誰かに読んでもらうためではなく、ただ私の存在を書き残しておきたい。


付き合っていた彼女は立正佼成会の信者だった。

そんなに悪い噂を聞いたわけでもなかったので甘く見ていた。

結婚する事になったが、相手には障害のある弟がいるため、婿養子に入る事、同居する事などが条件だった。

後になって気づく事だが、障害のある弟の面倒を見る事も家を相続することも、婿養子にはなる必要などあるわけではなかった。

この本家でもなんでもない家を継がせるための事だった。

一方で私は教科書にも載る家の跡取りとして祖父から請われていたが、親が断ってくれていた。

だから余計疑問だった。なぜなんの歴史もない本家でもない家があととりなどと必死なのか。

これは後になって思い当たった一つの予想。かれらは妻祖母が全ての始まりだと事あるごとに言う。意味がわからない。何故か…子供の熱が下がらず、すがって立正佼成会に入信したのがこの妻祖母なのだ。だからこの人を起点とした「家」というものを作りたいのだろう。

しかし結婚相手の事は好きだったし、障害のある弟の面倒…これは私には覚悟がいる事だったが、そう思う相手の両親の気持ちを想像し、受け入れる事にした。

一方でこちらからは


・私は立正佼成会に入らない

・子供にもやらせない、大人になった時に自分で決めさせる

・子育てに関しては私とパートナーの2人で決める。アドバイスは求めてもあくまで決めるのは親である私達


という事などだった。


しかし結婚してみれば全ての約束は反故にされた。宗教あるあるなのだろう。「だっていい事だから」

妻も宗教もあいまって完全に親の支配下だったから、2人で話し合って決めた事も、のちに親にひっくり返されてしまうことばかりだった。

私も子供達もかってに信者にされてしまった。やめろと言っても勝手に私の先祖も巻き込まれた。


そしてなにか揉め事がある度に言われた。


ここはお前の家じゃない。文句があるなら出ていけ。


養子に入り住所本籍もそこにあるにも関わらず。



ある日相手の父親に言った。


なぜ約束を守らないのか。私は約束を守っているのに。


すると彼は言った。


うちの条件は婿に入る事、同居する事だ。お前の条件なんか知らん。


妻にお願いした。


このままだと自分は壊れてしまう。一旦この家を一緒に出てくれ。


しかし妻は言った。


引っ越しなんて子供達が可哀想だ。1人で出て行け。


子供達のことは全て私が見ていたから、これからもまだまだ見てあげなければならない。そのために自分が壊れるわけにいかない。

だから1人で家を出た。


ずっと言いたい事全て我慢してくれていた私の親が妻に言った。


一緒に出ておいで。まだやり直せる。


しかし妻は言った。


私は親を捨てられません。



離婚し、やがて少し気力も出て自分の変化もあり、外から、しかし毎日子供達のところへ行って面倒を見続けた。離婚はしたものの、これは私自身が回復するためであることと、5人は家族であるという共通認識を持っての離婚だった。

早朝から子供の勉強をみて朝食を用意し、学校へ送り出した後で家に帰り仕事。15時にはまた子供のところへ行き夕飯を作って食べさせる。


夢を叶えて作曲家としてTVドラマの音楽を手掛けていたが、当然こんな生活でやれるわけもなく、フィールドを変えざるを得なかった。


去年また約束をした。5人で私の苗字になる約束を。年末に彼女は親に話に行った。案の定その2時間ほどで話は全部ひっくり返った。

彼女達は一度でも私との約束を守った事があるのだろうか。


騙されて生活の基盤をそこに作ってしまった。だから妻の両親は毎日孫の成長を見られる。、一緒に外食にもいく。しかし私の親は孫の顔を半年に一度見られるかどうか。そんな中父親が目を患い、やがて失明するという事に。いよいよ私は焦った。

妻にお願いした。


私の親にも孫を見させてくれ。


妻は了承してくれたが結局何もしなかった。

妻は私に言った。


忙しいんだからしょうがないでしょう。


そしてまた


お前の家じゃない、出ていけ!


窓を開けて


だれか警察呼んでくださーい


深夜に子供達の部屋を周り、謝った。


ごめんな、もう守ってあげられない。

全力で誰にもやれない事をやってきた。

でもおっかーには届かなかった。

おっかーのことよろしくね。

ごめんね



そして出てきた。


作曲家になるのが夢だった。

一瞬叶ったが、それさえ比べ物にならない宝物が出来た。

3人も。

そして今その宝物が無くなってしまった。


もう何をする力も理由もありません。

なるべく少しでも周りにダメージを残さないやり方で私はいなくなろうと思います。


届かない事はある。

叶わない事はある。


世の中の全ての宗教家が地獄より深い苦しみに包まれますように。