もう一度、二宮くんとタッグを組んでほしい人といえば、

倉本聰さんです。

@いらすとや


初めてタッグを組んだのは、2005年のフジTVのドラマ優しい時間』

二宮くんが演じたのは、 非行に走っていた時に交通事故で同乗していた母・めぐみ(大竹しのぶ)を死亡させてしまった過去を持つ21歳の涌井拓郎。事故で死なせた罪悪感に落ち込んでいたところに、帰国した父から手切れ金と共に絶縁を言い渡されたことで深い疵を心に負ってしまう難しい役でした。拗れてしまった親子関係が、2人を取り巻く周囲の人間たちに寄って変化していくストーリー。


二宮くんのファンになる前でしたが、このドラマは見ていました。

父・勇吉(寺尾聡)が妻の事故死を機に、商社を辞め、妻の故郷の富良野で営んでいる喫茶店「森の時計」が舞台。この店には『お客にミルを渡し、コーヒー豆を曳かせる』という独自の経営スタイルがあり、コーヒー好きな私は、実際やってみたいと思いながら見ていました。

実はこの喫茶店、実在し、現在もあるのをご存知ですか?なんでもドラマより先に喫茶店ができていたらしいのです。
喫茶店の様子は行かれた方がブログを書かれています。右差しドラマ「優しい時間」のロケ地/喫茶店”森の時計”で過ごす時間

この独自のスタイルによって、お客が時間を忘れ、つい自分の気持ちと向き合っていく様が好きでした。


2018.5.11日刊ゲンダイ『倉本聰 ドラマへの遺言』で、この時のことについて語っています。
「僕はニノっていう役者を知らなくて。フジテレビが連れてきたんですけど、これはいいと思いましたね。」

二宮くんに一番ピンときたのは「繊細さ。」
「(父親の働いている姿を木影から見ているシーンは)あそこは、『エデンの東』でジェームス・ディーンが母親をこっそり見に行ったところがヒントです。んな雰囲気、気持ちの複雑さみたいなものをニノはとてもよく出していたと思う。」


この作品で有名なエピソードと言えば、二宮くんがセリフを変えていたことでしょう。二宮くんのファンの間では、もはや常識になりつつありますが、当時はまだまだ若造でした。

倉本さんは「てにをは」や句読点にもこだわりを持ち、出演者には完全な再現を求めることで有名な大物脚本家。台本にあるセリフを勝手に変えることなどご法度、ましてや若手俳優には絶対と言っていいほどタブーなことだったそうです。

ところが二宮くんは、台本にあるセリフをすべて暗記して演技するのではなく、台本通りにセリフを喋らなかったそうです。それは、物語や登場人物の感情の動きを把握し、一旦消化した上で表現する二宮くん独自のスタイルだから。

では、なぜ許されたのか?
「こちらの予想した以上の芝居をしてくるから」と以前、二宮くんが『A Studio』に出演した際に、倉本さんがそう述べていました。

倉本さんの台本のセリフを変えてはいけない不文律は、実はある若手に倉本さんが言ったひと言がきっかけだったと、2018.1.18日刊ゲンダイ『倉本聰 役者への遺言 役者と真剣勝負  俺が正しいのか、おまえが正しいのか』の中で倉本さんが話しています。

倉本さんは、「誤解していただきたくないのは、若いからダメ、ではない。ニノ(05年「優しい時間」に出演した二宮和也)なんかには自由に変えてくれって言ってますしね。ただし、俺のホン以上に変えてくれとは付け加えます。俺が正しいのか、おまえが正しいのか、勝負しているわけですから。」と答えています。

やはり、許されたのは台本を超えていたと倉本さんが認めたからなんですね。



先の2018.5.11日刊ゲンダイで倉本さんは「ニノに会ってみて、この子はちゃんとしてるなって思いました。あいつは物おじしないんですよ。僕のこと「聰ちゃん!」って呼ぶしね。クリント・イーストウッドにも使われてた。」

皆さん出ましたよ、聰ちゃん!
『A Studio』でも二宮くん自身がそう呼ぶまでの過程を嬉々として述べてましたね。最初、探りを入れながら会話の途中、途中に「なんだよ〜、聰ちゃん」と入れて、徐々に回数を増やして、定着させていくと。

二宮くんにかかると、大物脚本家も見る目が変わってしまいます。

倉本さんは、当時西田ひかるさんのファンで、愛犬にその名前をつけていたそうです。ところが、普通なら名前の「ひかる」とつけるのに倉本さんは「西田」と苗字の方をつけているんですよと、楽しそうに語っていました。彼にとっては肩書きは関係なく、倉本さんも1人の人間として見ているのでしょう。台本をもらったら最初にスタッフさんたちの名前を覚える人ですから。


「聰ちゃん」と呼ぶ二宮くんについて2018.5.11日刊ゲンダイで、
「あいつ、イーストウッドのことも『クリントは…』って言うんですよ。生意気なんだけど、失礼な感じじゃない。ナイーブさも持ってるし、あの子の才能ですね。」

以前、吾郎ちゃんもラジオで二宮くんと久しぶりに会って「せんぱ〜い、元気ですかぁ?」って話してきたエピソードで「あいつ、僕のことをバカにしている。でも、彼のキャラなんでしょうね。許されちゃう。」って話していました。生意気と感じつつも受け入れてしまう、そんな人なんでしょうね。


2年後の2007年フジTVのドラマ『拝啓、父上様』で再び2人はタッグを組みます。東京の神楽坂を舞台に老舗料亭『坂下』の家族や関わる人たちによる人間ドラマ。

※写真はYahooの画像からお借りしました。

今では、神楽坂は嵐ファンの聖地と呼ばれ、今でもドラマにも登場したロケ地巡りをするファンがたくさんいます。

二宮くんは、その老舗料亭の料理人見習いで働く真面目な青年・田原一平を演じています。二宮くんの演技力を買った倉本さんが、二宮くん主演でと考え、あて書きした作品です。

これは、俳優としての二宮くんを評価していた証。社交辞令でなく、再度タッグを組むのは、本当に惚れ込んでいると思います。社交辞令や嫌だったら組まないですよ。そう言う意味では、二宮くんの場合、蜷川さんと倉本さんは惚れ込んでくれた方達でしょう。



倉本さんが二宮くんに惚れ込んでる姿が垣間見れるエピソードが2つあります。

2006.12.13スポーツ報知『拝啓、父上様』の制作発表で倉本さんが、二宮くんを「素直に心で演じてくれる、すてきな役者さんだと思う。」「人間的な素朴さと素直に心で演じてくれるところが、とても好きです」と熱っぽく語った後、

前作で共演していたキャストが一年前に映画のブルーリボン賞を受賞したことと、当時ジャニーズ事務所が日本アカデミー賞などの賞レースに参加しないのことを知り、かわいそうだから僕があげた」と、勝手に『倉本聰ブルーリボン賞』を二宮に贈っていた秘話を明かしています。

貰った二宮くんも嬉しそうに「2メートルくらいの青いリボン。役者として初めての賞で、光栄だった」と言い、「(倉本さんが)無事に3月まで放送が終わったら、(映画『硫黄島からの手紙』でクリント・イーストウッド監督が絶賛し、オスカーも有力視されていた)今度は『アカデミー賞』をくれるというので、頑張ります」と答えています。流石、コメントも予想した以上ですね。


さらに、もうひとつ。二宮くんの24歳の誕生日に倉本さんからFaxで贈られた手紙。ラジオで紹介された全文はこちらです。
ニノ、君はどうしてそんなにさわやかなんだろう?ご両親のおかげに違いない。

ニノ、君はどうしてそんなに明るいんだろう?ご家族のおかげに違いない。

ニノ、君はどうして子供達から愛されるんだろう?精神年齢が同じだと思われているからに違いない。

ニノ、君はどうして若い女性にモテるんだろう?危険な感じがしないからに違いない。

ニノ、君はどうしてクリントイーストウッドをはじめ、年配者に好かれるんだろう?馴れ馴れしくて図々しいからだ。

ニノ、君はどうしてあんなに自然なリラックスした芝居ができるんだろう?人を人とも思っていないからに決まっている。

ニノ、君はどうして黙っていると深い悲しみの中にいるように見えるんだろう?深く考えても無駄だという事をどっかでちゃっかり認識していて、結局何も考えていないからだろう。

ニノ、君はどうして清潔感があるんだろう?きっと隠れて不潔な事を上手にいっぱいやってきたからに違いない。

それでいいんだよ。そうやって正直になんとなくのんびり俺の歳まで早く老けておいで。哲学的じいさんになっていくと思うぜ。

倉本聰

的確に二宮くんを捉えていますね。
私は年配者に好かれるって所が好きですね。馴れ馴れしくて図々しいって。「女優よりおまえを泣かせたい」と倉本さんに言わしめるだけあって惹きつけられるものがあるのでしょう。


2007.3月号『日経エンタテインメント』で、倉本さんは、「彼は心で演じることができる俳優。言葉が通じなくてもそれは伝わる。演技には、技と心があるが、技より心が上の場合は人の心を打つことができる。が、技が心を超えてしまう役者の方が多い。技が上がってきたら心もあげないと、役者としての成長はない。その点で、彼がどうやって技を上げ、それを超える心を育てるか、大いに楽しみ。」


もしかしたら、3度目のタッグ?と思えることが昨年ありました。

それは、テレビ朝日『やすらぎの郷』。
このドラマの中で登場する「やすらぎの郷」で暮らす女性達の憧れの的の俳優「シノ」。そのモデルが二宮くんじゃないかとネットで話題になっていたのです。





コメントしている方もいるように、本人ではなく、誰だろうと想像させるのが、このドラマの楽しみの一つでしたから出演できなかったのは仕方ないです。

でも、俄然二宮くんと倉本さんのタッグが見たい!カッコいい役ではなく、人間臭い二宮くんが観たい!そう思います。


どこかのテレビ局お願いします。それまではDVD観て我慢しますよ。
平原綾香さんの声が良いんですよね。