〜偶然を装う女〜


その夜。


部長が焼き鳥屋に入ろうとした、その瞬間


そこにベア子がいた。


「あっ部長〜!!こんなところで偶然ですね〜♡」


偶然なわけがない。

今日だけで部長の机の前を3往復していたのを

みんな知っている。


でも部長は優しい。


「まあ、せっかくだし一緒にどう?」


その言葉を聞いた瞬間、

ベア子の顔がパァァっと明るくなる。


“今夜の夕食代、浮いた。”


焼き鳥を頬張りつつ、

部長と課長の話には興味のないふりをしながら——


社内のコア情報だけは逃さずキャッチする。


テディベアみたいな顔が、

一瞬だけ“勝者の笑み”に変わった。