こんな話を聞いたことがある。
10月の終わりの日は、御伽噺が死んだ日だと。
かつて、10月31日は、悪霊が蘇る日だった。
悪霊が蘇り、御伽噺の登場人物は侵される。
シンデレラは、ガラスの靴に毒を塗り、
白雪姫は、悪い魔女を従え、王子を騙し、
人魚姫は、王子に近付いた女を刺し、
御伽噺はその日、暗黒に犯されていた。
するとマザーグースは怒った。
カボチャをくりぬいて、顔を作った。
悪霊さえ消えてしまうような、怖い顔を。
悪霊は彼女達に近寄らなくなった。
しかし、彼女達はもう戻れない。
10月31日がなければ、私達はずっと良い子で居なくちゃいけない、と。
そんなのは堪えられない、と。
ある日、マザーグースに彼女達は言った。
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」
マザーグースさえも、彼女達に侵されつつあった。
そしてマザーグースは言った。
「まだ幸せを求めるなんて、愚かだ」と。
そして彼女達は言った。
「Trick or Treat」
マザーグースは消えた。
彼女は嘲笑い、お菓子を渡さなかった。
「幸せに埋もれてた、貴女の方が愚かね」
彼女達は御伽噺を回った。
シンデレラは言った。
「私の素敵なガラスの靴をあげる」
一つ、話が消え。
白雪姫は言った。
「魔女は不老長寿の林檎を作りました」
また一つ、話が消え。
人魚姫は言った。
「この女は、王子を騙そうとした悪い者です」
また一人、と。
そうして、御伽噺は死んでいった。
10月31日はハロウィン。素敵なハロウィン。
死者は蘇り、悪霊は舞い踊り、月が壊れる。
甘い甘いお菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ。
Lollipop Halloween!
さあ、次はどの話が聞きたい?