とあるブロガーさんの影響を受けて2ストロークのバイクを復活させた記事を執筆しようと思います。
因みに近年「エンジン」と言う場合は99%4ストロークエンジンを指しています。2ストロークエンジンは主に環境規制の煽りを受けて平成10年少々で絶滅危惧種となりました。
今でも稀にスクーターで見掛けますがやたらとマフラーから白煙が出ていて蝉のような音を出して走ってる排気ガスが臭いやつです(語彙力)
全てはこの不動車のバイクを後輩から5000円で貰ったことから始まります。
このバイクはヤマハのRZ50(復刻版)と言いまして平成初期頃に有りましたTZR50と言うスポーツレプリカのバイクのエンジンを専用のフレームにキャリーオーバーした物になります。骨格自体は唯一無二ですがエンジン関係の部品に関してはTZR系と互換性がある程度は存在するようです。
因みに当時メインバイクとしてホンダのゼルビスと言うマイナーバイクも所有しており、こちらも専用部品品薄状態、カスタムと整備が半々と言う状態で運行しておりこのRZ50を買ったもののレストアする重い腰が中々上がりませんでした。
↑ホンダ ゼルビス
有名なVT系250ccVツインエンジンを搭載したマイナー車。実質VT250系譜のエンジンでは最期の6速車でもある。前機はVT250スパーダ。後継機はV-twinマグナ→VTR250(キャブ)→VTR250(インジェクション)となりVT250系エンジンは幕を下ろします。
ゼルビスは歴代のVT系が比較的スポーツ寄りなバイクを出していた中で、専らツーリングに全振りした異端児。MC22の2ダボやJADE250なんて言うクォーターマルチも全盛期だった時代にリリースされた為、当時は「VT系の駄作、重い、曲がらない」等と酷評され僅か4年でモデル落ち。
その後、主にバイク便やコアなファンに支持される知る人ぞ知るバイクとなる。
今回はゼルビスは主役では無いのでまた、このバイクの事は何処かで書きます。
そして問題のRZ50 譲り受けた時点で分かっていた状態は
◎走行中にストール&後輪ロック
◎セルは回ってクランキングはする(因みにこのバイク、2ストらしからぬキックが付いてません)
◎その後バイクカバーを掛けた状態で約2年放置
◎整備とは直接関係は無いが49ccのまま書類チューンされている(この時点で荒く乗られていた事は察し)
◎距離は実走行で間違いなく約1万km(当時NS-1等が既に減って来て店売り物も5万km走行とかザラだったのでそれを考慮しても腰下が生きていればエンジンはまだ使えると判断)
この辺りの情報を頼りにダメそうな所は全てリペアして行きます。
当時の整備環境には比較的、水害を受けにくく保管場所と環境には困らなかったため腰上はさっさと分解してとりあえずクランク下を2ストオイルの「お風呂」にしておきます。
見ての通りピストンもリングもダメです 見た感じオイル不足による潤滑不良が起因する焼き付きっぽいです。
まず長期放置の定番ですがタンク錆です。
正直言うと、某オークション等でそこそこ状態の言いタンクはあったのですが 結構いい値段だったのと 見ての通り前オーナーが車体をほぼオリジナルのラッピング塗装しているため
タンクだけ別のを組むと色合わせが困難です。
フレームのカラー番号を見る限りでは元のカラーはブルー系だったようですね。
そこで「花咲爺」の出番です。案の定凄い錆だったんで花咲爺を投入&密封したタンクをバイク屋で働いてる知人の軽トラに5日程積載して貰い「適度に揺さぶられる」事でタンク内の錆がなるべく落とされる様にしました。
写真は約5日間、花咲爺を投入し軽トラの荷台でシャッフルされた後に内液をドレーンした物です。きちゃないです
一応これで大方の荒錆は取れたんですが、この作業の後に更に残しておいた花咲爺でもう一度タンクを満たし数日置いておくと「リンス」された様な状態になり錆処理が長持ちします。
※とは言え、1度頑固に錆びたタンクの錆を100%綺麗にするのは不可能です。必ず、液の届いていない部分等が有りますので この様に錆落としリペアをしたガソリンタンクは「少なからず残った錆がガソリンと降りてくる」事を念頭に置いてフューエルフィルターの噛ませは必須です。
このガソリンタンクの錆が仇になって定期的なフューエルフィルター交換&キャブレターOH頻度が忙しくなるのは承知ですが何はともあれ、実動させるのが目的なので作業は進めます。
タンクの錆落としをしている合間でキャブレターのOHもしておきます。
キャブに降りてきているのはガソリンと言うよりもはや錆ですな。
ジェット類もバラしてフロートの動きやニードルピンの段付き磨耗に問題が無いことを確認して組み込みます。
K2テックと言う外品のチャンバーが付いていたのでこれも次いでに耐熱塗装でリペアしておきます。
今回はデイトナさんから出ている68ccのボアアップキットを購入しました。純正のヘッドやピストン類をヤマハ純正で1から揃えるより安価なのと、元が書類チューンされてますのでこちらを選択しました。
2ストオイルと耐水ペーパー、ダイヤモンドヤスリ等を使って製造バリを慣らします。
こう言うキットって恰も完成品って感じで届きますが最終的な「調理」をするかしないかで今後の寿命やアタリの出方にも差が出ると思ってます。
順調に進んで来たので前後のタイヤ&チェーンを交換してます。タイヤはIRCでチェーンはダイドーの安いのを選択しました チェーンに関してはパワー負けして伸びが早かったり相性が悪そうだったら後々、シールタイプに交換しても良いかと、とりあえずはスーパーカブ等と同じのスタンダードチェーンで組んでます。
新しいピストン&ピストンリングを組んで行きます。※写真では向きが合ってませんが組み付けの時には切り欠き合わせてます 当然ですが
新しいシリンダーヘッドを組みます。4ストロークと違ってカムチェーンとか吊るさなくて良いので2ストは整備性は良いです。
ガスケットが数枚重ねて有りますがこの枚数は個人の判断で増減せず必ずキットに指定された通りに挟みます ガスケット1枚で圧縮比も変わりますので下手に弄ると二の舞になります。
いきなりですが完成です
黄色ナンバーとは言え2名乗車の条件を満たした構造では無いので純正のリアカウルに加工を施して「ホムセン箱」を取り付けました。
純正のリアカウルに4ヶ所穴開けしてステーをXの様な形に繋いでM6のボルトワッシャーにネジロック材で固定してあります。
容量は少ないですが元々、積載スペースの無いRZにとってはありがたい装備となりました。
最終的には追加でタンクバッグも装着してちょっとした買い物やソロツーリングには困らない位になりました。
アッパーカウル擬きも当初は付けていましたがヤンチャな見た目になるので仕様変更で外しました。
ナックルガードや新しいミラー等は知人がくれた物の掻き集めです(笑)
幸いにもこの型のRZ50のラジエーターは容量がある為、実際には試していませんが巷の情報では90cc位にボアアップしたNS系にも流用されるほど、と聞いていたのでノーマルのままで運行しました。実際に純正比で約15%近くの排気量UPになりましたがオーバーヒート状態は1度も起こしませんでした。
距離にして約100km程はパワーバンドに入れないように約30km/h程で走行して慣らし、そこから100km距離毎に速度を10km/hずつ上げていきキット組み込みから距離にして400km程で全開走行域へ。
因みにこの段階でMJ#15番手上げ、ニードルピンの位置変え、スクリュー調節、Fスプロケ1丁上げしてます。燃料はハイオク使用でホイルポンプ吐出量も増やし&混合仕様です。
リアの自作ボックスには小さな缶が入っており混合用の2ストオイルが入ってます(笑)
元々銀ポッシュが入っていたのでリミットは切れていたようです。性能的には金ポッシュの方が良いみたいですね。
メーターシールなんかも貼ってないので何キロ出てるか不明です。少なくともメーターを振り切る事は分かります
何かいい案は無いか??
友人にCB400SF乗りが居るので夜に捕まえてインカムを繋いで並走して貰う事にしました。
場所は伏せますが夜間の幹線道路を使用しました
実はこのRZは95km/hまでは49ccの状態で出る事は分かっていました 前オーナーがリミットカットして同じ様な併走で実測したとの情報を得ていたからです。
問題はそこからどれだけ乗るのか、、
私はこのバイクの49cc時点での走りを把握してません。いきなりボアアップキットでレストアしたから当然です。
ただ過去に2ストスクーターやNチビ等を改造していたので49cc状態の2ストロークエンジンの大体の特性は分かります。
お決まりですが排気量アップしたとは言え3000回転以下はスカスカで4ミニのクラッチ付きしか運転した事無い人が初見で乗ったらエンストするレベルです。
しかしギアを繋いで行き3速→4速とシフトアップして6000~7000回転のパワーバンドに突入するとターボのように引っ張ります。しかもドッカンターボみたいなエグいやつです。
純正メーターの60km/hなんて何のためにあるのか分からない位にスピードメーターは跳ね上がります。
元々トルクの薄い49cc状態の2ストにとってフロント1丁上げはハイギヤードになり、より低速がつらくなる物ですが ここはボアアップの恩恵かクラッチミートさえさせてしまえば失速感も全くありません 寧ろハイギヤード化を気にしていないかの様な加速です。
伸びる、伸びる、5速、、
6速、、おっとこのエンジンは1度やられかけてるしレブも1万近くなのでこの辺りでスロットルを絞って行きませう…と結果はCB400SFのメーター読みでほぼほぼ120km/hと言う所だったそうです。
いやー、速かったです。と言うかこのバイク、エンジンこそTZR系のキャリーオーバーなのに
タイヤはチューブタイヤですし、リアはドラムですし この速度域になると本当に怖いです
良い銘柄のタイヤに変更して腕のあるライダーが扱うときっと速いバイクなんでしょうけど
カウル付きの元からスポーツレプリカに慣れていた私からするとコレはちょっと怖かった1台でしたね。
パワー的には88NSR規制前なんかに比べるとへのへのカッパですが 完全に足回りやフレームがパワー負けしてます。
ホーネット250ccに乗っている後輩に試乗させると、こんな細いタイヤで100km/h以上出るバイクとか怖いと。
その後はこのバイクを当初譲ってくれた知人が私のレストアの話を嗅ぎつけたらしく、買い戻したいとの事で当時の売買価格に実費で出た部品代と手間賃を乗せて嫁ぐことになりました。
ここまでのレストアで交換した部品、整備、記憶にある限り。
◎ガソリンタンク清掃(花咲爺併用)
◎キタコ耐油ガスケット
◎外品フューエルフィルター導入
◎純正キャブOH
◎ジェット類の買い足し、調節入れ替え
◎クラッチワイヤ交換
◎前後タイヤ、チューブ交換
◎チェーン新品交換
◎フロントスプロケ交換(確かキタコ)
◎ボアアップキット(デイトナ68cc)
◎ブレーキフルード交換 パッド交換
◎ブレーキシュー交換
◎ハンドル周り一新(好みでは無いグリップの交換、ミラーの変更等)
◎ギヤオイル交換
◎LLC交換(作業上、当然ですが車用のホルツの高性能なの入れました)
◎バッテリー新品交換
◎オイルポンプ調節
↑後に分かったのですが 焼き付きの原因はここでした。
オイルタンク〜オイルポンプ間の経路が結露噛み等で乳化して閉塞しており オイルポンプに適切なオイル及び適切量のオイルが届いていませんでした。推測するに、前オーナーの時からも不動期間がややあり 定期的な運行をしていなかったのでは?と推測します。
水とオイルが混ざった物がオイルポンプに流入していた&乳化で流動性が悪くなっていた→水とオイルの混ざった物が燃焼室に流れておりオマケに量も不足していたので 潤滑不良により焼き付いた、そんな感じでした。
因みに、次回はゼルビスのネタでも書こうと思います。