会社には、部署を超えた“趣味の同好会”があった。

月に一度、メンバーだけで飲みに行くらしい。


その情報をいち早くキャッチしたのは、

もちろんベア子である。


しかし。


ベア子は同好会に入っていない。

誘われるはずがない。


それでも、

例の“偶然を装う能力”は発動してしまう。



🧸 突然の降臨


その夜、飲み会の会場。


店の扉がガラッと開いた。


「あっ!みなさんこんなところで偶然ですね〜〜♡」


偶然じゃない。

今日だけで同好会メンバーに

不自然な回数の質問をしているのを

全員知っている。


メンバーは一瞬固まりつつ、

「あ、うん、こんばんは?」

と、なんとか返す。


しかし

誰も「一緒にどうぞ」とは言わない。


だって、同好会じゃないから。



🧸 ベア子、まさかの独飲み


誘われていないベア子は、

スッと店の隅のカウンターに座った。


頼んだのは、一番安いドリンク。


そして、

すみっこで静かに、コップを両手で持っている。


視線だけは鋭い。


耳だけは、完全に同好会のテーブルへ向いている。


「聞き耳アンテナ」 は今日も全開。


しゃべらない。

笑わない。

ただただー聞く。


同好会メンバーたちは、

話しながら何度もチラチラと

ベア子の方向を見てしまう。


なぜか、

空気がちょっとだけ重い。



🧸 帰り際のひとこと


帰り際、

同好会のメンバーがレジへ向かうと、

ベア子はすっと立ち上がり、


「今日はお疲れ様でしたぁ♡」


とだけ言って去っていった。


結局、

飲み会の内容はしっかり把握していたらしい。