可能で、板っぺら、かまぼこ板ともいわれたものです。90年代にはそんなデザインのアイアンもあって、例えばオオサワクラシックの2000というモデルは、まさしくヴィンテージアイアンのバックデザイン。当時の資料によると、バックデザインに工夫がみえなくても、あらゆるデータを現代基準で設計したものときた。幸いにも手にしているので、その感覚を確かめられたのですが、この個体が特異で、工房作業によって大きなオフセットが付けられていた。オリジナルがメディアの写真資料に残っていたので、これを現代の職人工房さんにお願いして、でき得るだけ元に戻してもらった。

最後は折れちゃうかもしれないと脅かされながらも、それでもこんなおかしなフォルムのクラブは振れるもんじゃないと無理やりやってもらいました。それでも完全に元通りには戻りませんでしたが、確かにバックデザインがフラットでもちゃんと美味しい打点はあるわけだし、当時物のアイアンとして一般的なものと何も変わらんかった。でも、この作業を依頼した当時の所有者さんは、当時流行のオフセットがどうしても欲しかったんでしょうね。いつもの事ですが、バックデザインは名刺サイズの中での工夫。違和感のあるほどの変化をデザインしないと機能にはほとんど影響ないってのが周知の事実になった現代。

レンジの試打会や中古屋さんで今時キャビティーを見かけても、何が違うんだかわからん偏屈じじぃです。でもクラシック物は実に個性豊かと信じて、自虐的に楽しむのがこのブログであります。